
超入門。フジファブリックから学ぶ恋愛論 #ラブソングのB面
聴く人、聴く環境によって「ラブソング」の捉え方はさまざま。そんなラブソングの裏側にある少し甘酸っぱいストーリーを毎回異なるライターがご紹介するこの連載。 初回は、マイナビウーマン編集部加入ほやほやのみやちゃんがお送りします。
「待ってても誰も迎えにきやしない」
高校2年の冬、恋愛に対する受け身の姿勢を早々に崩すことになった。
星降る夜に迎えにきて!
私にとってのラブソングといえば、フジファブリックの『星降る夜になったら』。
大半の歌詞の意味なんてどうでもよくて、「星降る夜になったらバスに飛び乗って迎えにいくとするよ」という一節と、疾走感さえあれば女子高生の私的にはOKなのだ。
なにせ、恋愛真っ最中で、何を聴いたってほぼ同じ。幸せに聴こえる。
それでも、何度でも繰り返しこの曲を聴き「彼がいつか私を迎えにきてくれる」ことを信じてやまなかった。
彼とのラブライフ
そもそも彼を好きになった理由なんて今となっては思い出せない。通学電車で会う以外の接点はなかった。それでも、毎朝見かける彼のことが、なんとなく、でも確実に好きだった。
そして、びんびんに感じとり、信じていた。
「彼と結ばれる未来」を。
そんな彼との一番の思い出は、全国高校サッカー選手権の予選。サイドバックを務める彼の勇姿を一目見たいと、学校をずる休みして会場に駆けつけた。
愛あるが故の突っ走った行動が学校にばれ、高校卒業までの約1年間毎日反省日記を書き続けたのは、忘れようにも忘れられない。
ただ、そんな楽しい高校生活も長くは続かない。事件が起こる。
フクダ、カノジョ、デキル
彼は私と結ばれる運命であったはずが、いつの間にか彼女ができていた。
その日もいつも通り某ファミレスでのバイトを終えた私は、『星降る夜になったら』を聴きながら、自転車をかっ飛ばしていた。
自宅まで約15分。3回はリピートできる。田舎の夜は空気が澄み切り、星が本当に降ってきそうだ。
その時、「ブブッ」と携帯電話のバイブレーションが響く。友人からの連絡だ。
「フクダ、ごつめの彼女できたみたいやで」
ごつめの……彼女……? 思わずペダルをこぐ足を止め、立ち尽くした。
待って……私との約束があるでしょうがああああ!!
あんなにキラキラとしていた夜空が涙でにじみ、この曲はデスソングとして一時期封印することとなった。
受け身の姿勢では幸せになれない?
さて、ここまで彼を想い、運命を信じてやまなかった私だが、実は彼とは一言も話したことがない。彼と結ばれるもなにも、始まりもしていない。
超受け身&超妄想癖な私は、頭でばがり考えて自分からは行動ができないたちだ。
あの曲だって、「星降る夜になったら、バスに飛び乗って迎えにいくとするよ」と、自分が誰かのもとに駆けつける描写を歌っているのに、勝手に志村さん(フジファブリックのボーカル)にご足労いただいていた。
恋愛中はいつだって都合よく物事を脳内変換できるけど、この事実だけはひん曲げることができない。
待ちの姿勢は危険だ。次好きになった奴には絶対自分から告白する!
この出来事をきっかけに、私はそう心に決めた。
幸せはこちらから迎えにいくスタイルで
結局次に好きになった人には、3度告白をしたが、2度フラれ、1度無視された。
「待っても来ないなら、自分で行けばいい。ゴールを決められない相手なら、自分で決めにいけばいい」。あの経験から10年、まだまだ結婚の予定はないし、婚活中の私だけれど、恋愛・結婚に対して超ポジティブになっている。
婚活をしていると、いい人に最速で出会いたいと思ってしまうけれど、どんなことだって一筋縄ではいかない。しかも、結婚はタイミングだというように、好きだけではうまくいかないことがほとんどだ。
でも、待っていても何も始まらないし、トライしてエラーだったときはきっと運命じゃなかっただけだ。大丈夫。出会うべき人がほかにいる。
そして、できればいつだって恋愛を楽しんでいたい。だからこそ、幸せになる日を悠々と待ってなんていられない。こちらから迎えにいきたい。
そう思えるのは、やっぱり思春期のあの経験があったからで、『星降る夜になったら』に自分を重ねていたからだ。
いい経験をしたねTEENAGERの私! 未来はとっても明るくて、楽しいよ! そんな風にあのときの自分にちょっとだけ感謝しよう。
(文:みやちゃん/マイナビウーマン編集部、イラスト:オザキエミ)
※この記事は2019年10月31日に公開されたものです