コンプレックス女子な自分 #女子を困らせる人
アラサー女子を困らせる人はこの世にたくさんいます。セクハラ、パワハラ、マウンティング、毒親……。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」なんてことわざもありますが、女子のほうが敵多くない? そこでこの連載ではアルテイシアさんに、困らせてくる人々に立ち向かう知恵を授けてもらうことにしました!
今回のテーマは、マイナビウーマンの特集【愛すべき困(コン)プレックス】にからめて「コンプレックス女子な自分」である。
いつもとは趣向を変えて、自身のコンプレックスに悩む女子が生きやすくなるヒントを書きたいと思う。
コンプレックスはダメなものではない
かつての私もコンプレックスの総合商社、今風に言うとグローバルカンパニーだったため、コンプレックスに悩む女子の気持ちがよーくわかる。
最初に言いたいのは「コンプレックス=ダメなもの、ではない」ということだ。
人は社会的な生き物なので、自分とまわりを比べるのは自然なこと。じゃないと「まわりはスーツだけど、自分は全裸で出勤します!」とナチュラルにキメて、ポリス沙汰が続出するだろう。
特に自分がつらいときはまわりと比べて、隣の芝生が青く見えるものだ。
たとえば私も仕事が少なかった時期は、売れっ子のライターと比べてコンプレックスの塊だったし、ねたみ・ひがみ・うらみ・そねみでバンドが組める状態だった。だが、それがやる気や向上心にもつながったので、コンプレックスにはプラスの面も大きい。
とはいえつらいものはつらいが、それは「感じるしかない感情」である。トゲに触れると痛いのと同じで、欲しいものが手に入らないとつらい。
それはごく自然な感情なので「こんなふうに感じる自分はダメだ」と自己批判しないこと、「今は、これでいいのだ!!」と心にバカボンのパパを飼うことをおすすめする。
コンプレックス女子の特徴
人は格差に苦しむ生き物だ。現代日本は自殺者が多いが、第二次世界大戦中は非常に少なかったらしい。人は「みんな貧しくて、みんなつらい」という状況だと、死ぬほどの苦しみは感じない。「自分だけがつらい」という孤独感がコンプレックスを加速させて、人を追いつめるのだろう。
なので「コンプレックス告白大会」を開催するといいんじゃないか。川柳大会やあいうえお作文大会でもいいだろう。
友人同士でコンプレックスを語り合えば「自分だけじゃないんだな」と安心するし、「みんなコンプレックスを抱えながら、がんばって生きてるんだな」とやさしい気持ちになれる。
すると「私もがんばって生きてるよな」と自分にもやさしい見方ができるようになる。これがメンにじんわり効くのである。
というのも、コンプレックス女子はみんな根が真面目ながんばりやさんなのだ。だから自分に厳しくて、「こうあるべき」「こうじゃなきゃダメ」と自分を責めてしまう。逆に不真面目な奴は「オレオレ詐欺をやって成長しました!」とかふざけたことを言ったりする。
真面目な女子は「コンプレックスをなくして、自己肯定感を高めなければ!」と己にプレッシャーをかけて、「それができない自分はダメだ」と負のループに陥りがちだ。よって私は自己肯定感云々よりも、「思考のクセを変えること」を提案したい。
自分が生きやすくなるために、思考のクセを変えよう。そのために「WANTとMUSTとCANを整理すること」を心がけよう。
「こうあるべき」「~しなければ」というMUST思考の強い女子は多い。
特に毒親育ちだったり、親が支配的だったりすると「親の期待に応えなければ、親の理想の娘にならなければ(そうじゃなければ愛されない)」と刷り込まれる。子どもにとって親の愛情を得られない=死なので、それは当然のことである。
「~しなければ」というMUSTが強すぎると「自分はどうしたいのか?」というWANTがわからなくなる。読者の相談に乗っていても、MUSTとWANTが無意識にごっちゃになっている女子が多い。
たとえば「結婚したいけど婚活がうまくいかなくてつらい」という相談。本人の話を聞きながら整理していくと、自分が「結婚したい」わけじゃなく、親や世間からの刷り込みで「結婚しなきゃ」と思い込んでいる、というケースは多い。
そうやって整理するうちに「私、本当は男と暮らしたくない。自分が欲しくない目標のためにがんばってるから、つらいんだ」と本人が気づいたりする。
そこで「じゃあ、本当に欲しいものは?」とWANTを探して、「そのために何ができるか?」とCANを書き出して、具体的な計画に落としていく。
その結果「私が本当にほしいものは……猫!」と気づき、猫を飼うためにお金をためて引っ越しをして、猫を飼ったら心が満たされて、独身コンプレックスや結婚しなきゃという焦りがなくなった。と報告をくれる読者もいる。
悩み相談ではアドバイスを求められるが、答えは本人の中にある。私にできることは、思考の整理をお手伝いすることだけだ。
かつての私も思考がグルグル迷子女子で「何もかもがイヤだ~つらいよ~」と両手両足をバタバタさせていた。それだと手足の血流がよくなるだけだし、挙句に「よし、アンデスに行って牛飼いになろう!」と狂った結論に飛びつきがちだ。
みなさんはアンデスに行く前に、思考の整理をやってみてほしい。
アルテイシア流! メンを回復させる方法
コンプレックスがあるからメンが病む場合もあるが、メンが病んでるからコンプレックスが強化されてますます病む、という場合も多い。
そこで、我がメンの回復に役立ったセルフセラピーを紹介しよう。膣にパワーストーンを入れるとかじゃないので、安心して試してほしい。
ジョースター療法
ジョースター卿(※)の「逆に考えるんだ」というアレである。
※ジョースター卿/「ジョジョの奇妙な冒険」第1部の登場人物。息子のジョナサンに「ジョジョ、それは無理矢理引き離そうとするからだよ。逆に考えるんだ、『あげちゃってもいいさ』と考えるんだ」と逆転の発想を説く。
たとえば私はガサツな性格で、掃除や片付けが苦手なことがコンプレックスだった。でも、そのぶん夫が部屋を散らかしても気にならない。つまり「ガサツ」は「大らか」に言い換え可能なのだ。
自分を責めそうなとき、無理やりでも「逆に褒める練習」を続けていくと、思考のクセが変わってくる。物事の見方がネガからポジへと変化していく。
実際、短所は長所の裏返しといえる。たとえば私と違ってキレイ好きの友人は潔癖症で悩んでいる。彼女は体液が無理でセックスが苦痛だそうだが、私はどんな汁がかかっても「拭けばいいさ」とへっちゃらだ。
ジョースター卿の顔で「掃除が苦手だから、セックスが得意なのさ」と己を褒めて伸ばしていこう。そうすれば、立派な英国紳士になれるはずだ。
中二病療法
「俺の中に眠る、もう一人の俺……!」という中二病のアレである。
私は孤独に弱く、寂しがりやすぎる自分がコンプレックスだった。夫と結婚したあとも「寂しい発作」に襲われて、なんでこんなに寂しいの? こんな自分は変なんじゃ? と不安になることがよくあった。
あるとき「こいつの正体をつきとめてやる」と自分の心を深く見つめると、「右腕に封印したアイツ」は出てこなかったが「俺の中に眠る、もう一人の俺」を発見した。
その正体は「過去の寂しかった自分」だった。親に愛されなかった自分、頼る家族のいなかった自分が「私はまだここにいる! 寂しいよ! オギャー!!」と泣いていたのだ。
その過去の自分に「そりゃ寂しかったね。でももう大丈夫、もう一人じゃないから」と言い聞かせるうちに、徐々に発作が起こらなくなっていった。
ネガティブな感情にフタをしていると、ふとした瞬間にあふれて発作が起こる。そこで「これは今の自分じゃなく、過去の自分の感情では?」と注目してみると、心が落ち着くことが多い。
そうやってセルフセラピーを続けた結果、「生きるのが楽しい! オッペケペー♪」とごきげんなJJ(熟女)が爆誕した。アナルに盛り塩するとかよりも簡単で安全なので、試してほしい。
コンプレックスを克服する方法=忘れる方法
自分が生きやすくなる一番のコツ、それは人間関係を見直すことだ。「この人のこと好きだな、一緒にいて居心地いいな」と思う人と仲良くして、そうじゃない人とは距離を置くことである。
私は「アルテイシアの大人の女子校」というサロンを運営しているが、「女子校に入って俄然生きやすくなった!」と感想をくれるメンバーが多い。
「安心できる場所でコンプレックスや悩みを吐き出して、理解&共感してもらうことで救われた」という彼女らの言葉に「俺もそうだぜ!」とハイタッチする私。ありのままの本音を話して、受け入れてもらうこと。それが何よりメンに効くことを実感した。
夢中になれる趣味や沼を持とう
現在の私はコンプレックスが無くなったというよりも、「考えなくなった」という状態である。
考えなくてもいいぐらいコンプレックスが軽い存在、取るに足らない存在になることが、コンプレックス女子の目指す地点ではないだろうか。
私は女同士でキャッキャウフフするのが趣味&生きがいなので、「今度のオフ会、楽しみやな~」「秋の遠足はどこ行こかな~」とか考えるのに忙しい(ちなみに去年は芋ほりに行き、今年はしいたけ狩りに行く)。
そうやってわくわく考えることがあると、コンプレックスにかまっているヒマがない。
まわりを見ても、夢中になれる趣味や沼があると「あれ、コンプレックスどこ行ったっけ?」みたいな状態になりやすいと思う。
他人のために何かしよう(何かを育ててみよう)
また「他人のために何かする」のも効く。コンプレックス女子は自分に意識が向きすぎて、自意識過剰になるからしんどい。そこで「この人のために何かできないかな?」と他人のことを考えて、他人に意識を向けると楽になる。特に何かの世話をするのはおすすめだ。
30歳を過ぎたシングル女子から「最近、虚しさがヤバいんです」と相談を受けることが多い。これといって理由はないのに「何のために生きてるんだろう」「別にいつ死んでもいいや」的な虚しさを感じる、という彼女たち。
子育て中の女子が「自分だけのために生きられた頃が懐かしい」と遠い目をする一方、子どもがいないと「自分だけのために生きるのが虚しい」と感じて「誰かのために生きたい、何かの世話をしたい」的な欲求をもてあますのかもしれない。
そんな女子は動物や植物を育ててみてはどうか。守るべき存在、自分を必要とする存在がいれば「もう死んじゃおっかなー」から「生きねば!!」に変わると思う。私も猫を置いては死ねない!! という思いが強い。
エッセイ漫画『裸一貫!つづ井さん』の中に、尻を育てるエピソードが出てくる。
つづ井さんは「何かをお世話したい、育てたい……そうや自分の尻や!」とひらめいて、己の尻をケアして慈しみ、尻に話しかける。そうやって愛情を注ぐことで、尻がお世話に応えてくれた実感を得て、自分でも驚くほど勇気づけられた、というエピソードだ。
みなさんも尻や足の裏など、大切に愛でて育ててみてはどうか。私も小陰唇に保湿パックとかしようかしら。
下の世代と付き合ってみる
個人的には、下の世代と付き合うのもおすすめだ。私は大人の女子校をはじめて「彼女らのために未来を良くしたい」という思いが強くなった。なので、整体院で施術を受ける目的を聞かれて「生きるため」と答えた。
生きる目的があると「コンプレックスとか言うてる場合ちゃうわ」という気になってくる。「コンプレックスを克服しなきゃ!」じゃなく「コンプレックスとか、どうでもええわ」と自然に思える状態。それがコンプレックスの克服、ではないだろうか。
コンプレックスを抱えていても、人は幸せになれる
今回「コンプレックス」という単語を何十回も打ちながら、脳内に布袋寅泰と吉川晃司の「ビーマイベイベ」の声が響いていた。意味がわからない人は近くの中年に聞いてほしい。
中年になると、全方位的にゆるくなる。体中のパッキンがゆるんで尿漏れなども心配だが、メンタルもゆるゆるになる。「深刻になっていいことなんか、な~んもないわ」と学習して、いい意味でテキトーになれるのだ。
だから真面目なコンプレックス女子たちも、安心してほしい。それまでは「まあいっか」を口癖にして、なるべくテキトーに生きよう。コンプレックスを抱えていても、人は幸せになれるのだから。
そして私は今度、希望者をつのってコンプレックス告白大会を開催したい。優勝者には尻がツルツルになる石けんをプレゼントしようと思う。
(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)
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※この記事は2019年10月22日に公開されたものです