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第30話 自然な気持ち

「お米、もう研げてるよ」
詩織に言われて、手元を見た。
白かったはずの研ぎ水が、いつの間にか透明に澄んでいる。
米を飯ごうに移したところで、困って手が止まった。
「水加減って、どうすればいいんだ?」
すると詩織は飯ごうの中の米に人さし指を差し込んだ。
「お米の量は、この指のここまで。同じ量の水を入れて」
「すごいな。ググらなくてもわかるなんて」
「お米と水は1対1だから」
廉は詩織のことを、サバイバル能力が高いって言っていた
けど、そもそも頭がいいんだな。しかも応用力がある。
廉は、詩織のこういうところも好きになったのかもしれない。

飯ごうを火にかけようと、詩織と僕は川原に移動した。
歩きながら、僕は廉の売り込みをした。
「こういうのって、青春っぽくて楽しいよな。
これも廉が声をかけてくれたおかげだな」
「まぁ、そうかもね」と詩織がうなずく。
「廉はいいヤツだよ。いろんな気遣いをしてくれてる。
反対に、僕はいまひとつ気が利かないっていうか、
不器用っていうか。外見もやることも地味だし。
ゲルニートのMRを必要以上に意識していたのも、
そのコンプレックスの裏返しだったように思うんだ」
なぜか自然と本音が出た。

すると詩織は、きっぱりとした口調で言った。
「地味っていうのは、いいことだと思う。
地味は地道って感じで。私はいいと思うよ」
詩織に肯定され、僕の胸に不思議な気持ちが生まれた。

※この記事は2015年09月18日に公開されたものです

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