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大学教授が教える、日本の「英語教育の常識」、実はこれが間違っていた!

ミノシマタカコ

最近では小学生から義務教育の中で学ぶ英語。今の大人でも遅くとも中学の授業から接し始めています。決して短くない時間を費やしてきたはずなのに、なぜ英語が身につかないのでしょうか。立命館大学言語教育情報研究科教授の田浦秀幸先生は、著書『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』(マイナビ新書)の中で、多くの日本人が非科学的かつ非効率的な方法で英語を学んでいると解説しています。では、今までの“常識”はどう間違っていたのでしょうか。

 

1. 英語を学ぶのは、早ければ早いほどよい

幼稚園での英語教育や幼児向けの英語教室など、幼児期から英語を学ばせる教室が多くあります。しかしこの本によれば、幼児期から学べば良いというものではありません。一定年齢を超えるとネイティブ並みの習得は不可能なのではないかと考える「臨界期説」においては、「この年齢まで」という研究結果がでていないのが現状です。ただ発音に関しては、舌など発話に関する脳の回路ができあがる5歳頃までに決まるのではないかと田浦先生も考えています。発音以外の能力、単語や文の構造などについては、年齢は関係ありません。そこで大切なのが、動機付け。早期学習よりも「ほめられた」といううれしさや「将来、海外に行きたい」という夢との関連性があったほうが、モチベーションを保つことができます。結果、早期教育をするよりも英語学習に対して、はるかに影響が大きいのです。

2. 英語は発音が命

英語ができる人=発音がきれいというイメージを多く人が持っています。先に書いたように脳科学的にみると、発音については5歳頃までに決まります。しかし現代では、シンガポールの「シングリッシュ」やフィリピンの「フィリピン英語」などのように「その土地ごとに英語が存在する」という考え方が主流。母国語にない音は、脳に音を聞き取る機能も発音する機能もないので、どの国の人も母国語にある近しい音を当てはめて発音しています。今の時代、発音は通じさえすれば、それほど重要視されないとか。それよりビジネスで英語が必要な場合は特に文法をしっかり学んで、誤解されないように話す方が大切なのです。

3. 聞き流すだけでも英語習得できる

CDなどを聞き流して英語を覚えようという商材をよくみかけます。たくさん英語を聞けば英語脳になる、といった方法も、田浦先生は「普通の日本の環境では難しい」と言います。日本語を覚える過程では、親が幼児言葉で話しかけてくれたり、子どもが何を言わんとしているか考えてくれたりします。聞いて話すという双方のやりとりがあるからこそ、理解が進むのです。日本語で会話をしている横で英語を聞き流すだけでは、インプット量が絶対的に違ってしまいます。また聞いて意味を把握することが正しいリスニング。意味の分からない言葉を聞き流していても効果がありません。聞きながら音から単語を判別し、意味内容を把握できるように練習をすることで、リスニングの意味がでてくるのです。

4. 教わるならネイティブ

教わるならネイティブな人が良いという風潮も、あまり重要ではありません。それよりも大切なのは、「専門知識」や「経験」。普通の日本人が海外に行ったからと言って、良い日本語教師になれるわけではないというのと同じこと。正しい知識や経験といった技術をもとに教えることができなければ、「ネイティブで話す人」でしかないのです。ただ第二言語として英語を習得した経験のある日本人教師なら、勉強の進め方や習得のための知識も持ち合わせています。ただ、教科書にない英語圏独特の立ち振る舞いや言い方を知りたいときは、日本人教師よりネイティブ教師の方が優れていることもあります。

5. 集中的に時間をかけるべき

2週間や1ヶ月と言った短期語学留学もありますが、短期集中で学べば習得できるというものでもありません。スポーツや楽器と同じように、英語を自由に使えるようになりたければ、日々のトレーニングを継続して行うことが重要です。だからこそ、「毎日20分でいいのでどこかで時間を見つけて継続的にやっていくことが必要」と田浦先生はいいます。単語の暗記は別ですが、文法やヒアリング力などは一朝一夕では身につかないもの。自由自在に扱えるようになるためには、わずかな時間でも継続させることが大切です。

まとめ

英語を習得するのに必要なのは、日々の継続。どれだけ早く初めても、正しい方法で継続しなければ身につかないようです。非科学的な迷信に惑わされず、正しい学習法で英語習得を目指しましょう。

(ミノシマタカコ)

参考図書

『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』(田浦秀幸著/マイナビ新書)
第二言語習得研究でわかった、科学的な英語学習で効率的、効果的に学ぶ方法を解説した一冊。

※この記事は2016年03月23日に公開されたものです

ミノシマタカコ


モバイルコンテンツ業界生まれ、ウェブ業界育ち。企画・ディレクション・運営業務等を経験し、現在はフリーライターとして活動中。主な執筆分野は女性、健康、ライフスタイル、旅行など。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2015』『冷え退治バイブル』(共に扶桑社)にライターとして参加。

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