毒親対策について~毒親と毒親に無理解な人~ #女子を困らせる人
アラサー女子を困らせる人はこの世にたくさんいます。セクハラ、パワハラ、マウンティング、毒親……。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」なんてことわざもありますが、女子のほうが敵多くない? そこでこの連載ではアルテイシアさんに、困らせてくる人々に立ち向かう知恵を授けてもらうことにしました!
#女子を困らせる人、今回のテーマは「毒親」。
毒親とは子どもの人生を支配する有害な親のことである。
毒親本人に対する対抗策だけではなく、毒親にまつわるトーク全般について考えたいと思う。
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毒親のトリセツ
私は毒親育ちの一員として「テロリストとは交渉しない」と提唱してきた。
「親子なんだから、話し合えばわかり合える」と言う人もいるが、話し合ってわかり合える親なら、そもそも悩んでいないのだ。
私も「今度こそわかってくれるかも」と期待しては裏切られ、「なんの成果も得られませんでした……!!」と絶望してきた。
そして「親子だからこそ、わかり合うのは無理」と諦めたことで楽になった。
毒親は子どもを対等な個人ではなく、思い通りに支配できる所有物だと思っている。「育ててやった恩」を押しつけて、「自分は正しい、お前がまちがってる」と譲らないから、まともな話し合いなどできない。
毒親対策としては逃げるのが一番
そんな敵は聖剣や聖水でも倒せないので、「逃げる」という選択肢がベストだ。が、毒親はストーカーばりの粘り腰で追いかけてくる。
「ものすごくウザくて、ありえないほどウザいLINEを送ってくる」は毒親仕草だが、そんなときは「地獄のミサワ返し」がおすすめだ。
「仕事忙しくて寝てないんだよねーLINE見る余裕もなくてさー」「眠眠打破飲んでてさー実質1時間しか眠れなくてつれーわー」と、相手以上にウザく“忙しいアピール”をしよう。
世間体を重視する毒親には「仕事辞めたいけど、無職はやっぱヤバいしさー」と付け加えるといい。
毒親と距離を置けないこともある
毒親とは距離を置くのがベストだが、完全に遮断するのが難しいケースもある。なので「イヤなら会わなきゃいいのに」「なんで縁を切らないの?」とか、まわりが気安く言うのはやめよう。
過干渉・支配系の毒親育ちは「会いたくないけど、会わないともっと大変なことになる」と経験的に知っている。鬼電や鬼LINEで「会わなきゃ死ぬ」と脅迫して、自宅や職場に突撃するなど、過激なテロ行為に及ぶ毒親も多い。
私も母の電話を無視していたら、いきなり会社に突撃されて、マジで殺そうかと思った。尊属殺人犯にならなかった自分を褒めてやりたい。
「テロ抑止のためにたまに親と会うけど、そのときは映画や舞台を観るようにしてる。上演中は話さなくてすむし、その後も作品の感想で話がもつから」と友人は毒親ライフハックを語っていた。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』とか観れば「うちの毒親もサノス(※1)よりはマシやな」と思えるかもしれない。私はガモーラちゃん(※2)を見ていると「お互い苦労しますね……」と涙が出てくる。
(※1)サノス/「宇宙のバランスを保つために、生命の半分を滅亡させる」という中二的な野望を抱く、『アベンジャーズ』最凶最悪のラスボス。顔が金玉に似ている。
(※2)ガモーラ/サノスの養女で、強く美しい緑色の宇宙人。ちなみにガモーラ役の女優ゾーイ・サルダナは『アバター』で青色の宇宙人を演じた。
もしあれがサノスとガモーラちゃんが和解する話だったら「毒親ポルノかよ、ケッ!」と大量のタンを出しただろう。断絶していた親子が許し合って和解する系のお涙頂戴コンテンツを、私は毒親ポルノと呼んでいる。
毒親に無理解な世間やまわりへの対策
どんなにひどい親でも、子どもは「親を捨てた自分はひどい人間じゃないか」と自分を責める。
そのうえ世間やまわりから「子どもを愛さない親はいない」「だから親を嫌うなんておかしい」「許して和解すべきだ」と圧をかけられ、何重にも傷つけられる。
対策は「DV返し」
その手の発言をぶつけられたら「いじめの被害者にそれ言うか?」と返してほしい。
毒親育ちは親からいじめを受けて育ったのだ。暴言・暴力・無視・脅迫・人格否定を受けてきた被害者に「話し合えばわかり合える」「いじめたほうにも事情があった」「過去は水に流して許してやれ」「盆正月ぐらいは会ってやれ」なんて言うほうがおかしいだろう。
とはいえ、そこまで強い返しをできない場面は多い。「盆正月ぐらいは帰ってあげたら? たまには親孝行しないと」と言われたら「いろいろ複雑で……」と明菜返し(小声&伏し目)をしよう。
それでも何か言ってくる相手には「DV返し」がおすすめだ。
鈍感な人間に「親と仲が悪くて」と返しても「反抗期?(笑)」「親だって完璧じゃないんだから」「子どもを産んだら親の苦労がわかるよ」と説教をかまされがちだ。
そこで「親からDVを受けて……」と返すと、さすがに相手は黙る。昨今、痛ましい虐待事件が多いため「DV」というワードは効く。それでも何か言ってくる奴は、そいつが毒毒モンスターなのでダッシュで逃げよう。
私も善意の人から「親御さんは寂しいのよ、やさしくしてあげて」と何度も言われたが、毒親はモラ夫と同じで、やさしくするとつけこんで、どんどん利用&搾取してくる。
毒親の生態を知らない人からの雑音をシャットアウトして、自分の心を守ってほしい。
傷ついた心の回復には、安心できる場所で気持ちを吐き出して、理解・共感してもらうことが有効だ。ネットの毒親コミュニティやACの自助グループなどで、仲間とつながるのも助けになるだろう。
たまにはダメージを与えて溜飲を下げるのもいい
私が一番傷ついたのは、新人時代、会社の飲み会でぽろっと親の話をしたら「自分は親に殴られて育った、その程度で被害者ぶるな」と先輩に言われたことだ。
そいつはデスノートで殺したいリスト筆頭だが、なんと名前を忘れている。あの日見た花の名前どころか、恨んでる奴の氏名もわからないとは、43歳の忘却力に恐れ入る。
あのとき「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ……」と言えればよかったが、22歳の私はショックで何も言い返せなかった。屋上から蹴り落とすのは無理でも、そいつに少しでもダメージを与えたかった。
ダメージを与える方法としては、エシディシ返しもアリだ。「あァァァんまりだァァアァ AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」とギャン泣きすれば、そいつを「ひどい発言で女子を泣かせた悪者」にできる。
相手がまわりに非難される姿を見れば「フー、スッとしたぜ」と気分が晴れるし、相手が謝ってくるかもしれない。そのときは「すみません、心が叫びたがってたんで」とクールに返そう。
「うちも毒親だけど結婚式には呼んだよ、それがケジメってもんでしょ」と説教してくる奴もいる。その手の「自分は我慢したんだから、お前も我慢しろ勢力」は1カ所に集めて空爆したい。
空爆できない場合は、最終兵器の「マジキチ返し」をお見舞いしよう。
「へ~結婚式で金玉相撲はした? えっしてないの? 東京五輪で正式種目なのに?」と意味不明な返しをして、相手を恐怖させよう。
「こいつとかかわるのはヤバい」と敵に撤退させるのが、スマートな戦い方である。
毒親育ちをカムアウトするには
「恋人や友だちに気持ちをわかってほしいけど、毒親カムアウトするのが怖い」「わかってもらえなくて、もっと傷つくことになるんじゃないか」と悩む毒親育ちは多い。
毒親育ちをカムアウトする方法
カムアウトする場合は、メールや手紙で伝えることをおすすめする。
というのも、相手が毒親フレンドなら「わかる!!」と握手して、親の悪口大会をしてスッキリできる。
一方、相手が毒親育ちじゃない場合は「人の親の悪口を言っちゃダメかも」との遠慮から、「お母さんも大変だったんじゃない?」「不器用だけど愛情はあったと思うよ」といった返しをされがちだ。
すると毒親育ちは「やっぱりわかってもらえない」と絶望して、それ以上話せなくなる。
なので、文章で言いたいことを全部伝えきるほうがいい。相手も何度も読み返して理解を深められるし、どんな言葉を返すか推敲できるのもメリットだ。
メールや手紙には、親からされてつらかったことや、今の自分の気持ちを正直に書こう。
そのうえで「私の話を否定せずに、ただ聞いてくれるだけでいい」と要望も書こう。そうすれば、相手は「気のきいた言葉やアドバイスを返さなきゃ」と誤解せずにすむ。
友人や恋人に毒親育ちをカムアウトされたら
「毒親育ちの恋人や友だちの気持ちをわかりたいけど、わからない」と悩む人もいるだろう。
でも、それでいいのだ。そうやって悩んでくれる存在がいることに救われるから。
異性愛者が同性を好きになる感覚を理解する必要はなく「自分が異性を好きになるように同性を好きになる人がいるんだな」と頭で分かっていればもう十分で、心までついていかせる必要はありません。
とあった。
毒親についても同じである。「自分は親を好きだけど、親を嫌いな人もいるんだな」と頭で理解してくれればいい。かつ「親を嫌いたい子どもなんていなくて、そのことで本人が誰よりも傷つき、自分を責めている」ことも理解してほしい。
毒親カムアウトをされた側は「余計なことを言わない」のが一番である。
たとえば、震災や事故で深いトラウマを負った人に「つらい過去は忘れて、前を向こうよ」なんて言わないだろう。言われたほうは「忘れられないから苦しいのに」と傷つき、「いつまでも引きずる自分がダメなんだ」とますます自信を失ってしまう。
毒親も同様、アドバイスや励ましは必要なくて、否定せずにただ話を聞いてほしい。そのうえで「それだけ傷ついたんだから、親を嫌いなのは当然だよ」と肯定してくれれば、心から救われる。
「大変だったね、話してくれてありがとう」
「親となかよくするのが正解じゃないよ」
「誰が何を言おうと、私はあなたの味方だよ」
この3つの言葉で十分なので、ドラクエの復活の呪文のように紙に書いてほしい。
また「ひどい!」「ヤバい!」というシンプルな返しもうれしい。
毒親育ちは「腫れ物扱いせず、普通に接してほしい」と望んでいるから。
すべての親は抑圧になりうる
ミカサ(※3)の言う通り、この世界は残酷だから、親子ガチャがハズレだと人生は超絶ハードモードになる。私もアタリを引いた人からなかよし親子話を聞くと、羨ましさと妬ましさで憤死しそうになった。
(※3)ミカサ/『進撃の巨人』のヒロイン。並外れた戦闘力と身体能力とエレンへの愛情(執着)を持つ。世界は残酷だけど、幸せになってほしい。
が、いろんな家族の話を聞くうちに「そういうのはレア度が高い」と気づいた。毒親じゃなくても「親とは盆正月しか会わないけど、2日もいるとイライラして殺しそうになる」「実家に帰ったあとは体調を崩す」という人は多い。
そして毒親じゃなくても、親を好きでも嫌いでも、すべての親は抑圧になりうる。
父は開業医で母は専業主婦の、裕福ななかよしファミリー育ちの友人がいる。彼女は医学部に進学したものの、全然向いてなくて鬱になり、大学を中退。「子どものころから、自分は医者になりたいんだと思ってた。でも、それは親の望みだったと気づいた」と話していた。
親を好きだからこそ、無意識に期待に応えようとして、壁にぶつかる人もいる。また親を好きだからこそ、親が年老いて介護に直面したときに苦しむ人もいる。
私は毒親コラムに「もらってないものは返せない」とよく書いているが、介護中の友人は「私は母からいっぱいもらったから、自分も返したいと思うんだよね。それで自分を犠牲にして、限界までがんばってしまう」と話していた。
「介護鬱になる気持ちがよーくわかる。なにより、大好きな母が苦しむ姿を見るのが本当につらい」という彼女。
外からは見えづらくても、人それぞれ地獄はある。みんなちがって、みんなつらい。
それを理解していれば、無配慮な言葉で“女子を困らせる人”にならずにすむんじゃないか。また女同士は特に、つらさを語り合って、つらさでつながれると思う。
一方で、絶対わかり合えない人がいるのも事実。「自分のほうがつらい」「被害者ぶるな」とか言う奴には、今後もマジキチ返しをお見舞いする。金玉相撲以外にアナル野球やチン高跳びなど、バリエーションを増やしたいと思う。
(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)
※この記事は2019年08月22日に公開されたものです