元TBSアナ・伊東楓さんに「働きやすい環境の作り方」を聞いてみた
ごく平凡な会社員として、会社の片隅で働く編集部・ライターが、今気になるビジネスパーソンにインタビューする連載【この会社の片隅に】。今回は、元TBSアナウンサーで絵本作家の伊東楓さんにインタビュー。「働きやすい環境の作り方」について聞きました!
撮影:大嶋千尋
取材・文:みやちゃん/マイナビウーマン編集部
「転職したい」。
「仕事を辞めたい」。
自然とこの言葉が出てきてしまうという人は多いはず。
今の環境に居心地の悪さを感じているからこそ、口をついて出てくるこの言葉。生きていく中で大半の時間を仕事に割くわけだから、できるならば「働きやすい環境」に身を置きたい。
でも、現状から脱するには労力が必要だし、何よりちょっと怖い。
そんな悩みを抱えて今回お話しを聞きに行ったのは、元TBSアナウンサーで現在絵本作家として活躍されている伊東楓さん。組織から飛び出してチャレンジを続ける彼女に、「働きやすい環境を作る方法」について聞いてきた。
問題児だったアナウンサー時代
現在フリーとして活動されている伊東さんに、今日は「働きやすい環境の作り方」について、お話しを聞かせていただければと思ってます。
私は、組織を卒業した人ですけどね(笑)。
卒業したからこそ見えるものがあったのでは、と。
もちろん、組織で働くことの良い面といまいちな面は見えました。良い面で言うと、やっぱり仲間がいるのってすごく心強い。何か失敗したり壁にぶつかったりした時に、解決するヒントを教えてくれたり、支えてくれたりする先輩や同僚がいますから。
フリーで働くとなると、一人で戦っていくことになりますもんね。
そう。一人で歩んでいるとヒントをもらえる機会も少ないですし、誰に相談したって100%納得できる回答をもらえるわけでもない。そんな時に、「ああ、組織っていいな」と感じます。
反対に、一人で働いてみてここは良かったという点はありますか?
全く人の目を気にしなくなりました(笑)。
全く、というのはすごいですね。以前は気にする方だったのでしょうか?
一応サラリーマンだったので。当たり前のことですけど、組織の中の一員としてどう見られるかはとても気にしていました。
ただ、入社当初から“問題児”と言われていたので、何をするにしても周りは寛容でしたね(笑)。
問題児?
私、自分をつくろえなくて。極端な例でいうと、先輩にもため口を使っちゃうみたいな。でも、不思議と怒られることはなかったですね。何せ、問題児だと思われていたので(笑)。
そんな部分が、伊東さんの愛されるポイントでもあったのかもしれませんね。
そうだといいな~(笑)。
働きやすい環境を作るには「自分に正直になること」が大切
絵本作家に転身とは、かなり思い切った挑戦だったのではないでしょうか?
挑戦ではありましたけど、楽しみな気持ちが大きかったです。私、喜怒哀楽のない人生ってすごく楽しくないと思っていて。変だと思われるかもしれないですけど、うまくいきすぎている人生も嫌で。つまんなくないですか?
いえ、全然つまんなくないです。
(笑)。でも、本音を言うと、その場所(TBS)にいられるならい続けたかったですよ。でも、い続けるべきじゃないって判断したから。
いろんな方に「会社を辞める選択をして出ていけるのってすごいね」って言われるんですけど、私は組織の中で頑張れる人だってすごいと思います。結局、今いる環境が自分に必要なら、その環境で頑張ることが一番だろうし。
私のような保守的な人間は、今いる環境に居心地の悪さを感じても、なかなか出て行くという選択には踏み切れないです。
それなら、部署異動をするとかでもいいんじゃないですかね。立ち止まってる時間や自己分析に掛ける時間はもちろん大切ですけど、私はその時間すらもったいないから走り続けたいんです。
サラッと言われてますけど、それってかなり難しいことですよね。
そうですか? 壁にぶつかったら方向転換、また違う壁にぶつかったら方向転換……を繰り返して、とりあえずできることは全部やって、働きやすい環境に身を置きたいですけどね。
うーん。でも、慎重に考えずに部署異動したら「前の部署の方がよかった」なんてことになる可能性も十分あり得ますよね……。
前の部署がよかったと思った時は、戻ればいいじゃないですか。
むりむりむりむり! 戻れないですよ!
え、なんで!? なんで戻れないと思うんですか?
“自分から出て行ったくせに戻ってきた奴”として周りから見られるのが怖いので。
え~! 「冒険に出てましたが、すぐ戻りました~!」くらいのノリでいいですよ。「世界一周を予定してたけど、日本一周で終わっちゃいました~!」とか(笑)。
軽すぎません(笑)?
ていうか、他人の目を気にされてますけど、万人に好かれることなんてないですから。
私は、世の中には自分のことを「好きな人が5割」「嫌いな人が5割」いると思ってるんですよね。つまり、自分がどういう行動を取ったとしても、好きになってくれる人も嫌いになって離れていく人も半分ずつ現れるということ。
自分の力が及ばないところで、そういう原理のもと生きているというなら、自分に正直に生きればいいや! と思いますね。
なるほど。働きやすい環境を作ったり選んだりするのは自分しかいないのに、私は他人の評価ばかりを気にして、環境を改善することを放棄していたのかもしれません。
何かを得るには何かを手放す必要がある
かなり他人の目を気にしている私なのですが、“自分らしくのびのびと働く”というのが、働く上での永遠のテーマで。どんなことを心掛けるといいでしょうか。
固執しない、今の場所に。すがらない、現状に。
用意していたかのようなお言葉(笑)。
(笑)。のびのび働けない現状があるのに、変わるのが怖いからと今にすがってるんですよね? 手放したくないって。でも、手放してみると必ず新しい何かが手に入るから。
逆に、手放さないと手に入らないものがあると?
そうそう。人が抱えられるもののキャパシティって決まってると思うので。今を絶対手放したくないと抱え込んでいる限りは、何も現状は変わらない。苦しいまま。
だから、まずは「あれもダメ」「これもダメ」って思う気持ちから、手放していくといいんじゃないでしょうか。
なるほど。「ダメ」と制限を掛けていた気持ちを手放すだけでも、“自分らしく働く”は実現できますね。
その通り。そもそも、固執しているものが軌道に乗らなくなって落ちていった時、自分もそれと一緒に人生を転落させるんですか? 怖いよ(笑)。
「こうするといいかも!」とか「やりたいかも!」は叶えるべき。
かっこいい……。躊躇してできなかったことが人生の中でいくつもあったので、今思うととてももったいないことをしていたな、と。
伊東さんは、新型コロナウイルス感染症が落ち着いたらドイツに行かれるとのことですが。
そのつもりです! 特に何も決めてないですし、挫折して泣いちゃうかもしれませんけど(笑)。
伊東さんなら、挫折話すら「面白い経験だった」と楽しくお話ししてくれそうですね。その時は、また取材させてください!
よろこんで!
『唯一の月』伊東楓/光文社
元TBSアナウンサー・伊東楓さんの初絵詩集『唯一の月』。美しい絵とまっすぐな言葉で、今を強く生きる勇気をくれる一冊です。ぜひ、チェックしてみてください。
※この記事は2021年05月14日に公開されたものです