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もしも自転車で空を飛ぶなら「バッテリーでは遠くまでは行けない」

空飛ぶ自転車は実用化できるのか?容量が増えるほど重くなるバッテリーでは遠くまでは行けないが、エンジンを使えば高度1,200mまで飛べる自転車が作れそうだ。

【もしもレゴの家を建てるなら「結合力が弱いので風で倒壊する」】

自転車で停電?

チェコで開発された空飛ぶ自転車はヘリコプターに似た構造で、周囲に取り付けた6つのローターで垂直に浮き上がる。燃料の補給や排気ガスの心配がない電動式なので、大型の電動アシスト自転車とも表現できる。

課題は飛行時間で、現時点では5分しか飛べないのであまり実用性がない。バッテリーを大きくすれば飛行時間も伸ばせるのだろうが、その分重くなるので強力なモーターが必要になる。つまりバッテリー容量を増やせば重量も消費電力も増加するので、根本解決が難しい。

バッテリーを外してしまい、長い導線を使って電力を供給するのが良さそうだ。

この自転車は車体が約95kgで、75kgの人を乗せて飛ぶことができるという。合計170kgにも及ぶので、垂直に持ち上げるにはかなり大きなエネルギーが必要なはずだ。あいにくどのくらいの高さまで飛べるかのデータがなかったので、地上5mまで浮上すると仮定すると、その時の位置エネルギーは170kg×5m×9.8=8,330J(ジュール)となる。

自転車は常に地球の重力によって引きつけられているので、常に8,330Jを出し続けていないと墜落してしまうのだ。

ジュールで表してもイメージがわかないので電力に換算すると、W(電力)=J(ジュール)÷秒なので、1秒間浮いているためには8,330W必要なことが分かる。これをもとに計算すると5分間飛び続けるには0.69kWh、1時間なら8.33kWhの電力量が必要となるのだ。

これを一般的な家庭の従量電灯でまかなうとして、東京電力の料金表に当てはめると第1段階料金は1kWhあたり18円89銭なので、空の散歩・5分間の料金は13.1円、1時間飛んでも157円と、意外に安い。

ただし、この電気代は位置エネルギーから割り出しただけなので、実際には空気抵抗やモーターの発熱などのロスが生じる。しかもドライヤー7台分に匹敵する8,330Wも消費するので、90A以上の契約をしないといけないのだが、一般的な家庭では60Aが限界なので隣の家から電気を借るしかない。

現実的には50A契約の家3~4軒分だろうか。そこまでして自転車で飛ぶ必要があるのかと問われると、自信を持ってYesとは答えられない。

寒い飛行機

垂直に浮上するヘリコプター式は、長い滑走路が不要なのがメリットだが、階段よりも綱のぼりの方がキツいのと同じ理屈で、あまりにもエネルギーを使い過ぎる。飛行機タイプは無いものかと探したところ、時を同じくしてイギリスの発明家が開発していた。

自転車の後ろにリアカーを取り付けたような構造で、リアカーに積まれた巨大なファンが推進力となり、パラグライダーのように空を飛ぶ。動力は中型バイク同様の250ccのエンジンで、バイオ燃料で駆動する。重いバッテリーを搭載していないため、最高時速はおよそ40km、約3時間の飛行が可能なのだ。

さらに驚きなのは、高度1,200mまで上昇できる機動性で、登山回数記録システムで有名な金剛山の標高1,125mをも飛び越すことができる。

高度1,200mを飛行するとどうなるのか?海面から高度11,000mまでは、1,000m高くなるごとに気温は6.49℃低くなるので、1,200mなら7.8℃ほど下がる。地上が30℃なら約22℃になる計算だ。

さらには時速40kmで進むので、パイロットは秒速11.1mの向い風を受けることになる。

気温22℃・湿度40%で、秒速11.1mの風が吹き付ける状態を計算すると、パイロットの体感温度は12.4℃となり、夏でもセーターが欲しくなる寒さだ。

自転車でカゼをひいては割に合わない。冬空の散歩はくれぐれもご注意いただきたい。

まとめ

平成23年の自転車事故は14万件を超える。そのうち15%は自転車による加害事故だから、人力とはいえ甘く考えてはいけない。

マナーの悪さが続けば、自転車も免許制になる日が来るかも知れない。空飛ぶ自転車が普及しても、大事故が起きないことを祈ろう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年02月11日に公開されたものです

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