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好きなことをして何が悪い。モテクリエイターゆうこすの逆転劇

あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部が「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載【Lifeview(ライフビュー)】。

正直に言う。私はモテたい。

毎朝、30分かけて作る出社前の巻き髪と顔。ボーナスをはたいて買った2万円のハイヒール。ぶっちゃけ面倒な周囲への気遣い。その全部が、つまるところモテたいに直結する。

こんなことを何千、何万人が読むであろう記事で叫ぶことになるとは。最高にキュートでポジティブなひとりの女の子に出会わなかったら、本心をさらけ出すことなんてなかったと思う。言いたいことを言うって、こんなにも気持ちがいい。

モテるために生きてる、って変なこと?

「子どものころから『かわいいって思われたい欲』を持っていて、それを隠そうともしていなかったんです。小学校のころから日焼け止めを欠かさず塗って、日傘をさして登校していました。着ているのは、いつもワンピース。まわりからは『ちょっと、何?』って思われていたかもしれないですね。当時から『そういうことをしている自分が好き』っていう、ただのナルシストだったから(笑)」

「菅本裕子」と聞いてピンとこなくても、「ゆうこす」と聞けばしっくりくる人は多いはず。インスタのフォロワーは約32万人、YouTubeのチャンネル登録者数は約30万人。いま、女の子たちから絶大な支持を受ける23歳の職業は、“モテクリエーター”。「モテるために生きてる」「やりたいことをやって生きたい」――彼女がSNSを通じて発信する、とことん自由でポップな言動に世の中が共感し、あこがれる。

「『モテるために生きてる』って言ったら『合コン必勝女子』みたいなイメージを持たれるけど、そうじゃなくて。やっぱり女の子はずっとモテたいし、かわいいって思われたいはずなんです。その気持ちを肯定したい。だから、発信をはじめました」

彼女の言う「モテ」は、何も男性だけに向けられたものじゃない。それはすごくセンセーショナルで、女の子たちのマインドをぐっと掴む。

「学生時代は『かわいいって思われたい』って言うこと自体が変だとか、男性の前ではサバサバした態度を取らないと仲間はずれにされるとか、謎の風潮があるじゃないですか。普通に話せばいいのに、『男子なんて興味ないし』って態度の女子がリーダー格みたいな。ずっと『なんで?』って感じてた。その子だって恋はするだろうし、彼氏がほしいって思ってるはず。『それ、ちがうよね? モテたいって気持ちは変じゃないよね?』っていう共感者を集めたかったんです」

人気者の彼女は、どん底だって知っている。

「はじめてメイクをしたのは、中学一年生だったかな。好きな男の先輩がいて、その人のことを同じように好きな女の子がメイクをがんばっていたから『負けてられん』と思って。当時はベースメイクって考えがなかったから、最初に買ったのはアイシャドウかアイライナーだったはず。とにかく『目をなんとかしなきゃ』っていう考えでしたね」

そう言って懐かしそうに笑うゆうこすのメイクは、完璧だ。ふわふわでまっしろな肌に、くるんとカールしたまつ毛。印象的なピンクのリップに、大人っぽさが漂うブラウンのラメネイル。すべてが真似したくなるほどに、魅力的。独自のメイク方法を紹介する動画は、アップされるたびに何万回と再生される。目の前の彼女は誰がどう見ても人気者。でも、過去にはどん底だって経験した。

モテクリエイターという表現を知って、私はなんて自由で新しい肩書きなんだろうと羨望した。彼女について語られるとき、これと同じくらいよく使われる肩書きがある。それは、元HKT48のメンバーだということ。

とあるスキャンダルが理由でグループを脱退したあと、彼女に向けられたのは非難の目だった。あんな噂、事実とはちがうのに。

昨年彼女が出した著書の中でも、その壮絶な体験が語られている。

「HKT48をやめてから、元気なニートをやっていました。ただ単に仕事がなかったし、何より働けなかったんです。叩かれることに対して過敏になってたから」

グループをやめた後にはじめたアルバイトは、1日だって続かなかった。

「クレープ屋さんでバイトをはじめた1日目に『アイドルだった子だよね』とお客さんから声をかけられて。それだけで『もう嫌だ』ってなっちゃった。別に悪口を言われたわけでもないし、本当に何もされていないんです。でも、それくらい過敏だった」

でも、いちばん辛かったのは大切な人が傷つくこと。

「『好きなことをやって生きなさい』って考えの両親は、福岡の実家に戻ってニートをしている私に何も言いませんでした。でも、親戚とか会社の人からはいろいろ言われてたみたい。弟と妹は大学生と小学生という多感な時期。『お姉ちゃんがアイドルをやめて、今はニート』なんて周囲から言われていることが辛かったですね。他人って直接本人には言わないから。私じゃなくて、まわりにいる人間が後ろ指をさされるのはやっぱり嫌だった」

「ぶっ殺すぞ」と返信が来る。でも、大好きなSNSはやめなかった。

「SNSで『おはよう』って投稿したら『ぶっ殺すぞ』って返信が来ることもありました。ちょっとウケますよね」そう言って、ゆうこすがゲラゲラ笑う。いやいや、全然笑えない。だけど、彼女があまりにも楽しそうにするから、なぜか私も一緒になって笑ってしまった。いまの彼女は、どうしてこんなにも前向きな空気感を持つのか。どん底を抜け出したきっかけを聞けば「言われすぎて、嫌になったから」とポツリ。

「親からもらった3万円で東京へ行き、当時付き合ってた彼氏の家に転がりこみました。でも、3万円だけで生活が成り立つわけもなく。またバイトをはじめたんですが、それも続かなくて。とにかく働くことが面白くなかった。それで『自分の好きなことってなんだろう』と考えはじめるようになったんです。そのときに思い浮かんだのは、SNSでした」

「ぶっ殺すぞ」なんて、心ないコメントをもらうことだってあったのに? よりによって、なぜSNSなのか。嫌な思いをしたって、好き。続けたい。そんな彼女の原動力が知りたくて、理由を聞いた。

「発信して『ぶっ殺す』と言ってくる人が9割。でも、私の投稿に対して『いいね!』を押してくれる人が0.00001%でもいるなら、それでいい。その人のためにがんばろうって思えるんです。叩かれたとしても、それが悪いことだとは思っていません。批判されたり、評価されたり、もともとSNSって人前にさらされる場じゃないですか。それを通して、私は本当の自分を知ることができました。だから、どんなに叩かれてもSNSは続けていたいな。自分のために」

どん底にいた時期だって、別にマイナスなんかじゃない。

「SNS上でネガティブな発言をすることもあったけど、そんな時期があって逆によかった。今になって『あれは失敗だったなあ』ってたくさん気づくことができたから。それにいまは、こうやって過去を語れる。SNSでは過去の失敗とか辛かったことが武器になると思っています。私のストーリーや伸びしろを、ファンは追って見ることができるじゃないですか」

叩かれてもいい。好きなことだったら、それすら肯定できる。じゃあ、どん底にいたあの頃の自分に声をかけるとしたら。尋ねると、彼女らしい回答が返ってきた。

「『どんどん叩かれろ』って言います。叩かれれば叩かれるほど、私はもっと成長していくと思うので。叩かれて、崖から崩れ落ちて骨折でもしてくれって、ね」

好きなことを好きだと言って、やりたいことをやる。彼女のように生きている人は、どれくらいいるだろう。きっと少ないと思う。

世の中にある仕事の大半はやりたくないことでできていて、そんな中で「好きなことをやって生きたい」なんて発信するのはリスクが高い。私だって会社ではイエスマンで、言いたいことのほとんどを飲み込んでいる。でも、彼女と向き合って、少しだけ本心をさらけ出してみようと思った。だから、この記事を書いた。

「自分の好きなことを好きな人や共感者にだけ発信するようになってから、味方が増えました。みんなに好かれるより、自分のことを好きって言ってくれる人に届けばいい。最近は『ゆうこすがアイドルだって知らなかった』っていうコメントがとても多くて。いい意味でも悪い意味でも、どうしても過去の自分の殻からは抜け出せないって思ってた。でも、いまはそこから抜け出せたのかなって」

人生における失敗は、必ずしも悪いことだけじゃない。好きなことがそこにあるなら。

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:洞澤佐智子)

※この記事は2018年01月31日に公開されたものです

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