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25歳で乳がん。元SKE48矢方美紀が本気で向き合った「病気」と「お金」のこと

【特集】もう大人だし、本気でお金の話をしよう

太田 冴

キャッシュレス、資産運用、投資……。一見とっつきにくいけど、大人になった今だからこそ知っておきたい「お金」の話。賢い貯め方・使い方・増やし方まで、芸能人・著名人のみなさんと一緒に本気で考える特集です。

取材・文:太田冴
編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部

はつらつとした笑顔に、ハリのある透き通った声。ビデオ通話の画面越しに見せてくれた姿は、乳がんという大病を経験したとは思えないほど、明るく元気なものでした。

元SKE48の矢方美紀さんが乳がんと診断されたのは2018年、25歳の時。アイドルを卒業して、次の夢へとまい進している中での病気は、全く予想していなかったことだったそう。

矢方さんは、乳がんという病気にどのように向き合ってきたのでしょうか。

今回はマイナビウーマンの特集「もう大人だし、本気でお金の話をしよう」に絡めて、私たちが避けては通れない「病気にまつわるお金」のことも含め、リモートでお話を聞きました。

25歳で判明した乳がん「将来が曇っていく感覚」

矢方さんは2017年までSKE48のメンバーとして活動していました。グループを卒業した翌年に乳がんが発覚したとのことですが、診断を受けた時の正直な気持ちを聞かせて下さい。
ショックというよりは、不思議な感じでした。特に体調が悪かったわけではなく、セルフチェックをきっかけに乳がんの検査を受けに行ったんです。自分の体調はとても良いのに、病気だということが信じられませんでした。
25歳という若さで判明した乳がん。戸惑いは大きかったのではないでしょうか。
20代でがんになるというのは想像もしていませんでした。だからこそ、将来との向き合い方を考えないと、と思いましたね。まだ出産も結婚も経験していませんし、これからいろんな仕事をして経験を積み重ねていきたいと思っていたタイミングだったので。未来がどんどん曇っていく感じがしました。
戸惑いを抱えながら病気と向き合うのは簡単なことではないと思います。診断を受けてから、まずどのような行動を取ったのでしょうか?
まずは母に、がんの診断を受けたことを告白しました。母が保険関係の仕事をしていたのもあって、私が加入している保険のことを詳しく聞かせてもらったり、どこの病院に通えばいいのかというのを相談したりしましたね。
身近な相談相手は、お母様だったんですね。
あとは、当時バイトしていた店舗のオーナーさんにもよく相談していました。オーナーさんはとても気さくで交友関係も広く、ご家族ががんだったこともあり知識が豊富な方だったんです。病院についても、いろいろと情報をくださいました。
周囲の人に相談することに抵抗はなかったんでしょうか?
あまり隠し事ができないタイプなんです。顔や態度に出てしまうくらいなら、その原因を共有した方がいい。周囲に自分よりも人生経験が豊富な方が多かったのもあって、相談しているうちにだんだんと不安は薄れていきました。
とても客観的にご自分を捉えていらっしゃいますよね。すごいことだと思います。

今までやってきたアイドルのお仕事では、自分を客観視して動かないと、「あの子、調子に乗っているんじゃない?」と思われたり、自分だけが周りに迷惑をかけてしまうような環境をつくってしまったりすることが多かったんです。

それがすごく嫌で、なるべく自分のことを客観的に見られるように癖を付けていました。そのおかげで、今回病気になった時もパニックにならずにいられたんだと思います。

「病院に行く度にお財布の中身を気にしていました」

矢方さんはどのような治療をされたのですか?
まず左乳房の全摘手術を受けて、その後に抗がん剤治療、放射線治療、ホルモン治療を受けました。現在もホルモン治療は受けていて、あと数年続く予定です。
そんなに長い期間、治療が必要になるんですね……。これまでの治療には、かなりお金がかかったのではないでしょうか?
そうですね……。手術時の入院費だけで数十万円、検査や治療で病院に行く度に数万円かかりました。保険適用で3割負担されるとしてもそれくらいするんです。もしスケジュール通りに治療が終わらなかったらとんでもない金額になってしまうんじゃないか、という不安はありましたね。
20代半ばの年齢で支払うには、かなり厳しい金額ですよね……。病院に行く時、いくら必要だというのは事前に分かるものなんでしょうか?

それが、私の通っていた病院では「この検査が〇〇円」というメニュー表みたいなものがあるわけではないので、全部の検査や治療が終わってお会計をする時に初めて分かるんです。

私は、乳がんの性質をより詳しく知るために遺伝子検査というものを受けたのですが、保険適用外だったというのもあり20~30万円かかりました。しかもローンを組めるわけではないので、その場で一括で支払わなくちゃいけません。

それだけのまとまったお金を用意するのは、本当に大変ですよね。
毎回お財布の中身を確認して、足りなかったら病院内にあるATMに行っておろして、というのを繰り返していました。
矢方さんは保険に加入していたとおっしゃっていましたが、どのような保険に入られていたのでしょうか?
私が加入していたのは、治療費でかかった金額を保険会社に申請したら後から戻ってくるタイプのもの。病院でお会計する時には、いったん自分のお財布から払わなくちゃいけませんでした。

ウィッグ、下着……。かさんでいく「治療費以外の出費」

後で戻ってくるとはいえ、いったん多額のお金を負担するのは大変ですよね……。治療費以外でお金がかかったことはありますか?
女の子って、普段から何かとお金がかかるじゃないですか。美容院に行ったり、コスメを買ったり、ネイルをしたり。私はなるべく「今までやっていた当たり前のことを継続しながら治療をしたい」という思いがあったのですが、結果的にはそれに加えて、治療で変化してしまった見た目に対する費用もかかることになりました。
治療による変化、というと?

まずはウィッグです。抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜けてしまって1年半ほどウィッグで過ごしたのですが、本当にお金がかかりました。ウィッグって、化学繊維のものや人毛のもの、ブランドもいろいろあって値段もピンキリ。高いものは20~30万円するんです。

最初はネットで1万円未満のファッションウィッグを買いましたが、肌に合わなかったりお手入れが大変だったりでトラブルが多くなってしまって……。結果的にいろいろ買って試すことに。蓋を開けてみれば、1カ月でウィッグに5~6万円使っていました。

そんなに! 合うウィッグを探すのは難しいことなんですね。

10~20個は買いましたが、半分以上はダメでした。やっぱり1日中付けていると、自分の頭に合わなかったり、何かしている時もウィッグに気を取られて集中できなかったりするんです。

しかも合うものが見つかったとしても、永遠に使えるものではないから買い直さなくちゃいけない。最終的には、人毛の医療用ウィッグを10万円くらいで購入して、お手入れをしながら使いました。

買ったら終わり、というわけではないんですね。
あとは、下着も総入れ替えしました。手術で片方の胸がなくなって、それまで使っていた下着が体型に合わなくなってしまったんです。
どのような下着を買ったんですか?
ユニクロやGUで売っているカップ付きのキャミソールを2枚重ねて着てみたり、下着屋さんでパットの厚いものを買ってみたり……。これもいろいろ試しましたね。
ウィッグもそうですが、自分に合うものを探しているうちにお金がかかってしまうんですね……。
洋服にも工夫が必要でした。放射線治療をしている間は、首から胸にかけて放射線をあてる場所を油性ペンみたいなもので書くのですが、その印を1カ月ほど付けっぱなしにしないといけないんです。印が見えない服を探して着ていました。
印を付けっぱなしという話、初めて知りました。
他にも、肌の色が変わってしまったので濃い色のファンデーションを買い直したり、味覚の変化に合わせて食べ物を変えてみたり……。とにかくいろいろな部分で小さなお金が積み重なっていきました。

「仕事をゼロにするわけにはいかなかった」

ウィッグなどにかかる費用は、やはり保険の対象にはならないんでしょうか……?
なりませんね。なので、仕事をゼロにするわけにはいきませんでした。私は抗がん剤治療などをしながら仕事を続けていたのですが、それは正直お金が必要だったという理由もあります。もし一括で数百万円もらえるタイプの保険に加入していたら、仕事を休むという選択肢もあったかもしれません。
保険会社から戻ってきたお金もあると思いますが、最終的に自分自身で負担しなければならなかった金額は総額いくらほどだったのでしょうか?
おそらく、数百万円だと思います。私は保険に入っていてその金額なので、保険に入っていない人はどれほどなんだろう……と。それに、人によっては治療中に仕事ができない方もいると思いますから。今みたいに、コロナの影響で仕事が急にできなくなることもあると思うと、貯蓄ってすごく大事だなと思います。
まさに今、私も実感しています……。お金を理由に、治療法などの選択肢を変えたこともあったんでしょうか?
治療法については、私は保険適用の標準治療を選択しましたが、保険がきかない治療法もたくさんあります。それを選んでいたとしたら、もっとお金がかかっていただろうなと思います。
治療法を選ぶ時にも、お金のことは付いて回るんですね。

がんになった時にまとまったお金が入る保険に加入していたら、いちいちお財布を気にせずに治療に臨めたのかなと思います。私は貯蓄もそんなになかったので、働かなくてはなりませんでした。

病気に対して向き合うだけではなくて、仕事のことやお金のことも考えなきゃいけないし、治療や将来の自分の体のことも考えなくちゃいけない。私はたまたま冷静でいられましたが、人によっては、それだけで何が何だか分からなくなっちゃう人もいると思うんです。

お金がなければ、治療に専念することもできない。お金の重要さを、強く感じます……。私たちのような働く独身女性は、将来の病気のリスクに対してどのような備えをしておくべきなのでしょうか?

今ってすごく情報があふれていますよね。インターネットを見れば、それなりにしっかりとした医療情報も載っていますし、病気を経験された方がブログなどでたくさん発信をしています。

コロナの影響で自分の時間を作りやすい今、病気に関係なくとも自分の将来のマネープランや人生設計を考える時間を作ってほしいなと思います。今のうちにいろんな情報を蓄えておけば、いつか「あの時に仕入れた情報が役に立ったな」と感じるはず。

本当にその通りですね……。矢方さんのお話を聞いて、目が覚めました。これを機に、将来設計を考えてみます!

名古屋からリモート取材をお受けいただき、ありがとうございました!

太田 冴

ライター/平成元年生まれ。舞台、ドラマ、映画、俳優、アイドルグループ、コスメなどを幅広く愛する雑食ミーハー系オタク。ジャニーズはいつも好き。最近は朝ドラ「スカーレット」の十代田八郎さんが好きすぎて毎朝悶えている。労働環境・ジェンダーなどの社会問題にも関心あり。

●note:https://note.com/sae8320

●Twitter:https://twitter.com/sae8320

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