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家族が嫌い。その心理と対処法をカウンセラーが解説

熊谷佐知恵(心理カウンセラー)

唐沢未夢(ライター)

「家族が嫌いすぎるから一人暮らししたいけど、すぐにはできない……」そんなストレスがたまっていませんか? できることなら解放されたいですよね。今回は、家族が嫌いな心理と対処法について、心理カウンセラーの熊谷佐知恵さんに聞きました。

お母さんが嫌い。お父さんがうるさい。兄弟が要領よく振る舞いすぎてうんざりする……など誰にも言えない家族の悩みを抱えている人はいませんか。

家族について悩んでいるなんて友人や同僚に相談できないし、どうしたらいいのかわからない。そんな「家族が嫌い」と悩んでいる人のために、心理カウンセラーの熊谷佐知恵さんにアドバイスを聞きました。

「家族が嫌い」と感じる心理とは

家族が嫌いという心理はいったいどういうものなのでしょうか。家族が嫌いと感じるのは普通のことなのでしょうか。熊谷さんに教えてもらいました。

「嫌い」は「好き」の反転

「嫌い」は「好き」が反転したもの。「好き」があるからこその「嫌い」なのかもしれませんね。

たとえば、子どもにとってのお母さんの笑顔は安心安全のバロメーターとなります。そのお母さんの笑顔や喜んでくれる顔が見たくて、健気に寄り添ったり、お手伝いしたり、気分を害さないようがんばってきた人がいたとしましょう。

しかしその人は、「お母さんの期待に応えて、なんとか喜んでもらおうと努力したけど長続きしなかった」「助けようとがんばったのに私の思いは報われなかった」と、いつの間にか自分のことや自分の気持ちを後回しにして、相手のために尽くしていたことに気がついていきます。

こうして、次第に家族に対しての無力感、挫折感、無価値感、嫌悪感、恨みつらみ、惨めさなどの感情を覚えるようになっていくのです。

どう扱っていいのかわからない=嫌いという心理

人はどう扱っていいかわからないものに対して、「嫌い」ということにして切り離してしまうことがあります。

家族に尽くすばかりで「愛されなかった私」、「惨めな私」。そんな自分を「ダメな私」と感じるのは辛いので、次第にその辛い感情は遠ざけたくなるのです。切り離しているので、苦手なものとも言えますし、それを乗り越えていくことができずにいることを示しています。

このように「嫌い」という感情は、その人が解決することができないまま保留にされた痛みがあるのです。

また、家族が嫌いという場合、両親との関係のほかにも、兄弟姉妹がいるならば、親の愛や興味・関心をひくための競争や嫉妬が隠れていることもあるかもしれません。

家族が嫌いでもいい?

「家族が嫌い」と感じてしまう人や、家族が嫌いなことに対して罪悪感を抱いている人に向けて、安心できるメッセージをいくつか送ります。

「愛するのをやめると感じる罪悪感」も大事なプロセス

罪悪感は、愛するのをやめたときに感じる感情。もう自分の手に負えないということを認め、今までのやり方(世話焼き)に見切りをつけて相手の期待に応え続けることから手を引くには、それなりの勇気と覚悟が必要だったことでしょう。

癒着や執着を切り離すために、怒りを使う必要があったかもしれません。でも、それは私たちが依存から自立へと成長していくときに必要なプロセスでもあるのです。

「自分のせいで家族が不幸なのだ」は思い込みかも

家族との間での辛い経験に誤解があるとしたら、それは自分のせいで家族が不幸なのだと思い込んでいることなのかもしれません。

あなたが笑顔が見たいと思って試行錯誤を重ねてきたご家族は、もしかしたらまったく別の理由で笑うことができなかったのかもしれません。

自分のせいで家族が不幸、というのは自分ひとりの思い込みである可能性があります。

問題の根底には両親の夫婦関係に問題がある

もしかしたら、あなたが家族を嫌いになりはじめた当時、両親の関係がうまくいっていなかった可能性があります。

夫婦喧嘩を見たときに幼い子どもたちは、多くの場合「お母さんが可哀想」と感じてしまう傾向があるのです。お母さんが可哀想と思った瞬間から、お父さんは家族の悪者になってしまいます。

無意識レベルで夫婦喧嘩に子どもを巻き込んでしまい、敵か味方かに別れてしまうようなこともありますね。家族という最小単位の社会の中で、不可抗力的に「好き」か「嫌い」かの決定付けに巻き込まれてしまうことだってあるのです。

「人を思う優しい気持ち」があるからこそ、心が痛む

あなたが子どもの頃に、両親の間に夫婦の問題としてちゃんと向き合えない、解決できない大人の課題があったのかもしれません。

そして、今のあなたが「家族が嫌い」と感じているような家族に対する心理的な課題が、お父さん、お母さんにもあったとも考えられます。

今、親子関係や家族関係に疲れ果てて心を閉ざしてしまっているのかもしれないですが、あなたの中の「人を思う優しい気持ち」があるからこそ、心が痛むのではないでしょうか。

あなたが誰かを愛することで問題と向き合える

あなた自身が恋に落ち、誰かを愛する気持ちを取り戻していく。

その過程で、かつての両親の課題や事情などの謎は解け、保留にしてきた課題に取り組めるようになっていけるはずですよ。

家族が嫌いになったときの対処法

家族が嫌いになったとき、いったいどう対処したらいいのでしょうか。熊谷さんに詳しく聞きました。

一旦、家族との距離を置いてみる

嫌だと感じるものから距離を置くのは自分を守るための自然な本能です。また、そうすることで見方や感じ方に変化が得られることもあります。

「家族が嫌い」と感じている自分を今は許してあげる

嫌い、嫌だと感じているのにその思いを、それはよくないことと否定してしまったら、あなた自身を見失ってしまうでしょう。

ですから「今は、嫌だって感じてしまう自分がいるんだな」と受け止めてみましょう。どんな感情であれ、それを感じている自分を「そう感じているんだ」と受け止めていくことが、自分への許可になります。

家族以外の人とのつながりを持つ

お友だちでも恋人でも趣味の仲間でも構いません。

家族以外の方とのよりよい人間関係が社会の中に築いていけると、それはあなたにとっての安心できるセーフティーネットになっていきます。

自分の人生を大切に生きる

家族のためにと偏って使っていたエネルギーを、自分が幸せでいることへ使っていけるようにしていきましょう。

歯磨き、入浴、食事など、まずは日常の中でできることからていねいにしていくことがオススメです。

家族の感情を背負わない

世話の焼きすぎは、その人の成長の機会を奪ってしまうこともあります。

ですから、家族の問題は、背負わずに本人にお返ししておきましょう。あなたはあなた自身のすることを大切にしてくださいね。

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