聞き上手とは? 特徴とメリット・聞き上手になる方法
「聞き上手になりたい」と思ったことはありませんか? 話を聞いているつもりなのに、「聞いてる?」と言われたり、うまく質問ができなかったり……。今回は、コミュニケーションに関する研修を手掛ける櫻井弘さんに、聞き上手になるコツを教えてもらいました。
話し上手は聞き上手です。
なぜならば、「話す」と「聞く」の関係性とは、「吸う」(聞く)と「吐く」(話す)の「呼吸」のようなもので、「聞けなければ話せない」からです。
ビジネスにおいても、相手の話を聞くことができなければ、スムーズに事が運ばないこともしばしば。
そこで今回は、聞き上手になるための方法を紹介します。
聞き上手とは? 聞き上手になることのメリット
「聞き上手な人」と聞くと、どんな人物像を思い浮かべますか?
おそらく多くの方が、「話し手の話を黙ってうなずきながら聞ける人」というイメージを抱いているのではないでしょうか?
しかし本当の「聞き上手」とは、共感力や傾聴力・質問力があり、自分の話もバランス良くできる人だと私は考えます。
相手の話にきちんと共感を示したり、たとえ自分とは違う意見であっても話をさえぎらずに聞いたり、相手の意見を踏まえた上で質問をしたり、自分の考えもちゃんと述べたりできる人が、「聞き上手」であるといえます。
そんな聞き上手になることで、相手から好かれたり、信頼と協力の基盤ができたり、良好な人間関係を形成できたり、というようなメリットを得ることができます。
恋愛面でも有利になる場合が多い
ちなみに、聞き上手な女性についてどう思うかを20~30代の男性370人にアンケート調査(※)したところ、87.3%が「好き」だと答えました。
ほとんどの男性が聞き上手な女性に対して好印象を持つということが分かります。
聞き上手な人の特徴
まずは聞き上手な人にはどんな特徴があるかチェックしてみましょう。
(1)表情がやわらかく笑顔である
聞き上手な人は常に微笑みを浮かべていることが多いです。
表情が読めない、または不機嫌そうにしている相手に対して、人は距離を置こうとする傾向にあります。ネガティブな表情をしている相手には自分からいろいろと会話をしようと思わないのです。
一方で表情がやわらかい人には自分が受け入れられているような気持ちになって、いろんな話をしてしまうのでしょう。
(2)人の感情に敏感
聞き上手な人は感受性が鋭く、相手は聞いてほしいだけなのか、それとも感想やアドバイスがほしいと思っているのかということをすぐに察知することができます。
相手の話したい雰囲気を察知し、ほしい言葉をそっと返す。聞き上手な人はこれが自然とできていることが多いです。
聞き上手になるには? 基本的な会話のコツ
では、どうすれば聞き上手になれるのでしょうか?
ここでは、聞き上手になるための基本的なコツを紹介します。
(1)アイコンタクトをとる
冒頭でも述べた通り、「話す」と「聞く」はセットになっています。
特に、聞き手の反応の示し方としてまず心掛けておきたいのが、「打てば響くように聞く」ということです。
この時に忘れてはならないことが、しっかりと相手を見る、アイコンタクトです。
アイコンタクトのコツは、自分の両眼で相手の両眼を見ないことです。
ではどうしたら良いかというと、自分の左目で、相手の左目を見るのです。
なぜかというと、左目は感性を司る「右脳」とつながっているので、左目を合わせることで相手に「感じの良さ」を伝えることができるからです。
最初は多少の違和感があるかもしれませんが、相手に緊張感を与えずに、「感じ良く聞く」ことができるはずです。
(2)「うなずき」や「共感の相槌言葉」を活用する
人の話を聞く時には、言葉だけではなく「うなずき」や「共感の相づち言葉」をタイミング良く入れましょう。共感の相づち言葉とは、「そうだよね」「分かるよ」「私もそう思う」など、相手の気持ちに歩み寄った表現のことです。
イメージとしては「餅つきの返し手」のように、相手に合わせてタイミング良く返してあげるのです。
うなずきは「首から上のボディーランゲージ」だと思って、少しオーバーアクション気味にメリハリや変化をつけて表現しましょう。
(3)正確に聞くことを意識する
できるだけ相手の話を正確に聞くためには、「定量化・見える化」などの努力が必要になってきます。
そのためには、「アクティブリスニング」という聞き方が不可欠となります。
アクティブリスニングとは、コミュニケーション技法の1つで、「傾聴姿勢」のことです。
相手の話をただ受動的に聞き流すのではなく、前段でも紹介したアイコンタクトやうなずき、共感の相づち言葉を通して積極的(アクティブ)に聞く姿勢を表現することで、相手の言葉の中にある事実や感情を把握しようとする聞き方です。
具体的な方法としては、「話し手のキーワードをその場で、おうむ返しして確認すること」がおすすめです。
例えば、「西口改札を出て3番出口です」と話し手が言ったならば、「分かりました!」とか「はい」という返し方ではなく、「西口改札を出て3番出口ですね?」と話し手が話した通りの言葉で繰り返して、その場で「確認」します。
このことを別名、「確認話法」あるいは「フィードバック話法」とも呼びます。
ビジネスでは必須の「正確な聞き方」として身に付けておくと、あなたを守る武器になることでしょう。

あなたは聞き上手なタイプ? 診断でチェックしてみましょう。
上手な質問のポイント
最後に、「自分が相手に聞く」=「質問」をする時のポイントを押さえていきたいと思います。
日本人は一般的に“質問下手”な人が多いです。その理由は至って簡単で、自分が質問されると、責められているような気持ちになるから。そして「相手もきっとそう思うであろう」と、質問することを避ける傾向にあるからです。
「質問」という漢字は、「質を問う」と書きます。質問上手な人とは、強い関心や好奇心を持って「質問」できる人なので、実は相手の気持ちをグッとつかむことができる、コミュニケーション上手な人ともいえるのです。
ここでは、上手に質問できるようになるためのポイントを紹介します。
(1)全体質問と限定質問を意識する
質問の基本のキに当たるのが、「オープンクエッション」と「クローズドクエッション」です。私はこれを「全体質問」と「限定質問」と呼んでいます。
「オープン(全体質問)」とは、話し手の意見や考え方を自由に話してもらえる質問の仕方です。
例えば、「Aさんは〜についてどのようにお考えですか?」などという質問の仕方です。
このように質問すると、話が好きな人は長々と話し続けてしまう可能性もあります。一方、話があまり得意でない人にとっては、何を話していいか分からずに口が重くなりがちです。
そんな時には、もう1つの「クローズド(限定質問)」が有効です。
これは、「インドア派ですか? アウトドア派ですか?」「四季の中ではどの季節が好きですか?」などの限定した聞き方です。
ただ、あまり繰り返すと「尋問」のように受け取られて、かえって話し手に警戒心を抱かせてしまいかねませんので、やり過ぎには注意です。
いずれにしても、質問をするためにはまず、相手に対して関心を持つことが大切になってきます。
(2)目的に応じた聞き方をする
ビジネスにおいてのコミュニケーションには、実は大きく分けて3つの目的と機能が存在します。
1つ目が「良好な人間関係を築く」という目的で、これを達成するための機能が「話す力」(会話力)です。
2つ目の目的が「相互の理解促進」で、機能は「伝える力」(説明力)です。
そして3つ目が「人を動かす」という最終目的で、機能が「動かす力」(説得力)となります。
そしてこれら3つの大きな目的を達成するための前提となる機能が、「聞く力」なのです。
そこで、この目的を達成するための「質問のポイント」をご紹介します。
良好な人間関係形成のためには「分かっていることを聞く」
まず「良好な人間関係形成」のための質問の仕方としては、「分かっていることを聞く」という「社交的質問」です。
代表的なのが、天気に関する質問です。
「今日は昨日よりも寒いですね?」などと分かっていることを質問して、「相手のイエス」を引き出して良好な関係をつくっていきます。
理解促進のためには「分からないことを聞く」
次に「理解促進の質問」です。この場合は「分からないことを聞く」と良いでしょう。
お互いの理解を促進するためには不可欠な質問です。
「なぜ、ここでその工程が重要になるのですか?」など、分からないことや知りたいことを質問して、理解を促進します。
あるいは、「抽象的な点」を「具体的」に、「不明確な点」を「明確」に、「つながりが分かりにくい点」を「整合性を保つように」意識して、それぞれ質問します。
「具体的に言うといくつぐらいですか?」「ほぼ問題ないとは確率で言うと何%くらいですか?」「Aの理論からなぜBがつながるのですか?」などとなります。
人を動かすためには「相手の不安を解消する質問」などをする
そして「人を動かす」目的を達成するためには、「相手の不安を解消する質問」「結果をイメージさせる質問」「実現可能な方法を伝えるための質問」などが挙げられます。
例えば、「もしも〜の不安が解消されれば、問題はありませんか?」「~があれば安心して暮らせますね?」「実現するにはA案、B案、C案どれがよろしいですか?」のような質問が考えられます。
さまざまな状況で、さまざまな相手に対して、考えられるあらゆる質問を投げかけることが大切です。
少々ハードルが高いかもしれませんが、「人を動かす」とはそれだけ難しい目的なのです。
(3)確認→要約→質問の順番で進める
上記でも触れた通り、人を動かすのは容易なことではありません。
そこで、相手を動かす急所やツボを発見するための効果的な質問へと持って行く、そんな1つのモデルを示したいと思います。
ステップ1:「確認」する
まずは、相手の話を正確に聞くために、積極的な姿勢で傾聴するアクティブリスニングを意識します。その上で、キーワードをおうむ返しすることで内容の「確認」をします。
ステップ2:「要約」する
次に、相手の話の重点ポイントや前提条件、そして説得するためのツボを、「つまり〜を最も重要視するということですね?」というように「要約」します。
ステップ3:「質問」する
その上で、再確認・仮定・代案などを「質問」します。情報の掘り下げや念押しをすることで、相手の自発行動を促して行くのです。
人の話を聞く上での注意点
最後に、人の話を聞く上でのNGポイントをお伝えします。
(1)思い込みや決めつけで聞かないこと
人の話を聞く時に、思い込みや決めつけのような「先入観」を持つのはNGです。
できるだけニュートラルな状態で話を聞くように心掛けましょう。
「できるだけ」と表現したのは、それだけ実行するのが難しいということです。
しかし、だからこそ「先入観を持たずに!」と心掛けて聞くことで、相手から学び、それが新しい発見へとつながり、自分の可能性を広げてくれるのです。
(2)自分に都合良く聞かないこと
人間は元々、自己中心的な存在です。
コミュニケーションにおいては、「話の効果(目的の達成度合い)は、聞き手が決定する」という考え方があります。
つまり、話し手の話の内容の解釈は、聞き手が行うのです。この時、話し手の意図と全く違って伝わることがあります。
その原因の1つが聞き方で、「自分に都合良く解釈してしまうから」なのです。
それはまるで、子どものお使いのごほうびのようなもので、「○○ちゃん、にんじんと玉ねぎとじゃがいも買ってきてくれる? そしたらごほうびにアイスも買ってきて良いからね!」と言われた場合、頼まれた野菜は忘れてしまうかもしれませんが、ごほうびのアイスは忘れません。
大人だったら、「アイスを買ってきていい」と自分に都合良く聞くことは避けて、全体を客観的かつ正確に聞きたいものです。
(3)批判的に聞かないこと
もしあなたが誰かに何かを説明した後で、そのことについて同じ人から何度も質問された場合、どのように感じるでしょうか? そして、どのようにその相手に伝えるでしょうか?
例えばAさんは、相手の話を聞いた上で、「私の説明の仕方が分かりにくかったと思います。ご質問の点は〜ということでよろしいですか?」と、自分の「説明不足」と捉えます。
しかしBさんは、心の中で「この人はさっきから同じことばかり聞いて、何を考えているのだろう? 何度同じことを言わせれば気が済むんだ!」と、相手の理解度や行為を「批判的」に捉えながら聞いています。
Bさんのような話の聞き方をする人の1つの特徴として挙げられるのが、「ですから先ほども申し上げましたように……」と、「相手が悪い」という一方的な態度で、全く相手の気持ちや言動に耳を傾けていないことです。
もし同じことを何度も質問された場合は、批判的に聞かず、「なぜ同じことを聞くのか? その背景や原因、気持ちは何だろうか?」と、さまざまな視点から問題意識を持って聞くようにしましょう。
聞き上手な人は「コミュニケーション上手な人」でもある
いかがでしたか?
今回のテーマである「聞き上手な人」は、「最もコミュニケーション上手な人」といっても良いでしょう。
人の話を聞くことや質問することが苦手だと感じていた人は、ぜひ今回紹介した方法を試してみて、聞き上手への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
(櫻井弘)
※マイナビウーマン調べ
調査日時2017年4月3日~2017年4月4日
調査人数:370人(22歳~39歳の男性)
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※画像はイメージです
※この記事は2021年03月10日に公開されたものです