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「力を抜く作業」が大切。吉岡聖恵の人生の歩み方

#Lifeview

マイナビウーマン編集部

あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。

取材・文:鈴木美耶/マイナビウーマン編集部、撮影:須田卓馬

「期待してるよ」という言葉は、自分を突き動かす魔法のような言葉にもなれば、自分の首を絞める呪縛にもなる。そして、仕事で中堅層といわれる世代の今の私がこの言葉を掛けられたなら、それはきっと呪縛だ。

期待に応えたいけど、思い通りにいかない。夢中でこの道を駆け抜けてきたけど、ちょっと疲れてきた。

ここまで自分なりに走り続けてきた人は、これからの人生をどんなふうに歩めばいいのだろう。

37年間が詰まった1冊は「我が子のよう」

4月16日(金)に発売された、吉岡聖恵初のフォトエッセイ『KIYOEnOTE ―キヨエノオト―』。彼女自身の半生が1冊にギュッとつめ込まれており、これから世に出て行くことを思うと「まるで我が子が嫁に出るようだ」と語る。

「この1冊の中には、思い出深い写真がたくさん載っているんですけど、やっぱり赤ちゃんの頃の目力の強い写真のインパクトたるや……(本書9ページ目)。ライブの時の私の目をしています。この頃から既にそうだったのか、ってね(笑)。

個人名義の書籍を作ってみたい気持ちは10年くらい前からあって。今回はメンバーとは離れて、ゼロからイメージを形にしていく作業をしていましたが、“種からお花を咲かせる”ような感覚で、とても楽しく、できあがったものを見た時は感動しましたね」

駆け抜けた37年間がキラキラと輝き、温かいエネルギーを感じる1冊だ。

その中で綴られる、2017年からの約2年間にわたる放牧(活動休止)期間については、やはり見逃せなかった。彼女の人生の中で、大きなターニングポイントとなったに違いないから。

期待される吉岡聖恵像を全うしていた

路上ライブから始まり、アリーナを埋め尽くす存在にまで登りつめたいきものがかり。大きな期待の中で無我夢中で駆け抜けてきた日々から、放牧に至った経緯までを、彼女は今どう振り返るのだろう。

「男子たち(いきものがかりの男性メンバー)が曲を作ることに精一杯力を注いでくれているから、彼らの思いや協力してくれるスタッフの皆さんの思いをしっかり引き継いで、曲の出口として、私は聴いてくれる皆さんにより良いものを届けなければいけないと思っています。

ただ、どうやら責任を背負い過ぎるところがあるようで。コップに、頑張りたい気持ちとか疲労感がだんだん溜まっていって、表面張力でギリギリ保たれているみたいな状態になっていたんです。

それでも私は、“歌うこと”や“いきものがかり”にずっと熱中していたから、なんとかやってこられました。

だって、これだけ打ち込めることがあるってラッキーですし、『これくらいでいいかな?』ってやっていると、意外と自分って見えてこないじゃないですか。そして、メンバーそれぞれがやりきったからこそ、前向きに放牧を決断できたんだと思います」

「やりきったからこそ、放牧を選択できた」という言葉には、少しも迷いがなかった。

また、放牧したことで気づくことも多かったそうだ。

「放牧したことで、自分の世界に凝り固まりすぎていたなって気づきました。私、勝手に周りが期待しているであろう吉岡聖恵像を作り上げちゃって、自分の想像の中の山を先頭きって登り始めるんですよ。旗を振りなから、『メンバーいくよ~!』みたいな(笑)。

でも本当は、そんな吉岡聖恵像を求められていなかったりするし、山なんてない平坦でのどかな所だったりするんです。だけど、夢中だから気がつかなかった。そして、目一杯を通り越していたんでしょうね。

ただ、放牧中男子メンバーに『私が、大切に作ってくれた歌で失敗したら嫌でしょ?』って聞いたら、『お前が歌った時に、うまくいかなくてショックを受けて落ち込む方が心配だよ』って言ってくれたんですよね。

お互いを尊重し合っているからこそ、それぞれが頑張っている時に『大丈夫?』なんて声を掛けられなかったけど、放牧して2人の思いも聞けた今は、『頑張りすぎていたんだな』と気づけたし、少し肩の力が抜けたように感じます」

「力を抜く作業」が走り続けるコツ

何年、何十年と続く社会人人生。「いつまで走り続けなくてはいけないのだろう……」と心がひしゃげてしまう時もある。

働く畑は違えど、アーティストとして最前線を走り続ける彼女。どんなことを意識しながら活動を続けているのか。

「実は半年前くらいから、体調管理の一環として、昼食はたまごサンドとサラダって決めていて。お休みの日は、いつも頑張っている自分を労う気持ちも込めて、デリバリーのたまごサンドを食べるのが好きなんです(笑)。

良い歌をお届けするために練習を重ねてライブで披露していると、声がかすれたり体力が足りなかったりすることがあり、一番良い状態を本番に持ってくるのが難しくなることもあって。

なので、良い状態を作り出すために、たまごサンドを食べるとかしっかり休むみたいな、まずは『力を抜く作業』がとても大事だと思っています」

続けてこう語った。

「働くこととプライベートを充実させてあげることって、人によってそれぞれ比重が違うと思うんです。だからこそ、それぞれに対する自分の気持ちを整理してあげるのが働き続ける上で大切。

『私って何が好き?』『これから何かやりたいことある?』って優しく聞いてあげると、きっと何か気づくことがあるはず。働くことだけじゃなく、プライベートのことだって能動的に判断し対応していくことが、走り続けるコツかもしれないです」

いきものがかりの“吉岡聖恵”が全てではない

最後に、自分なりに仕事と向き合い続けて、今少し息切れしている人にこんな言葉を残してくれた。

「私も、まずは“いきものがかりの吉岡聖恵”として皆さんに認知されているので、そのイメージを崩さないようにとプレッシャーを感じることがあります。

でも、そんな時は『“いきものがかりの吉岡聖恵”が全てではないから』って言ってあげることもあります。良い意味で自分に期待しすぎず、プレッシャーから解放してあげるんです。

それでもつい気張っちゃう時も正直あるけど、そんな面も含めて、私自身は年々自分のことを好きになっていて。

だから、皆さん。よく寝て、よく食べて、自分を否定するのではなく、好きなところを見つけてあげてください。そうすると、きっとラッキーな方向に人生は進んでいくと思います」

いきものがかりの吉岡聖恵として15年間活動を続けてきた彼女から、「“いきものがかりの吉岡聖恵”が全てではない」という言葉が出てくることに、なぜだか少し救われた気がした。

今この場所にいる自分が全てではないし、自分のことを好きでいられるくらい自分なりに頑張れているなら、人生の歩み方はどんなふうであってもいい。

それなら、亀のようにゆっくりだけど着実に前進する日もあれば、ムーンウォークで颯爽と後退するださい日があってもいいのかもしれない。

肩の荷が下りた今、自らに向けられる期待は、呪縛から、自分を突き動かす魔法のような力に変わった。

INFORMATION

『KIYOEnOTE ―キヨエノオト―』吉岡聖恵著(文化出版局)

結成20周年を迎えるいきものがかりのボーカル・吉岡聖恵の初フォトエッセイ。

誕生から37年間のエピソードが、当時の写真や日記などと織り交ぜて綴られる。読むと気持ちが前を向く一冊です。

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※この記事は2021年04月19日に公開されたものです

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