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インタビュー デート・カップル

愛する人の命が突然奪われたら。香取慎吾×西田尚美『凪待ち』インタビュー

マイナビウーマン編集部

直球のラブストーリーも、心温まる人間ドラマも、ちょっと怖い任侠映画だって。どんな作品にも、どこかに「愛」が散りばめられている。そんな映画の中の恋や愛にフォーカスするインタビュー連載「恋するシネマ」。今回は、映画『凪待ち』で恋人を失い、自暴自棄になる主人公・郁男役を演じた香取慎吾さん、殺された恋人・亜弓役を演じた西田尚美さんに話を聞きました。

ある日突然、愛する人の命が誰かに奪われたとしたら。

2019年6月28日(金)公開の映画『凪待ち』は、私たちにそんな命題を提示する作品だ。

実際、私にはそんな経験ないし、この映画を観るまでこれほどに絶望的な瞬間を想像したこともなかった。自分とは関係のない話、そう思っていたはずなのに。

恋人を失い、自暴自棄になる主人公・郁男(香取慎吾)の孤独と暴力、再生にぐっと胸をつかまれて、スクリーンを直視できない自分がいた。残された郁男のことがきっと愛しくて仕方なかったであろう、殺された恋人・亜弓(西田尚美)のやさしさも痛かった。

どこまでも凶暴で温かい愛。それを演じた2人は、作品にどんな感情を込めたのだろうか。

「やさしさが痛いこと」をはじめて知った

――毎日ふらふらして、ギャンブル三昧。だから、恋人の亜弓には「一緒になろう」とも切り出せない。郁男はそんな自分のことを「どうしようもないろくでなし」だと語っていますよね。香取さんは彼をどのように理解して、役に入っていったのでしょうか?

香取慎吾さん(以下、香取):演じながら感じていたのは「本当にダメな奴だなぁ」って。でも、役に入り込んだときはじめて思ったのは、郁男が周囲のやさしさを“痛い”と感じていることでした。

僕、ダメな人間にはすごくやさしく接してしまうほうなんだけど、その向き合い方って相手からしたら「こんなに痛いんだ、やさしさが辛いと感じることもあるんだ」っていうのを郁男の役を通じて知りましたね。

香取慎吾

――「やさしさが痛い」という感覚は、作品を観てもすごく伝わってきました。郁男のダメさって、どこか人間臭くて、どんな人にも潜む一面じゃないかと思うんです。香取さんは、ご自身の中に彼と似た部分を感じることはありますか?

香取:もちろんありますよ。下を向いてしまう瞬間もいっぱいある。郁男のような汚い部分、ダメな部分って「慎吾ちゃんにはないんじゃないか」とまわりの方に言われることもありますけど……。実際はありますよね。

僕の半分以上は、郁男みたいな部分でできているんだと思います。

――えっ、そんなふうにはまったく見えないです。多くの人がイメージする香取さんは、天真爛漫で、陽の雰囲気を全身にまとっている存在なんじゃないかと……。

香取:やっぱり人間だから、うまくいかないこととか、辛いこととか、苦しいこととかたくさん感じています。心を閉ざす瞬間も。

でも、基本僕の仕事は「アイドル」なんで。いつも笑顔でいないとダメじゃないですか。「アイドルです!」と言って、郁男みたいな表情をしていたら、そのアイドルはきっと売れないと思うんです(笑)。

だけど、表に出さない部分ではすごく郁男に共感する部分がありますね。

彼を放っておけない。好きだから

西田尚美

――西田さんは、そんな郁男を愛してしまう亜弓という女性をどのように理解されていましたか? スクリーン越しでは、とても器が大きい女性のように見えました。

西田尚美さん(以下、西田):亜弓は彼を放っておけないんだと思います。多分、すごく好きだから。言葉ではきついことを言って、「いい加減にしなよ」って郁男にも自分自身にも感じているはずなんですけどね。

器が大きい、たくましいように見える亜弓も、本当は弱い人間なんです。郁男と一緒にいて、支え合っていないと生きていけない一面があるんです。

「ドラマだけどドラマじゃない」リアルな瞬間

香取慎吾×西田尚美『凪待ち』

――2人の運命を変えてしまう、あの車中での喧嘩シーンを思い返すといかがですか? あのあと、亜弓は殺害されてしまうわけですが、緊迫感溢れる本当に印象的なシーンでした。

香取:うーん……、あのシーンを思い出すとつらいですね。

西田:そうですね……。

香取:あの瞬間に何か、何かひとつがちがっていたら、その先の未来もちがっていたはずなんです。でも、現実ってああいう歯車が狂った瞬間、起きるはずもない次の出来事に繋がっていくんだろうなと思うと、リアルすぎてもう……。すごく気持ち悪い感覚でした。

西田:そう、すごくリアルだった。台本に書いてあるセリフを読んではいるんですけど、あの場での芝居に表れるリアクションが妙に“生っぽく”って。「あ、私このあと殺されちゃうんだ」と思うといたたまれなかったです。きっと郁男は、それを一生引きずって生きていくだろうから。

――もし愛する人が亜弓のように突然いなくなってしまったら、お2人はどうしますか?

香取:……西田さん、どうですか?

西田:全然わかんない、想像もできないことですよね。

――郁男の場合はすべてから「逃げる」という決断をしますよね。

香取:僕自身、あの気持ちは理解できるかな。そこがこの作品の「ドラマなんだけど、ドラマじゃない部分」というか。ドラマだったら1個のセリフや1個の行動でちょっとずつ光が差しそうな見せ方をすると思うんです。だけど、『凪待ち』ではまったくそれが訪れない。正直、現実感がありすぎて怖かったです。でも、だからこそ郁男というフィクションから学べることが多い作品なのかなって。

西田:人間ってそんなに強くはないし、立派じゃない気がするんですよね。それを表向きに見せられる人と、見せられない人がいるということを改めて感じました。

――たしかに郁男の生々しい感情や選択は、直に訴えかけてくるものがありました。お2人にとって、『凪待ち』は観る人に何を感じてほしい作品になりましたか?

香取:もがきながらでも、諦めなければ何かが見えてくるということを感じてもらいたいですね。エンターテイメントとして最後にぱっと光が差すような映画もあると思いますが、そうではないですよね。郁男には諦めかける瞬間が何度もあったんです。だとしても、微かに諦めない、誰かと繋がっている部分が彼の生きる道を作っていったと思うから。それを感じさせながら映画が終わっていく形が、この作品のすごく好きなところです。

西田:たしかに郁男がどこへ向かっていくんだろう、という微妙な揺らぎを持たせて終わっていくのが映画の魅力だと思います。観た人それぞれが、そのとき感じた気持ちを味わってほしいですね。みなさんがこの映画を観て何を思うか、私も気になっています。

映画『凪待ち』

俺はどうしようもないろくでなしです――。

毎日をふらふらと無為に過ごしていた郁男(香取慎吾)は、恋人の亜弓(西田尚美)とその娘の美波(恒松祐里)と共に彼女の故郷、石巻で再出発を決意していた。

少しずつ平穏と希望を取り戻しつつあるかのように見えた石巻での日々もつかの間、事件は突然起こる。娘のことをめぐって亜弓と車で激しく口論になった夜、飛び出していった彼女が何者かに殺害された。

誰が殺したのか? なぜ殺したのか? 次々と襲いかかる絶望から、郁男は次第に自暴自棄になっていき……。

『孤狼の血』白石和彌×『人類資金』香取慎吾が挑む、バイオレンスと絶望、怒りと裏切り、不条理と悲劇が渦巻く、愚か者たちの衝撃ヒューマンサスペンス。

2019年6月28日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

(取材・文:井田愛莉寿、撮影:須田卓馬)

 

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