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くうねるところにすむところ研究室 #03  ときを貯める暮らし

暮らしにまつわるあれやこれやの実験を日夜、繰り返す。食べること、つくること、本を読むこと。全部が繋がって、染み込んで、続いていく毎日が健やかで楽しくなっていってくれたらと願っています。よりよく生きていきたいへなちょこ研究員、チェルシー舞花の連載。

こんにちは、チェルシーです。

くうねるところにすむところ研究室3回目です。

モデルの仕事を始めたばかりの15年前くらい前、中学から高校のときの話。
仕事で会う大人の人たちに、「今が一番楽しいときだね〜」と言われるのがずっと不思議だった。きっと、なんてことない会話のつもりだったんだろう。

でも当時の私は、「これから楽しくなくなっていくの?」と、まだ通ったこともない道の行き先を勝手に悪いほうへ決めつけられたような気持ちになっていた。

「そうなんです、楽しいんですー!」って言ったらよかったんだろうか、適当な話は適当に返す、ができないころだった。どんな顔をして聞いていたか忘れてしまったけど、きっと変な顔をしていたと思う。

楽しくないと決めてくれるなと。
楽しんでるって決めるのは、私の仕事だーとジタバタしたりした。

なにげない言葉が、残ってしまったりする。

今後、私はこれを言わないでおこう、忘れないでおこう、と思った。

ときを貯める暮らし

去年だったか、友人たちに立て続けに映画『人生フルーツ』をおすすめされて、見に行ったら、とてもよかった。

人生はだんだん美しくなるんだよって、

この2人から教えてもらった。あのころの怒れる私にも教えてあげたい。

映画に出てくるつばた家は、夫・90歳、妻・87歳。2人で暮らして65年になる。

建築家の夫、修一さんは、当時住宅公団のエースで、阿佐ヶ谷団地や多摩団地など、全国の団地を手がけていた人。彼が入ってきてから、無機的に並んだ団地が有機的なものへと変化したという。

もう建て壊しになってしまった阿佐ヶ谷住宅がまだあったころ、私も中央線に住んでいたのでよく散歩に出かけた。雑木林の中にほどよい距離で、ポツンポツンと建つ一階建ての建物。それぞれの家が暮らしを楽しんでいる、というあたたかい空気が流れていて、大好きだった。

そのあと、つばた家の夫婦は修一さんが手がけた愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一隅に土地を買い、一軒の平屋を建てた。家の周りの雑木林や畑は、夫婦が一から植えたもので、庭の畑で育てられた四季折々の野菜と果物が、妻の英子さんの手でご馳走に変わっていく。

二人の暮らす様子を、そっと寄り添うように記録したこの映画。
映画を撮るために流れたであろう、たくさんの時間も親密な空気となってじわじわと流れでくる。

コツコツと、ゆっくり、ときを貯める暮らし。

この映画を見て、私のいく先は、とっても明るいな、と思ったのです。

つばた家の庭でつくられた野菜や梅干し、とれたての果物でできたジャムは、ふたりの子どもや孫、身近な人たちへ、送られていきます。

おすそわけするって、いいなあ。

おすそわけ

おすそわけといえば、大好きなイラストレーターのユカワアツコさんに去年、わけてもらったふき味噌がとってもおいしかったので、今年は私もやってみようと思い立ちました

ふき味噌は花の部分である、ふきのとうで作るんだそうですよ。

去年、蕗を買ってきてしまい、できなかったんだった。
リベンジです。

八百屋のおじちゃんが、「ふきのとうは小さいほうがおいしいよ〜」と教えてくれたので、小粒のものがたくさん入っているものを買ってみました。

大きいものは苦味がつよくなっていくので、つぼみがぎゅっと閉じていて、小さいものを選ぶのがポイントらしい。

つぼみをひらりと一枚ずつめくってみると、ぽっとくる姿がかわいい。

さて。調べてみると、ふき味噌もつくり方がいろいろ違うみたいです。

今回はレシピを2種類選んでみて、実験開始です。

ふき味噌実験

まずは下処理。

切ったそばから茶色くなるので、外の薄皮一枚と根元の茶色くなったところを、少しだけ包丁でトンと落として、水にいれていきます。

茶色くなるのは、鮮度が落ちて黒くなっているわけではなく、さまざまなポリフェノール群が豊富に含まれているからなんだそう。へー。

たっぷりの沸かしたお湯でさっと湯がいて、(小さかったら2~3分、少し大きめなら5分くらい)

塩を小さじ1入れた、たっぷりのお湯で再度冷水にさらす。(30分~1時間くらい。苦みが苦手な人は、水にさらす時間を長くすると◯)

①和えてつく作る ふき味噌

さっと湯がいて、水にあげたふきのとうをザルにあげ、よく水気を拭き取ったら、松の実、砂糖、味噌、を根気よく刻んで和えるか、ミキサーでガーっと。

で、できあがり。

②炒めてつく作る ふき味噌

細かく刻んだふきのとうを油で炒めてから、味噌、酒、みりん、砂糖を加えてゆっくりと弱火で練り上げていきます。水分が飛んで、好みの感じまで練ったらできあがり。

色が全然ちがう感じになりました。

買ってきたふきのとうは、1パックちょうど100gくらい。

左・ミキサーをかけたほうは松の実などを足したのもあって、190gできました。ふきのとうのほろ苦い味と爽やかさが残る味。

右・油で炒めたほうは、160g。こっくりとしたコクがでて、ちびちびつまむのにもよい感じ。これを水餃子に入れるとおいしい、とユカワさん家で学んだので、それはまた次の機会に。

ちなみにふき味噌、東北の方では「ばっけ味噌」というそうな。

かわいいな、ばっけみそ。

響きがいいね、ばっけみそ。

朝ごはんは、ばっけみそを塗った焼きおにぎりを食べました。

紫蘇で巻くとまたよい感じ◯。お酒のあてに、お茶漬けに。

最後にまたつばたさん夫婦のはなし

映画を見て、二人の共著も色々読んでみました。その中で妻の英子さんが、修一さんから教わった、「自分ひとりでやれることを見つけてコツコツやれば、時間はかかるけれども何か見えてくるから、とにかく自分でやること」。

この言葉を胸に深く刻んだ。小さなできることが少しずつ増えていくのは、とても楽しい。コツコツ、ゆっくり。ときを貯める。

あのころの私に、「今が一番楽しいよ」と言えるように。「これからどんどん楽しくなっていくんだよ!」って言えたら最高。

がんばります。

ではまた。

(チェルシー舞花)

※この記事は2018年03月21日に公開されたものです

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