「諸般の事情」とは? 意味や使い方・言い換え表現(例文付き)
「諸般の事情」とは、「いろいろな事情」や「複雑な事情」という意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでも、顧客に向けたアナウンスや取引先への説明などで用いられるフレーズ。今回はそんな「諸般の事情」の使い方や言い換え表現を、例文付きで解説します。
「諸般の事情」は、「いろいろな事情」や「さまざまな事情」という意味の言葉です。
説明できない事情があるときに用いられ、「諸般の事情で中止といたします」といった形で使われます。
ビジネスシーンでも取引先や不特定多数の顧客に向けたアナウンスなどで使われることが多いため、ぜひ正しい使い方を覚えておきましょう。
この記事では、「諸般の事情」の意味や使い方、注意点について、例文を用いながら解説していきます。
「諸般の事情」の意味
まずは、「諸般の事情」の正しい意味を押さえておきましょう。
「諸般の事情」の「諸般」は「しょはん」と読み、次のような意味を持つ言葉です。
しょはん【諸般】
いろいろ。さまざま。「―の事情」
(岩波書店『広辞苑 第七版』)
「諸般」には「いろいろ」や「さまざま」という意味があり、「諸般の事情」と用いることで「いろいろな事情」や「さまざまな事情」を指す言葉となります。
1つではない複数の事情がある際や、言いづらい事情がある際などに使われることが多いです。
「諸般の事情」と「諸事情」の違い
「諸般の事情」とよく似た言葉に「諸事情」があります。
「諸」は一語でも「もろもろ」や「多くの」という意味があることから、「諸事情」と「諸般の事情」に大きな意味の違いはありません。
「諸事情」も「諸般の事情」と同様にビジネスシーンで使える言葉であるため、使いやすい方を用いるとよいでしょう。
「諸般の事情」の使い方と例文
「諸般の事情」は、説明できない事情や複雑な事情があるときに用いられる言葉です。
例えば、「新製品のデザインを急遽変更することとなった」「原材料の確保に苦労している」「価格帯を決めかねている」など複数の事情によって、新製品の発表を延期することになったとします。しかし、顧客向けのアナウンスの中で、上記の事情のすべてを詳細に説明するわけにはいきませんよね。
このような場合に「諸般の事情により新製品の発表を延期することとなりました」と用いることで、顧客に「複雑な事情があるんだな」と察してもらえるでしょう。
このように「諸般の事情」は、「説明したいけど説明できない事情がある」というときや、「複雑な事情で説明しようがない」というときに使える便利なフレーズです。
例文
・本日より予約受付を開始する予定でしたが、諸般の事情により明日へと変更させていただきます。お客さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。
・明日のイベントは中止とさせていただきます。直前のお知らせとなり大変申し訳ありませんが、諸般の事情にご理解を賜りますようお願い申し上げます。
・諸般の事情を鑑みて、新製品の発表を延期とさせていただきます。
「諸般の事情」を使うときの注意点
「諸般の事情」は、複雑な事情の説明を省略できる便利な言葉ですが、使うときにはいくつかの注意点があります。それぞれ詳しく解説していきましょう。
相手に迷惑を掛けるときは具体的な理由を説明する
「諸般の事情」は、具体的に理由を説明すべき場面での使用は避けましょう。
例えば、「始業時間までに出社できそうにない」といったときに、上司に対して「諸般の事情で少し遅刻します」と用いると、どのような印象を与えるでしょうか。上司は恐らく「会社に遅れるのだから、具体的な理由を説明すべきだ」と感じるでしょう。
このように、相手に迷惑を掛けるときや不都合を与えてしまうときは、「諸般の事情」と説明を省略するのではなく、きちんと事情を説明することが大切です。
頻繁に使用しない
「諸般の事情」は、頻繁に使用することもおすすめできません。
「諸般の事情」は相手への説明を省略する言葉であるため、頻繁に使用すると「事情をきちんと話さない人だ」という印象を与えてしまいます。
自分の評判を落としてしまうことにもなるため、「どうしても具体的な事情を説明できないとき」や「事情が複雑で説明しようがないとき」に使うにとどめ、日常的に使用することは控えましょう。
「諸般の事情」の類語・言い換え表現
「諸般の事情」は、他の言葉にも言い換えができます。「事情」が指す内容や使う場面に応じて、適切な言葉と使い分けましょう。
「諸々の都合」
「諸般の事情」は「諸々の都合」へと言い換えができます。
例えば、「諸々の都合により、本日の会議は明日へと延期させていただきます」といった形で使われ、「諸般の事情」と同様に事情の説明を省略する際に用いられる言葉です。
「諸々の都合」は「さまざまな都合」という意味があり、「諸般の事情」と大きな意味の違いはありません。
しかし、「諸般の事情」の方がかしこまった表現であることから、顧客や取引先への説明には「諸般の事情」を用いる方がよいでしょう。
「やむを得ない事情」
「諸般の事情」は「やむを得ない事情」に言い換えができます。
「やむを得ない」には「そうするよりほかに方法がない」や「仕方がない」という意味があり、どうしようもない事情を指す場合に使われる言葉です。
例えば、「彼はやむを得ない事情で30分ほど遅れる予定です」といった形で使われ、相手に「説明できない事情を察してほしい」と暗に伝える効果も持っています。
ただし、「諸般の事情」と「やむを得ない事情」は類似する言葉になりますが、「やむを得ない事情」には「諸般の事情」のように複数の事情を指す意味はありません。「さまざまな事情」や「複雑な事情」という意味で用いる場合は、「諸般の事情」の方が適切でしょう。
「一身上の都合」
個人的な事情を示す場合は「一身上の都合」に言い換えられます。
「一身上の都合」は、家庭の事情や自分の体調の事情、家族の事情など私的な事情を指すときに用いられる言葉で、主に退職の際に使われるフレーズです。「一身上の都合により、来月末日付で退社させていただく運びとなりました」という言葉は、多くの人が耳にしたことがあるでしょう。
退職願いや退職のあいさつなどでは、「諸般の事情」よりも「一身上の都合」を用いる方が適切といえます。
「諸般の事情」は説明できない複数の事情を省略する言葉
「諸般の事情」は「複雑な事情」や「さまざまな事情」という意味があり、相手への説明を省略するときに用いられる言葉です。「諸般の事情により本日の講演会を中止とさせていただきます」という形で用いられ、ビジネスシーンでも多く使われています。
「諸般の事情」と言われた相手も「理由は聞かない方が良さそうだな」と察してくれるため、説明できない理由がある場合などに便利なフレーズです。ぜひ本記事で紹介した例文を参考に、正しい使い方を覚えておきましょう。
(にほんご倶楽部)
※画像はイメージです
※この記事は2023年05月09日に公開されたものです