社内異動でスキルを増やす「ジェネキャリ」。日立ソリューションズ・村田友梨さんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:稲垣佑季
編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部
あなたは「このままここで働いていていいのかな」と悩んだことはありますか?
同じ会社、同じ部署で、日々同じような仕事をしていると、ふと「このまま同じ仕事をしているだけで大丈夫なのだろうか」と不安になることがあります。だけど、転職に踏み切るほどの自信もない。そんな時、どんな選択肢があるのでしょうか。
新卒で入社した日立ソリューションズで、社会人6年目を迎えた村田友梨さんも、新卒で配属された部署で将来への不安を抱えていたといいます。そんな彼女は、この6年の間に2回の部署異動を経験し、SE、企画、営業とさまざまな仕事を経験してきました。
「新卒の部署で仕事に不安を感じても、転職できる自信がなかった」と話す村田さん。SEから始まった村田さんのキャリアですが、彼女はこの春、日立ソリューションズの「若年層ジョブマッチング制度」という社内制度を活用して、営業部へと異動することになりました。
転職ではなく「社内異動」という選択肢で、自身に足りないスキルを身につけてきたという村田さん。転職するのではなく、社内異動でさまざまな職種を経験して「ジェネラリスト」となることで培ったキャリアがあったからこそ、見えてきた景色があるといいます。
社内制度を使い、自身のキャリアを転換
SEの時はみなさんが想像する通り、コードを使って機能開発をしていたのですが、製品プロモーションチームではメルマガでの情報発信を行ったり、製品webサイトのアクセス分析を行ったりといった企画業務に携わっていました。
今は、営業職として、社外のクライアントさんと関わっていますが、どの部署でも、ITサービスに関わるという大枠は同じなのですが、業務はそれぞれ全く違うものではありますね。
私の場合は、過去どちらの部署でも、2〜3年目のタイミングで自身のスキルやキャリア形成に不安を感じることがありました。私自身は、部署異動にネガティブなイメージはなく、むしろ自身のキャリアにも良い影響があると捉えています。製品プロモーション部への異動は社内辞令でしたが、今回の異動は、制度を使って自分の意思で異動しました。
「若年層ジョブマッチング制度」ですよね。どのような制度なのでしょうか。
弊社では、新卒入社3年目の社員全員に対し、社内求人への応募、または現在の部署に継続して所属することを自ら選択する権利が与えられているのです。権利は2年間繰り越すことが可能なので、5年目まで保留することができます。
利用希望者は、自己PRシートを作成して社内求人に応募し、面談を行います。応募要項と希望者のスキルがマッチングすれば、社内異動をすることができるんです。(※)
モヤモヤを感じた時、手を挙げて社内異動。足りないスキルを補える部署を志望
製品プロモーション部では、エンジニアの時と比べて社内のさまざまな事業部と関わることができ、視野を広げることができました。しかし、一つひとつの案件に細かく関わることはできないため、現場の声が拾いきれないことに歯がゆさも感じていました。
現場での経験値がないと、社員にとって本当に必要な企画を立案することが難しいと考え、まずは「課題解決」や「ソリューション提案」の経験値を養うため、営業職を志望しました。
もちろん、新しい業務に不安がないわけではなかったのですが、上位層の方が「この社員は見込みがある」と判断して異動を受け入れてくださったのだから、まずはできることから頑張っていこうと前向きに思えました。そして、分からないことは積極的に周囲に質問するようにしていました。不安や懸念事項は先にシェアしておくことで、自身の不安も軽減されると思います。
分からないことを伝えるのは勇気がいると思いますが、お互いにできること・できないことが分かっていると、自分もチームメンバーも働きやすいと思います。
部署異動をしたことで、キャリアに対する考え方に変化はありましたか?
新卒当時は、自分がどんなキャリアを描いていくのか、全く想像がついていませんでした。もともと文系卒でエンジニアとしてのスキルも持っていなかったので、日々目の前の仕事に追われながらも、「今の仕事、自分に向いているのかな」と漠然と思うことはよくありました。
しかし、部署異動してからは、エンジニアとして積んだキャリアも意味があったと感じるように。不安を感じた時に、別部署での経験を積むことができた自分は幸運だと思いますし、機会を与えてくれた会社にも感謝しています。さまざまな部署での仕事を経験したことで、自身の視野も、キャリア形成も広がったと思います。
転職については、あまり考えていませんでした。自身には、まだ転職できるほどのスキルがないと思っていましたし、会社の文化や人間関係には満足していたので、まだこの会社の中で頑張れることがある、とも思っていました。
ただ、モヤモヤを抱えたまま同じ部署で仕事をし続けていたら、転職していた可能性もあると思います。
社内に残ったことで、自身のキャリアが「点」から「線」に変わった
エンジニア時代を振り返ってみると、自身が関わっていたのは、大きな製品のごくごく一部でした。当時は新人目線からすると「これ必要かな?」と疑問を感じる作業もあったのですが、製品プロモーション、営業と他の職種も経験したことで、どんな小さな作業も意味があったのだと思えるようになりました。
あのままもし転職活動をしていたら、私は「いちエンジニア」としての視野しか持てないままだったかもしれません。同じ仕事、同じ会社に関わっていく中で、自分の仕事が「点」ではなく「線」としてつながっていることを知れたことが、一番のメリットだったと思います。
「若年層ジョブマッチング制度」での部署異動の際にも、面接や自己PR書類の提出が必要で、かつ社内求人が出ていなければ異動できないので、必ずしも希望の部署に異動できるわけではありません。
しかし、面接や面談を担当するのは同じ会社の社員なので、異動希望を出すことは、転職活動に比べても気持ちが楽だと思います。私は、人事や面接官が気になるのは「社員と部署の相性の良さ」だと考え、自分のしたいことや興味を固めすぎないよう、書類を作成しました。もしも「今の部署以外で働く」ことを優先するなら、応用のきくスキルをアピールするのがいいのかなと思います。最後に、村田さんが思い描く理想のキャリアや、今後の働き方を教えてください。
私自身、10年先を明確に思い描いて行動するタイプではないのですが、今の仕事に全力になることで、次にやりたい仕事が見えてきたと思っています。今の時点では、次にしてみたい仕事があるわけではないのですが、営業として全力で仕事に取り組むうちに、また身につけたいスキルが明確になると思っています。
今後も、仕事の目的を忘れず、与えられた仕事をやりきり続けていきたいです。その先には、その時の自分が必要としているキャリアが見えてくると思います。
(※)引用:https://news.mynavi.jp/techplus/kikaku/20230425-2660223/
※この記事は2023年07月13日に公開されたものです