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運命のバッグを探しに。カバンの街・豊岡女子旅(前編)

小浜みゆ

毎日のように手にする仕事用バッグは、自分にとっての“お気に入り”を使いたいもの。私は何年も同じバッグを使っていたのですが、改めて見ると汚れやほつれがあり、かなり年季の入った印象に。日々使っていると、意外と気づかないんですよね……。

「新年度にもなったし、新しいバッグに買い替えたい!」と意気込んで向かったのは、カバンの街である兵庫県の豊岡市。おいしいグルメや温泉を楽しみながら、運命のバッグを探す豊岡女子旅へ行ってきました。

カバンストリートに、カバンの神様。カバンだらけのレトロな街を散策

豊岡市は日本一のカバン生産量を誇る、カバンの一大生産地。江戸時代に「コリヤナギ」という植物を使って織った「柳行李(やなぎこうり)」の名産地として全国に名を広げ、その生産ノウハウを引き継ぎ、昭和30年代からカバン産業が発展したという歴史深い街です。

旅の拠点は「豊岡駅」。東京方面からは大阪(伊丹)経由でコウノトリ但馬空港に向かい、空港からはバスに乗って約20分で到着します。駅から少し歩くと、見えてきたのは「カバンストリート」。カバン店やカバンの修理をしてくれるお店が軒を連ね、中にはカバンの「自動販売機(1個 1,500円)」も! そしてドリンクを売っている隣の自動販売機も、よく見ると「カバン型」。さすが、カバンの街ならではです。

カバンの自動販売機の隣にあるお店が、豊岡鞄の認定セレクトショップ「Toyooka KABAN Artisan Avenue」。ハンドバック、リュック、ショルダーバッグなど豊岡で作られているさまざまなメーカーの豊岡鞄を販売しています。どれを選べば良いか迷っちゃうほど、品数が豊富!

そもそも「豊岡鞄」とは、豊岡産のカバンの中でも兵庫県鞄工業組合が定めた基準を満たす企業によって生産され、かつ厳しい品質審査をクリアしたカバンのみが名乗れる、豊岡自慢のカバン。豊岡鞄には必ずそのタグと保証書が付いていて、何か修理が必要になった場合にも、スムーズにメーカーとやりとりできる仕組みになっています。

カバン探しのほか、Toyooka KABAN Artisan Avenueでおすすめの体験がワークショップ。カードケースやメガネケースなどさまざまな革小物を自分で作ることができ、私はキーホルダーになる「ミニバッグ1点(900円)」作りに挑戦しました。バッグの形やパーツの色を選び、先生に教えてもらいながらボタンや留め具をつけていくと、約10分であっという間に完成! 自分で作ったからこそ、より愛着が湧きました。

・Toyooka KABAN Artisan Avenue
住所:兵庫県豊岡市中央町18-10
HP:https://www.artisan-atelier.net/

散策の休憩は、豊岡駅すぐ近くの純喫茶「茶房やしろ」へ。1967年創業の昭和レトロな雰囲気で、お茶や軽食を楽しめます。今回は喫茶店の定番ドリンク「クリームソーダ(500円)」を注文。茶房やしろのクリームソーダはブルーシロップを使った「青色」が特徴で、透き通ったブルーとバニラアイスの白のグラデーションがとってもきれい……! ゆったりとした時間が流れる店内は、ずっといたくなる居心地の良さでした。

・茶房やしろ
住所:兵庫県豊岡市大手町1-2
Instagram:https://www.instagram.com/tea_coffee.yashiro1967/

「豊岡にはカバンの神様がいる」という情報をゲットして、たどり着いたのは小田井縣神社(おだいあがたじんじゃ)の境内にある「柳の宮神社」。豊岡のカバン産業が発展するルーツとなった杞柳産業(柳行李づくり)の材料である上質なコリヤナギが神社周辺の円山川流域で繁殖しており、コリヤナギへの感謝の想いが集まって誕生した神社です。願いを書く「絵馬」もカバンの形をしていて、カバン職人を目指す人や商売繁盛の願いが記されていました! 柳の宮神社では年に2回、「かばん供養」も実施されています。

・柳の宮神社(小田井縣神社)
住所:兵庫県豊岡市小田井町15-6

柳の宮神社に行く途中に、寄り道したい観光スポットが「豊岡劇場」。1927年に開業し、紆余曲折ありながら2023年春に再スタートを切った映画館です。赤いベロアのシートがとってもレトロで素敵! 上映時間外に、希望者は見学することも可能です。

そもそも豊岡劇場は芝居小屋としてはじまり、昭和40年代に現在のような姿に。館内には芝居小屋時代のポスター、フィルム映画時代のフィルム庫などがあり、97年の歴史の足跡を見ることができました。テーブルに座って写真を撮るだけでもフォトジェニックです。今回は残念ながら時間がありませんでしたが、次回は赤いベロアのシートに座って映画を見たい!

・豊岡劇場
住所:兵庫県豊岡市元町10−18
HP:https://toyogeki.jp/

職人の丁寧な作業がすごい……! 豊岡鞄認定企業の工場を見学

そもそも「カバンはどうやって作られるのか」、まったく知らなかった私。今回、地域ブランド「豊岡鞄」認定企業の一つであるコニー株式会社に協力いただき、一般公開をしていない工場を特別に見学させていただきました! コニーはOEM製造と自社ブランドを手がける、1975年創業のカバンメーカー。カバンはデザイン・裁断・革加工・パーツづくりなど各工程が分業制となっており、今回はコニーの自社ブランド「CREEZAN(クリーザン)」のフラッグシップシリーズ「JETTER(ジェッター)」の縫製作業を見学しました。コニーの職人は20代〜30代女性が多く、この日は全員女性の職人。丁寧にミシンを使って縫う姿が、とてもかっこよかったです。

私が工場を見学した第一印象は「めちゃめちゃきれい」! JETTERは旅をテーマにホワイトレザーのみで展開しているシリーズで、カバン製造時には汚れないように細心の注意を払っているので、整理整頓されたきれいな空間で作業が行われています。さまざまな工程を経て作られたカバンのパーツも一切の傷や汚れのない、美しい「白」。取材時はこのパーツを組み合わせて、リュックの形に仕上げる「まとめ」という縫製作業が行われていました。

実は「白」は製造工程でも汚れやすいため、カバンメーカーとして挑戦的なカラーです。職人は白衣を着用し、手袋で作業。さらに油ハネがないようミシンにカバーをつけるなど、一般的なカバン工場では行わない苦労があります。職人にお話を伺うと、「ほかの色のカバンよりも、約1.5倍は手間がかかっている感覚です。だからこそ、完成した時には達成感がありますね」と、カバンへの想いを語ってくれました。

「カバンの置き方」も、一般的なカバン工場とは違います。通常、縫製後のカバンは積み重ねられることが多いのですが、「JETTER」は傷や汚れを防止するために、重ならないように工夫して置かれているのです。丁寧な職人の作業を目の当たりにして、「こんな風に作られたカバンを、ずっと長く使い続けたい!」と思いました。

・CREEZAN
HP:https://www.creezan.com/

工場見学を通して、豊岡の職人技にすっかり魅了されてしまった私。後編の記事では、ここで作られたCREEZANのカバンの販売直営店がある「城崎温泉」をご紹介します!

(撮影・取材・文:小浜みゆ)

※この記事は2024年05月09日に公開されたものです

小浜みゆ

神奈川県在住の旅ライター。旅が大好きなのでフットワークは軽く、国内・海外の素敵な場所を求めてどこへでも。得意ジャンルはホテル・リゾート・美容。写真にこだわります。

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