【File6】本命にアピールをしたら、違う男が釣れた恋
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回は二宮ゆみさんのイタい恋。
こんにちは、二宮ゆみです。
現在は3歳双子と5カ月乳児の母として毎日、文字通り精も魂も尽き果てる生活をしている私ですが、Twitterを始めた当時は週5で合コン、毎晩シャンパンをごちそうになる乱れた生活をしていました。興味があったら過去ログでも漁ってみてください。
そんだけ数こなしてたら否が応でも恋愛スキルってのは上がるもので。昔の話をするとみんな揃って「え? それホントにあなたの話?」ってびっくりするんですけど、私だってあったんです、恋愛初心者の時が。
それでは、掘れば掘るだけでてくるイタい昔話を、今日はひとつ。
とにかく彼氏が欲しかったハタチの春
あれはそう、ハタチの春。
当時かなり気になっていた人を含めた飲み会でした。
彼も私を「気にはしてくれている」という驕りもあり、とりあえずわかりやすいアピールをすれば勝手に落ちてくれるのでは、という浅はかな狙いから、とにかく「彼氏ほしい!」と飲み会中ことあるごとに連呼する私。どんだけ飢えてんだ。
すると。
なんと。
ここで。
「はいはい! じゃあ俺!!」
と、それまで全く眼中になかった男性が。
イケメンだな、としか思ってなかった彼が。
「親旅行でいないからウチ使っていいよ」と飲み会場所の提供者でしかなかった彼が。
にこにこしながら手を挙げてくれちゃったんですよ。
え?
えぇえええええ⁉⁉
なんで⁉
どっから湧いてきた⁉⁉
って茫然とする私をヨソに、
「いいじゃん!」
「よかったね!」
「おめでとー‼」
と、場はなぜか付き合う前提のお祝いムード一色。ちら、と気になる彼を盗み見ると、あろうことか(なんだ、誰でもよかったんだ)みたいな顔してて。
あーーー、間違った。
「彼氏ほしい」って、こんな大人数の前で言うものじゃないんだ。気になってる人がいるなら、ピンポイントにその人に向けないと、気づいてもらえないんだ。ほかの人まで巻き込んじゃうんだ……。
って、ようやく気付いたワケですが。
酔っぱらっていたせいもあり、引くに引けなくなり半ばヤケクソで「えー? やったー♡ 彼氏でーきた♡」とかなんとか言って、付き合うことに。
どうせ即フラれるだろうし、別にいっか。
と思ってたんですけど。
けど。
違った。
全然違った。
すぐフラれると思いきや……?
その彼は割と硬派なイケメンで、今までずっと「彼女なんて興味ありませんけど」みたいな顔してたくせに、私の返事を聞いた直後から豹変して、以降、飲み会の定位置は「私の後ろ」。もちろん抱っこ。なにそれ。みんなの生ぬるい視線が痛い。
さらに、
「かわいいー」
「いい香りするー」
「ほせー、ちっちぇえー」
「マジで嬉しいー」
って、ベタベタ甘々キュンキュンの恋愛マンガでしか聞いたことないようなセリフを延々耳元で吐き続けだして。
そんなイケメンにお姫様のように扱われても、落としたかった彼の視線が気になるわ、(いやいいにおいなんてしてないし、細くもちっちゃくもないし、そもそもかわいくない! 恥ずかしいよぅやめて……!)って叫びたいし、私の好きな人を唯一知っていた男友達は肩震わせて笑い堪えてるし、もう公開処刑すぎて、いっそ殺してほしかったです……。
いっそのこと酔いつぶれてしまいたくて、ポカリ割なんて飲んでたら(よい子も悪い子もマネしないでください。ホントに死にます)希望どおりつぶれて、朝起きたらその人に抱っこされたまま寝てたし、起きがけ一番に吐いたらずっと背中さすってくれるし、甲斐甲斐しくお水とか持ってきてくれるし、合宿かなんかから帰ってきた妹に「オレの彼女‼」って笑顔で紹介されるし、「今日も泊まる……?」とか、硬派だったとは思えないくらい色気ダダ漏れの顔でグイグイくるし。
でも、でも、でも!! 私はあの彼がいいのーーーーーー!!!!
って、逃げ出して、結局10日かそこらで「話があるんだけど……」ってお別れを切り出しました。
すると。
「あー。あいつでしょ? 知ってた。抜け駆けして付き合ったらオレのものになってくれるかな、って思っちゃったんだ。ごめんな、なんか」って逆に謝られる始末。
……良い人すぎない?
さらに後日知ったことですが、好きな彼に「別れたよ、何にもしてない、いらないなら今度こそオレがもらう」ってお膳立てしてくれて、付き合うきっかけまで作ってくれてました。
良い人すぎて涙が出る。私のアホな一言のせいで、そんな彼を傷つけちゃったんだな。
……と、反省しきりの色々お勉強になった一件でした。ホントごめん……。
イタい恋から得た教訓「微妙アピール、ダメ、絶対。」
集団のなかのイチ個人にむけたあざとい攻撃はかなり難しくて、一朝一夕でできるもんじゃないです。少なくとも当時の私はできなかった。若かった……。
今でこそキャバ嬢時代に培ったテクニックで恋愛相談やコラムなど書かせていただいておりますが、それはほら「費やした量」が違うんですよ……ってハナシで。
たいして経験もないのに姑息な手段使うもんじゃない。自分のためにも、こんな展開になっちゃうことを考えると、他人のためにも、良くないんです。何十年経っても思い出すくらい、申し訳ない気持ちでいっぱいになるから。
やっぱりね、率直に気持ちを伝えるのが一番。恥ずかしくても、ね。
(文・二宮ゆみ、イラスト・菜々子)
※この記事は2021年06月27日に公開されたものです