他人の評価は気にしない。周りに振り回されないミキの仕事流儀
あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。
撮影:佐々木康太
取材・編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部
思い通りにいかない時、悔しくて苦しくてすべてを投げ出したくなる時がある。働いていると、自分が期待していた評価が得られずもがいたり、他人と自分を比べては一喜一憂したり……そんな日々を送ることもあるだろう。
4月13日に、東京に進出してからの2年間が詰まった初のオフィシャルブックが発売されたミキの2人。順風満帆に見えた彼らにも、漫才師として評価されたい強い気持ちとは裏腹に、東京に来てすぐはそううまくいかない時期もあったんだとか。
きっと彼らも同じように悩み苦しんだんだろうと思っていたが、「この2年間、あっという間でしたね〜。楽しい2年間でした!」と2人そろって愉快な笑顔を見せた。
東京に来るなんて思ってもいなかった
「大阪で仕事してた時に、舞台で東京に行かせてもらうことがあって、そん時先輩に『勘違いすんなよ。めちゃくちゃウケるけどみんなそうやから。だからって東京で売れると思ったら大間違いやからな』って言われて、『え、ほんますか』って出て行ったら、ややウケやったんすよ(笑)。話ちゃうやんって」(昴生さん)
「そのややウケで勘違いして東京出てきました」(亜生さん)
そんな冗談で場を和ませてくれる2人だが、東京に来る1年前までは全く「東京に来るなんて思ってもいなかった」と語る。しかし、東京に来てからは漫才だけでなくバラエティやドラマなどいろんなところで引っ張りだこだ。
漫才師として売れたい気持ちを強く持つ彼らは、漫才以外の仕事に対してどう感じているのだろうか。
自分のやりたいことと違う仕事をやるなんて、正直私だったら嫌だ。どう向き合っていいか分からない。でも彼らは違った。
他の仕事はある意味いい思い出作り
「漫才しているからそういう仕事ができる。漫才せえへんかったらそんな仕事の話、来ないですからね。ドラマなんて、普通に生活してて出られることなんてないですから。ありがたいですね」(昴生さん)
「ドラマをやって思ったんやけど、『俳優さんってすごいわ』って思います。こっちから撮って、あっちから撮ってっていろんな角度から撮影して、それも何回も同じシーンをやるじゃないですか。漫才師なんて、そんなんないもん(笑)」(亜生さん)
「行って出てしゃべるだけやから(笑)」(昴生さん)
漫才師にも漫才師なりの苦労があるはずなのに、2人は終始口をそろえて「漫才師で良かった!」と語っていた。
やりたいことの軸をしっかりと持ちながらも、他の仕事は「ある意味いい思い出。オファーがくるうちに経験しておきたい」と楽しんでいた。そして、他の仕事をするからこそ漫才の楽しさを改めて実感しているようにも見えた。
彼らを見ていると、自分のやりたいことと違う仕事をやるのも、案外悪くないのかもしれないと思えてきた。
しかし、そんな彼らにも悩んだ時期があったという。
ただ単純に漫才を聞いてほしかった
「中川家さんとかは、舞台に出た時にお客さんが『よし! 漫才見るぞ』って座り直すんですよ。僕らにはそれがない」(昴生さん)
「東京に出てきてすぐは、舞台に出た時とか漫才やっている時にキャーって声が多すぎて正直嫌だったんですよね」(亜生さん)
漫才師として評価されたい気持ちが強かった2人だけに、もやもやを抱えることも多かったそうだ。
「『漫才やってるのになんでやねん! 話聞けや!』って思ってましたね」(亜生さん)
「亜生がそれでイライラしちゃうことがあったから、『そんなん、みんな経験するやつやし、イライラしてもしゃあない』って亜生に言ってました」(昴生さん)
昴生さんのその一言もあり、亜生さんは「自分の気持ちを押し殺して、場が盛り上がればいいや」という考えになったそう。
会社員として働く私も「もっとここを見てほしいのに」と思ってしまうことがある。自分が望む評価が得られないと、どんどん自信を無くし気がついたら自分をうまく表現できなくなっている。
そんな私は周りの評価に振り回されながら仕事をしていたんだと気づかされた。
周りの評価は気にしない。自分たちが楽しければいい
「周りの評価って変えようと思っても変えられないですからね」(亜生さん)
「僕らは好きなことやらせてもらってるし、自分がやりたいことやってるから、人の評価とかは聞かんけどな〜。どうでもいいと思うタイプです」(昴生さん)
「僕は気になりますけど(笑)。エゴサーチもバリバリしますね! でも、書かれていることが良いことでも悪いことでもうれしい。悪いこと書かれてても、『あ、おれ悪いこと書かれるようになったんや』って思う。
M-1の決勝直後もすぐエゴサーチして、いろんなこと書かれてたけど、こんなに見てくれてる人がいるんだってうれしくなりましたね」(亜生さん)
そう語ると、2人は口をそろえて「自分たちが楽しければいいんですよ」と言った。
周りの評価を全く気にしない人もいれば、気になってしまう人もいる。でも、そこでブレてはいけないのは「自分がやりたいことを楽しんでやっていればそれで良い」ということ。
彼らのようにそう思っていれば、周りから何を言われようと、1つの意見として軽く受け止めることができる気がした。
「悪いこともこんなに言われることなんてないし、ありがたいなって思います。まあ凹みますけどね(笑)」(亜生さん)
そう語る亜生さんはきっと、自分がやりたい漫才を心底楽しんでいるのだろう。
今年2人は東京に進出してから3年目を迎える。7月からは『ミキ漫2021全国ツアー』も控えているが、これからについて2人はどう考えているのか聞いてみた。
「今年はいつも以上に漫才のことを考えていきたいですね。すべてにおいて少しずつパワーアップしていきたいと思います。まあ、毎年そうなんですけどね。他の仕事やってる時でも、漫才のことしか考えてないですね」(昴生さん)
「僕は今お昼ご飯のこと考えてます(笑)。鶏肉を揚げたやつ食べたい」(亜生さん)
「唐揚げでええやん(笑)」(昴生さん)
取材中の2人は終始息の合ったコンビネーションでテンポの良い会話を繰り広げ、まるで漫才を目の前で見ているかのようだった。
「M-1 王者になることをひとつの目標として、これからも自分たちの漫才を頑張りたい」
そう語る彼らから向けられたまっすぐな視線に私は、周りの評価に振り回されずに自分がやりたいことを楽しめばそれで良い、そう背中を押された気がした。
『MIKI OFFICIAL BOOK ミキ、 兄弟、 東京』
発売日:2021年4月13日発売
価格:2,420円
頁数:232P 版型:B5変形判・並製
発行行:ヨシモトブックス
発売:株式会社ワニブックス
『ミキ漫 2021全国ツアー』
主催:吉本興業株式会社
一般発売:2021年4月17日10:00
チケット料金:前売3,500円
公式HP:https://mikiman.yoshimoto.co.jp/
※この記事は2021年04月16日に公開されたものです