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タレント・ぺえ流「退屈な仕事との向き合い方」

#この会社の片隅に

ミクニシオリ

ごく平凡な会社員として、会社の片隅で働く編集部・ライターが、今気になるビジネスパーソンにインタビューする連載【この会社の片隅に】。今回は、タレントのぺえさんにインタビュー。「退屈な仕事との向き合い方」について聞きました!

取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部

仕事が楽しいって言い切れない時、どうするのが正解なんだろう。

石の上にも3年なんて言うけれど、今の仕事に対してモヤモヤしちゃうこともある。でも環境を変えるのって勇気がいることだから、モヤモヤしたまま停滞してしまうのは、きっと社会人あるある。

思いきって転職できない自分って、勇気がないのかな。でも、小さなモヤモヤで逃げちゃう自分も、弱くて子どもっぽいだけなのかもしれないし……。仕事への向き合い方って、なかなか正解が分からない。

そんな漠然とした悩みを抱えていたら、タレントのぺえさんが思いっきり喝をいれてくれた。タレント活動だけでなく、ショップ店員やYouTuberなど幅広い活動を続ける彼女だけど「仕事ばかりしている人なんてつまらない」とバッサリ。仕事の楽しみ方だけでなく、人生の楽しみ方まで教えてくれた。

悩み苦しむ時間も、自分の人間味につながっていく

ミクニ

『退屈の愛し方』の出版、おめでとうございます! 本にはどんな思いが込もっているのでしょうか?

ぺえ
本を出すにあたって、読んだ人が疲れちゃうような本なら書かない方がいいなとはずっと思っていて。ただ、私も悩みながら生きているということをみんなに知っていただくことで、悩んでいるのは自分だけじゃないんだなって、安心できる人がいればいいなと。

ミクニ

タイトルは『退屈の愛し方』ですが、ぺえさんも仕事を退屈に感じてしまうことはありましたか?

ぺえ

そんなの、常に感じていますよ。ただ、仕事に飽きているなっていう感覚って、本当にやりたいことへの活力になるでしょ。私は必死で仕事している人って、つまらない人なんじゃないかと思う時もあります。

私も芸能界に入ってすぐは常に必死だったし、仕事をしていない自分が許せない時期もありました。今は意識的に仕事と自分の距離を取ってているんですけど、意識が低い今の人生の方が楽しいんですよね。

ミクニ

でも、変化しようとするのって勇気がいることだったりしますよね。仕事との距離を取ろうと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?

ぺえ

私の場合は、になっちゃうんだけど……テレビのお仕事を始めた時に、バラエティのお仕事に人間味みたいなものを感じなかったんですよね。カンペを見て話して、決められた手順で話を振ってもらって。上手に受け答えできたらタレントとして輝けるのかもしれないけど、一人の人間として得られるものはあるのだろうかって。

私は“ぺえ”として、“一人の人間”として生きたいんだなあと思って、感情を押し殺すのはやめたいなと思った。結果的に、無理して周りから求められるキャラに合わせていた時よりも、自分に正直になってからの方が、応援してくれる人も増えたんですよね。

ミクニ

自分のキャラクターを作ったり相手に合わせたりしているうちに、自分が苦しくなってしまうこともありますよね。でも会社って特に、自分の素の部分とは違うキャラで頑張ってしまうことも多い場所なんじゃないかと思います。

どうしたら、ぺえさんのように自分を開放させてあげられるんでしょうか?

ぺえ

傷ついた経験は無駄じゃないし、むしろ必要な経験だと思うんですよ。私が本当の自分でいることを選択できたのは、傷ついた時期を過ごしたからなんです。

若いうちにたくさん傷ついておくのは、悪いことじゃないと思いますよ。同じ傷でも、歳を重ねてからでは耐えられなくなることも多いですから。傷つくことを恐れるのは当たり前ですけど、私は自分についたたくさんの傷こそ、自分の色気だと思っています。

「気に入らない上司の悪口」が仕事のモチベだっていいじゃん

ミクニ

悩んでいる時間も、自分の糧になると。

ぺえ
傷ついた人って、自分の心に敏感になれるんです。その敏感さを持ち続けてほしいですね。傷つかないために、鈍感になる必要はないんですよ。
ミクニ

でも敏感がゆえに、悩んでる自分を恥ずかしいと思ったり、弱い自分を嫌だと思ってしまう人もいるんじゃないでしょうか? 自分に刃を向けてしまうというか。

みんなが我慢できていることを許せない自分は、ただワガママで子どもなだけなのかな……なんて深く悩んでしまったり。

ぺえ

えっ、そんなこと考える必要あります? だってさあ、むしろワガママであるべきだと思わない? でもね、真面目な人ってそういう風に考えちゃうよね。

じゃあ、基準を決めておいたらいいんじゃない? 例えば職場で言うワガママは10個までにしよう、とか決めてさ。それが全部はねのけられたら、自分がいるべき場所はここじゃないんだなってことなんじゃない?

ミクニ

なるほど。自分に合った場所にいれば、自分らしくいることはワガママではなくなりますもんね。

ぺえ

そうそう、合う合わないの問題も大きい。ワガママが一個通らなかったからってすぐに心折れちゃうのも違うと思うけどね。でも、基本的には職場ってワガママを言い合う場所でいいと思うのよ。

だって今って、嫌なら一人でも働けちゃうんだから。自分が譲れないことは、きちんと言葉にして伝えていった方がいいですよ。

ミクニ

例えば、それが譲れないほどのことじゃなくて、ちょっとモヤモヤするなあ、くらいのことだった時はどうですか?

ぺえ
小さいモヤモヤって最後は大きくなっちゃうから、早いうちに誰かに吐き出すのがいいと思う。職場の人に言えないなら、友達とか家族でもいいし。気に入らない上司のことは心の中でとことんバカにするし、それが逆にモチベーションになったりもする。
ミクニ

ちょっと分かるかも。嫌いな人のムカつく行動って、友達に報告したくなりますよね。

ぺえ
あんまりおおっぴらにやっちゃうとね、それも問題だけどね。ただ、職場とは関係のないコミュニティで愚痴こぼすのなんて、誰にも迷惑かけてないんだからいいでしょ?
ミクニ

人をバカにするのがモチベーションだなんて、こんなにはっきり言ってくれる人は今までいなかったかも。

ぺえ

じゃあ真正面から向き合って死ねば? って話じゃん。もうここから先は生きるか死ぬかの話なのよ。私だってそれができないから、そうやって斜めに見たような考えを持つしかない時もあるわけ。我慢してると開放された自分の思いって出てこないモンなの。

職場でモヤモヤしたり怒鳴られたりして、自分のやる気も将来の希望もなくなるくらいなら、上司の毛穴と鼻毛数えて友達に報告すりゃいいのよ。

社会人としての正解を追求するより、自分に正直な人生であれ

ミクニ

たしかに……ワガママかなあとか、逃げた方がいいかなとか深刻に考えすぎる前に、スルースキルを高めてみるという手もありますね。

ぺえ

私も平和主義だから、相手が間違ってると思ってもすぐ言えないことはあるわけよ。だから、毛穴の数を数えて我慢してやってるんだから。

仕事のモチベーションなんてねえ、最寄り駅についた瞬間に友達に電話してムカつくヤツのことを面白おかしく話すのが楽しみとか、そんなくらいでいいのよ。ただ、そんなことを考える余裕もないほどの苦しさがあるなら、逃げてみちゃってもいいと思うけどね。

ミクニ

仕事そのものがすごく楽しくないとしても、友達に愚痴る瞬間が楽しいと思えるなら、それもある意味で人生を楽しめているということですもんね。

ぺえ

楽しみをどこに感じるかは人それぞれでいいのよ。どんな仕事でもさ、まっすぐ向き合ったって楽しさは得られないの。仕事を通して自分自身の気づきを重ねていくことで、自分は何を楽しいと思うのかを知っていくんだと思う。

自分の周りにガッツがある人がいて、その人と比べて「自分は頑張れてないかも」って思う人もいるかもしれないけど、そいつはそいつだから。自分とは違うんだから関係ないの。

ミクニ

人は人っていう割り切りは、社会を生きていく中ですごく重要ですよね。

ぺえ
うん、比べる必要がないからね。どんな職場にいても、あなたが一人の人間として生きていることを忘れないでほしいですね。周りの人も一人の人だし、あなたもそうなんだから。

ミクニ

仕事というテーマだったけれど、人生の楽しみ方を教えていただいたような気がしてます。

ぺえ

無理して笑う必要なんてないのよ。私はね、無理して笑ってる時は嘘の笑いってことにしてるから。ほぼ相槌よね。棺桶に入る時だけ笑っていられれば、それでいいと思う。その時に笑っているためには、今無理して笑わないほうがいいんだろうなと思ってるの。

我慢して周りと足並みそろえた生き方が真っ当な生き方って思われがちだけど、それは人間として真っ当じゃなくない? って私は思う。真面目な人ほどそう思っちゃうんだと思うけどね。

ミクニ

そんな真面目さがある人に、何かエールになるようなメッセージをお願いします!

ぺえ

若いうちは仕事の成功が人生の成功って思うかもしれないけど、長い目で見たら、大した財産になってないってこともあると思う。社会人として真っ当である前に、自分の心に真っ当に生きてほしい。そうでさえあれば、何か楽しめるから、大丈夫大丈夫。

『退屈の愛し方』ぺえ/KADOKAWA

YouTubeチャンネル『ぺえ』でも「お悩み相談したい!」と絶大な支持を得るタレントのぺえさんによる初めてのエッセイ本。仕事、恋、夢……さまざまな角度から彼女ならではの視点で切り込んだ渾身の一冊です。

※この記事は2022年03月25日に公開されたものです

ミクニシオリ

1992年生まれ。2017年にライター・編集として独立。芸能人やインフルエンサー、起業家など、主に女性に対するインタビューを多数執筆。恋バナと恋愛考察も得意ジャンル。ハッピーとラッキーがみんなに届きますように。

Twitter:https://twitter.com/oohrin

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