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モラトリアムとは? 心理学における意味&脱却方法をわかりやすく解説

秋カヲリ

モラトリアムは経済用語で、本来は「借金返済までの猶予期間」を指します。猶予期間という意味が転じて、心理学では「アイデンティティの確立を先延ばしにする心理的な猶予期間」を意味します。今回は、モラトリアムの意味や特徴・概念などについて解説します。

モラトリアムという言葉は「怠けている」「働かない」といったネガティブな意味に捉えられがちですが、大人になるために必要な過程でもあります。

今回はモラトリアムについて、その意味や概念を解説します。

モラトリアム(moratorium)とは何か?

まずは、モラトリアムの意味について見ていきましょう。

モラトリアムとは「アイデンティティ確立のための猶予期間」

モラトリアムとは、もともと経済用語で、本来は「借金返済までの猶予期間」のことを指します。

そのため、「怠けている」というようなネガティブな意味は含まれていません。

「猶予期間」という意味から転じて、心理学では「社会的責任を逃れてアイデンティティ確立のためにゆっくり試行錯誤できる猶予期間」という意味で使われます。

主に10歳前後~30歳前後の青年期における重要な概念として用いられています。

モラトリアムは成長する上で欠かせない期間

モラトリアムには「本来取り組むべき課題を先延ばしにしている」というネガティブなイメージを持つ人も多いでしょう。

しかし、心が成長してアイデンティティを確立しようとしているからこそ生まれる心の揺らぎであり、大人になる過程で誰しもが経験するもの。

停滞するモラトリアム期は、ジャンプする前のしゃがむ動作のようなものなのです。一見「怠けている」ように思えるモラトリアムも、成長には欠かせません。

心身共に子どもから大人へと移行するはざまの時期である青年期は、「アイデンティティ確立を模索する心理的モラトリアムの時期」ともいわれています。

モラトリアムを肯定的に理解して、「自分は何者であるか」という問いとしっかり向き合うことで、精神が発達し人として成熟していきます。

モラトリアム人間とはどういう人のこと?

いつまでも「これからどうやって生きていくか」を決めず、大人になることを拒否して社会的責任を負わないでいる人のことを「モラトリアム人間」といいます。

モラトリアム人間の状態になっていることを「アイデンティティ拡散症候群」と呼ぶこともあります。

では、アイデンティティ拡散症候群とは何か。次の項目で詳しく解説していきます。

アイデンティティ拡散症候群とは?

モラトリアムは誰しもが経験するものであるとはいえ、それが延々と続いてしまうと社会性のあるアイデンティティを確立できません。

前述の通り、大人になることを拒否して社会的責任を負わないでいる人のことを「モラトリアム人間」と呼び、そのような状態のことを「アイデンティティ拡散症候群」ということもあります。

ここではそんな、「アイデンティティ拡散症候群」について解説します。

「アイデンティティ拡散症候群」とは大人になりきれない状態

青年期の不安定な心理により猶予期間を引きずり、大人になりきれずアイデンティティを確立できないでいる状態を、精神医学では「アイデンティティ拡散症候群」と呼びます。

この状態を「モラトリアム」と言うこともあり、多くの場合はアイデンティティ拡散症候群と同じ意味で使われます。

アイデンティティ拡散症候群は「モラトリアムを延長させたい、大人になりたくない」という願望であり、社会現象の1つだと捉えられています。

現代社会は多様化が進み、個性が尊重されるようになったため、分かりやすいロールモデルが存在せず、決断を先延ばしにする傾向が強まったと考えられます。

「アイデンティティ拡散症候群」と「ピーターパン症候群」の違いは?

アイデンティティ拡散症候群(モラトリアム)とよく比較されるのが「ピーターパン症候群(ピーターパンシンドローム)」です。

ピーターパン症候群であっても就職するケースがありますが、自己中心的で無責任だったり依存的だったりと子どもっぽい行動が目立ち、社会性に欠けているのが特徴です。

一方、アイデンティティ拡散症候群はモラトリアム状態になり決断できないことが多く、そのせいで進学や就職ができない傾向があります。

まとめると、ピーターパン症候群は「大人になりたくない」という理由で自己中心的に行動するのに対し、アイデンティティ拡散症候群はそもそも自分がどうしたいかが分からず行動できない、という違いがあります。

ネガティブなモラトリアムから脱却する方法は?

モラトリアムが長引いてしまうと焦りを感じることもあるでしょう。

モラトリアムから抜け出したい場合は、「自分は何者であるか」というアイデンティティの確立と同時に、精神的に自立して、職業選択をしていきましょう。

職業選択は悩む人も多いですが、自分の職業観や能力、適性を吟味して方向性を定めていくのがおすすめです。悩んだ時は「もしダメだったら転職しよう」と考えて絞っていくといいでしょう。

それでもうまくいかない場合は、生活リズムを整えて運動する習慣をつけてみましょう。健康な体を維持することが心の健康をつくることにつながります。

モラトリアムは必要、ただし長引かせない努力を

モラトリアムは大人になるために必要な猶予期間であり、悪いことではありません。

ただ、長期化して社会的責任から逃げ続けてしまうことのないように、自分と向き合って決断する勇気と行動力を持ちましょう。

心身の健康を保ち、無気力にならず悩みを乗り越える心の強さを養ってくださいね。

(秋カヲリ)

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※画像はイメージです

※この記事は2021年06月16日に公開されたものです

秋カヲリ (心理カウンセラー)

心理カウンセラー・文筆家・動画クリエイター取材メディア「スター研究所」編集長。
1990年生まれ、都内在住。広告、取材、コラムまで多数執筆。
ベビーシッターを活用してバリバリ働く一児の母。

Webサイト:https://hagitaro1010.wixsite.com/writer
Twitter:https://twitter.com/hagiwriter
note:https://note.mu/hagitaro1010

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