Keyword.03「映画」
好評につき連載継続決定! 今注目の若手俳優・木津つばさのエッセイ連載。毎週1つ編集部から与えられるキーワード(お題)に沿って、自身のルーツや想いを綴ります。キーワードから紐解かれる“木津つばさ”とは?
はじめに
こうしたら良いのでは? とか、こうしたら喜ばれるんじゃないか? とか。
そういうことではない「笑い」や「共感」には、答えがない。
今回のテーマは「映画」。この世には映画が無数にあふれています。
今回は自分の好きな映画『火花』について、少しばかり語らせてください。
答えのないものに立ち向かい、はばまれ、もがき、それでも前に進もうとする。
お笑い芸人として活動する2人の物語。だが、常に隣を歩き続ける「売れたいのに売れない」という現実との葛藤を描くストーリーです。
これは僕も同じ、役者として表現をしていく日々。
「共感」が大前提となってくる仕事柄で、うまくいかないことなんて当たり前。
ただ、この映画。
まずは「誰かに届けたい」と足掻くことこそがかっこいいのかもしれない、って思える作品でした。
実際に届く・届かない云々より、相手を笑顔にできるかどうかなんて、やってみなきゃ分からない。
この映画を見る前に、とある舞台を観劇した自分。
最高のパフォーマンスを見せられた。
こんな思いになるなんて思わなかった、あの夜。
役者自身のまっすぐな人柄と繊細さに惹かれた。
最後まで一挙手一投足に憧れた。
というか、終わらないでくれとまで思っていた。
帰りたくなかった。
彼は、そこに生きていた。
どれだけの人が共感してくれるのか?
どれだけの人が感動してくれるのか?
どれだけの人を笑顔にできるのか。
そんなの、「得体の知れないこと」なのに。
それさえも輝いて見えた。
そして映画『火花』を見た。
瞬時に感情が重なって、リンクした。
そして、俺は覚悟した。
おわりに
自分の人生観なんて自分で決めるもので、他人に決められるものではないけれど、他人の人生観を見て勉強することはたくさんある。
これだから演劇はやめられない。
(文:木津つばさ、撮影:Yuto Fukada)
※この記事は2020年12月06日に公開されたものです