恋の傷は乗り越えるんじゃなく、踏ん張って進むしかないと思う
36歳という若さで謎の多い死を遂げた元英国皇太子妃、ダイアナの半生を描く映画『ダイアナ』。日本語吹き替え版でダイアナ役を務めるのは、気品と力強い意思がみなぎる米倉涼子さん。ひとりの女性として恋をし、自立していくダイアナの姿に共感する想いとは? 米倉さんの人生観、恋愛観なども語ってくれました。
【プロフィール】
米倉涼子さん
1975年生まれ。神奈川県出身。1993年にモデルデビュー後、女優としてTVドラマを中心に活躍。ドラマ『黒革の手帖』、『交渉人~THE NEGOTIATOR』、『モンスターペアレント』、『ドクターX~外科医・大門未知子~』、『35歳の高校生』や、映画『交渉人 THE MOVIE タイムリミット高度10000mの頭脳戦』などのほか、2012年にはミュージカル『CHICAGO』の主役としてブロードウェイデビューも果たす。2013年10月17日からは主演ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系/木21:00~)がスタートする。▼米倉涼子 オフィシャルサイトはこちら
Text:Kumi Mizuno
何をしでかすかわからないけど心で生きるダイアナの姿に共感
20歳で王室に入ったものの、夫の不倫や王室との確執、マスコミとの攻防、離婚……。そんな波乱万丈の人生を送りながら、ひとりの女性として純粋な愛を求め、やがて人道支援活動で世界中を飛び回ったダイアナ元皇太子妃。吹き替えでダイアナ役を務める米倉涼子さんは、“心で生きている”というダイアナの姿に共感したそうです。「映画を一緒に観た関係者から『人として似てますよね』って言われたんです。ダイアナは心で生きていて、何をしでかすかわからないけど行動のすべてに理屈が通っていて。それはなんとなく私もわかるので、いろんな人たちに『迷惑かけてごめんなさい』って思いましたね(笑)。ときには自分がよかれと思ってやることが批判されたり恨みに出ることもあるけど、彼女がそれでも突き進んできたのはステキだなと思います」そんな米倉さんにお話を伺った日は、ちょうどアフレコ収録の真っ最中。手ごたえを聞いてみると、「もう七転八倒ですね。ダイアナは主張する方なので、会話が多いんです。自分の体で表現することができないし、自分の呼吸じゃないところも難しい……」と、ちょっぴり苦戦の様子。「でも、ダイアナを演じるナオミ・ワッツさんのお芝居に一日中呼吸を合わせるのはとても勉強になりますね。あえて声を変えようとかは考えずに、ダイアナの人としての意思が伝わればいいなと思います」と、意気込みを語ってくれました。米倉さんの気品と力強い意思のある声は、まさにダイアナの雰囲気にぴったりです!
無茶をしてでも彼に会いたい気持ちはひとりの恋する女性なんだなって思う
米倉さんにとって印象的なシーンは、「パパラッチに見張られる中で、車のトランクに隠れてでも大好きな彼に会いに行くシーン」と言います。この“彼”とは、人命救助にすべてを捧げる心臓外科医、ハスナット・カーン。ダイアナが王室を離れ、孤独と絶望の中で出会い、惹かれていった男性です。「やっぱりダイアナもひとりの恋する女性なんだなって思いましたね。ダイアナが友人から『どうしてハスナットのことが好きなの?』って聞かれたときに、『私が何者か知らないような態度で接してくれるの』っていうセリフがあるんです。そういう気持ちはすごく共感できたし、身近に感じました」肩書きや身分に関係なく、自分を特別扱いしない男性に惹かれたダイアナ。米倉さんも世間の注目を浴びる女優として、30代のひとりの女性として、共感できる部分が多かったようです。ちなみに、「もしも皇太子妃になったら……」という質問には、かぶせぎみで「なりません! 何にもいりません」と、笑いながら即答。「ただ、今の自分でいいかと言ったらそう思うときもそうじゃないときもありますけど、信じて生きてきた道が今の私なので、自分のやれることをやっていきたいですね」と、凛とした表情で語ってくださいました。
恋愛や仕事で落ち込んだときは……いつもまわりに弱みを見せています
ダイアナのように、美しいだけじゃなく“強い女性”というイメージを持たれやすい米倉さんですが、ご自身の想いは「確かに言葉の端々が自分でも厳しいなって感じるときはありますけど、自分が強い人間っていう認識はないですね。ただ、できることはやりたいし、悔しいことは最後まで成し遂げたいっていう気持ちはあります」と、キッパリ。そんな米倉さんが、恋愛や仕事で傷ついてしまったときの乗り越え方とは?「たぶん、乗り越えるというよりも、踏ん張って前に進むしかないんだと思うんです。私の場合は、落ち込んだらまわりに助けてもらうことですね。いつもそこらじゅうの人に弱みを見せていますよ。その場で思ったことや悩みを相談するタイプなので、『この人だけにすべてを見せる!』みたいなのは、私がやったらけっこう面倒くさくなっちゃいそう(笑)」そんな自分に正直でまっすぐな姿こそ、米倉さんが多くの人たちに支持されている理由なのかもしれませんね。では最後に、働く女子に向けた映画の見どころをお願いします!「この映画を観ると、自分はまだまだ自由でやれることがたくさんあるだなって感じると思います。ダイアナってすごいな、自分なんてまだまだちっぽけだなって。でもだからこそ、もっとたくさんのことに手を伸ばして挑戦してみたり、貢献してみたり、味わうことができるんだって、勇気をもらえる作品だと思いますね」
『ダイアナ』(配給:ギャガ)
夫のチャールズ皇太子と別居して3年、ダイアナ(ナオミ・ワッツ)はふたりの王子とも離れ、寂しい暮らしを送っていた。そんなある日、心臓外科医のハスナット・カーン(ナヴィーン・アンドリュース)と出逢い、心から尊敬できる男性に巡り合えたと確信する。長きに渡る夫の不倫や、王室との確執、マスコミとの攻防に傷つき疲れ果て、ついに離婚を決意。自分の人生を歩み始めたダイアナは、地雷廃絶運動などの人道支援活動で世界中を飛び回る。一方、ハスナットとの愛はゴシップ紙に書きたてられ、彼の一族からも反対されてしまう……。36年の短い生涯で、彼女が最期まで求めていたものとは? ひとりの女性として自立していくダイアナの姿を描く感動作。●10月18日(金)より、TOHOシネマズ有楽座ほかにて全国ロードショー▼『ダイアナ』公式サイト