「かしこまりました」はビジネスシーンで非常によく聞くフレーズですね。
ところで、この「かしこまりました」は、元々どのような意味なのでしょうか? どのように使うと感じが良いのでしょうか?
「かしこまりました」の意味と使い方を解説します。
■「かしこまりました」の意味
よく聞く「かしこまりました」の意味は「分かりました」「了解しました」です。
漢字では「畏まりました」と表記します。文法的な説明をすると、
動詞「畏まる」の連用形「畏まり」
+
丁寧の意味を持つ助動詞「ます」の連用形「まし」
+
過去の意味を持つ助動詞「た」
というふうに成り立っています。
「畏まる」には主に4つの意味があります。
1.畏れ慎むこと、恐縮、遠慮
2.命令・依頼などを謹んで承る意を表す
3.堅苦しい感じがする、窮屈である
4.恐縮して感謝する
「畏まる」の「畏」は、「畏れ多い」(恐れ多い)に使われる「畏」と同じです。
「恐れ多くも承りました」と自分の立場を低くすることで相手を敬います。
ビジネスシーンでは上から目線より下から目線、つまり低姿勢であることが好まれます。「かしこまりました」というフレーズは使った人の好感度を上げる敬語です。
■使い方と例文
「OK」「分かったよ」「了解」を丁寧にした敬語として、先輩、上司、取引先などの目上の人に返事をする時に使用します。
単体で使うのではなく、「かしこまりました。それでは明日朝9時半に伺います」などのようにその後に言葉を続けることが大切です。「かしこまりました」の後に何もないと、相手は本当に理解しているのだろうかと不安になります。
私の著書『話し方・聞き方のビジネスマナー』(高橋書店)の前書きにも書いていますが、敬語で大切なのは相手に対する思いやり、配慮、優しさです。
ここで「かしこまりました」の使い方を具体的な例文で見ておきましょう。
「かしこまりました。それではいただいた企画案につきまして社内で再度確認をとります」
「かしこまりました。それでは9月20日午後3時に伺います」
「かしこまりました。折り返し、すぐに電話いたします」
■「かしこまりました」の類語
続いて、「かしこまりました」と似たような意味を持つ類語について見ていきましょう。
◇「承知いたしました」との違い
「かしこまりました」の類語には「承知いたしました」があります。
「承知いたしました」も、ビジネスシーンで、目上の人に「了解」と返事をしたい時に使います。
「承知」には2つの意味があります。
1.命令や指示などを引き受けること「承知いたしました」
2.事情などを知ること「その案件については承知しております」
「承知」は「承る」と「知る」から成り立っています。つまり、「承知しました」は「知って引き受けました」という意味になります。
少し文法的な意味も補足しておきますと、「受ける」の謙譲語が「承る」ですので、「承知する」にはもともと謙譲表現を含むと考えることもできます。
「承る」の「承」という字は、他に承諾、承認、承服といった言葉に使われていますね。「承」が使われる言葉は、いずれも、目上の人に敬意を払って使用することが多いです。
「かしこまりました」と「承知いたしました」は両方とも丁寧な表現ですので、どちらを使用しても構いません。
ここで、「承知」を使った例文を挙げておきます。
「承知しました。すぐ電話で確認いたします」
「承知いたしました。それではいただいた案で社内確認をとります」
「承知いたしました。それでは10月3日16時に伺います」
◇「了解しました」との違い
「了解しました」という言葉もビジネスシーンでは頻繁に使われています。
ただし、「了解しました」は「かしこまりました」とは違い、誰に対しても使用していい言葉ではありません。
目上の人に使うと、場合によっては「失礼だ」と思われてしまう可能性があるので注意しましょう。
なぜなら、目上の人には謙譲語を使うのが基本で、「了解しました」のような丁寧語では敬意を示すには不十分だからです。「分かりました」と言っているのとあまり変わりません。
「了解しました」を目上の人に使用する場合は、「しました」の部分を「謙譲語」に変換します。
「しました」の謙譲語は「いたしました」なので、「了解いたしました」となります。語尾を変えるだけで好印象フレーズになります。
◇「分かりました」との違い
また、「分かりました」には丁寧を表す助動詞「ます」が含まれていますが、これは「OKです」にニュアンスが近く、カジュアル、フレンドリーな印象があります。
そのため、目上の方に対する適切な言葉遣いとはいえず、少し失礼な話し方をしていることになってしまいます。
上司や取引先の担当者など、目上の方と話したり、メールで連絡を取ったりする際には、「かしこまりました」または「承知いたしました」に言い換えると良いでしょう。
■大切なのは相手に対する思いやり、配慮、優しさ
条件反射的に使ってしまうことが多い「かしこまりました」「承知いたしました」ですが、単に「かしこまりました」や「承知いたしました」と言うのではなく、後ろに言葉を続けると、自分が理解したことが相手に伝わって親切です。
敬語は、相手に「得」を与え、自分も「徳」がある人と思われるためのコミュニケーションツール。敬語を使う時は相手に対する思いやりを忘れないようにしましょう。
参考文献
唐沢明『圧倒的好印象を与える“言い換え”ベストフレーズ集』(宝島社)
唐沢明『話し方・聞き方のビジネスマナー』(高橋書店)
(唐沢明)
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