歴史の壁にもぶつかっていく「ぶつキャリ」。セイコーウオッチ髙橋美名さんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:井田愛莉寿(マイナビウーマン編集部)
撮影:洞澤佐智子
今から26年前、働く女性のために作られたセイコーの腕時計、ルキア。
ルキアが生まれた1995年は、女性の働き方が変遷していった過渡期。しかし、当時の女性用腕時計は、きゃしゃなブレスレット型のデザインが主流で、女性が仕事の場面で使える実用的な腕時計はあまりありませんでした。
「時代と共に多様化する女性の生き方。それに合わせて、新しい提案を続けるルキアというブランドのレガシーが好きなんです」
そう語るのは、セイコーでルキアの宣伝を担当する女性、髙橋美名さん。
働く女性のための腕時計はどのようにして誕生したのか。今回は、髙橋さんの働き方から、ルキアという時計に込められた思いまでを探っていきます。
セイコーの歴史が作る「ブランド力」という魅力
働く女性たちの心を動かした一つのムービー
ええっ! なんと! まさか同い年の女性があのムービーを作っていたなんて……! “働く女性のための腕時計”がまだ存在しなかった1990年代前半、綾瀬さん演じる主人公がもがいてルキアを作り上げるまでを描いた2分間が本当にすてきなんですよね。
ちなみに、どういった経緯や思いであのムービーが作られたのでしょうか?
ルキアが25周年を迎えたアニバーサリーのタイミングで、若い世代の女性たちにもブランドのレガシーを知ってもらいたいと思ったのがきっかけでした。
私もセイコーに入社するまで知らなかったのですが、もともとルキアが誕生した時代は女性の腕時計というと、きゃしゃなブレスレットタイプが主流。
女性の社会進出に伴ってパンツスーツやジャケットがはやり始めていたものの、そんな働く女性のライフスタイルに合致するような、実用的でファッションにも合わせやすい腕時計は存在しなかったんです。
そこでセイコー社員が強い思いを込めて作ったのがルキアでした。
あのムービーを見た時、「真剣に働くってかっこいいな」という価値観を与えてもらったんです。それでムービーに登場する初代ルキアを探して、何軒も時計屋さんを巡りながらやっと見つけて購入しました!
きっとあのムービーを見た多くの女性が、こんなふうにルキアに魅力を感じたんじゃないかなと思います。
女性の生き方に寄り添い続けるルキア
今を生きるわたしたちは、いろいろな選択肢が持てるようになりました。
女性の姿は本当に多様で、働いている顔も、恋している顔も、お母さんの顔もある。今の時代のルキアは、そんな全ての選択肢に寄り添う時計になっています。
少し前だと、女性が働くことが逆にフィーチャーされ過ぎて、「働く=正義」な価値観に染まってしまっていた気がしたんですが、今はそれも違う。
全ての選択肢に寄り添うっていいですね。何を選ぶのも自由だから、恋愛をめっちゃしたいならそれもいいし、結婚しない人生でもいいし、働くことを突き詰めたいならそれもいい。ルキアの変遷に女性の人生を重ねるとすごくシンパシーを感じます。
歴史と新しい風、どっちが大切?
みなさんがイメージする通り、歴史の裏には“堅さ”があったりします。
でも、最近では「新しいことに挑戦しよう」「若い世代の意見を積極的に取り入れよう」という社風に変わってきています。わたしたち現場の社員が、直接社長にプレゼンする機会があったり!
もちろん、それを実現するまでにはいくつかのステップがありますが(笑)。
そうですね。例えば、わたしの世代の直感では、今の働く女性ってどんなシーンでも使いやすいシンプルなデザインを好むと思うんです。でも、長い歴史の中、過去売れた実績があるのは華やかなデザイン。
その上でどんな商品や広告を作るか、上層部と若手チームでひたすら議論になったことがありました。
わたしが働く上で重要視しているのは「自分が納得できるかどうか」という軸です。だから、納得できなかったらとことん戦いながら着地点を探します(笑)。
やっぱり歴史を知る方や営業などの現場の意見もきちんと聞く、柔軟な姿勢は持っていたい。でも、一番大事なのはお客さまのためになっているかどうか。その視点を忘れずに、自分が納得できるようデータを集めたり、チームでひたすら議論したりします。
今携わっているルキアというブランドが、たまたま自分とドンピシャな世代や女性像をターゲットにしていることにはすごく縁を感じていますし、ありがたく思っています。
だから、わたしが「いいな」と思える腕時計でないと、ターゲットの女性たちには届けられないかなって。そんな意識を持って、壁にぶつかりながらも日々仕事に取り組んでいます!
※本取材は2020年10月に行いました
※この記事は2021年04月23日に公開されたものです