2位は「IT」、1位は? 2024年上半期・社会人が“今”注目するニュースを調査
転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリア運営の、キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス「JobQ Town(ジョブキュータウン)」はこのほど、「注目ニュース実態調査」を実施。社会人ユーザーを対象に“今、注目する時事ニュース”を募集しました。
社会人が注目したニュースとは?
昨今、実質賃金2ヶ月連続のプラスや日経平均株価など経済の話題だけでなく、自民党総裁選や出生率減少など社会的な話題を含め、はたらく人の日常生活に影響するニュースが多く見受けられました。
そこで、社会人が今、関心のある時事ネタやリアルな考えを探るために、「JobQ Town」社会人ユーザーを対象に、“今、注目する時事ニュース”を募集。その結果、「賃上げ・物価高」が最も注目を集めたニュースに選ばれました。
注目度1位は経済分野
過去のJob総研調査で扱った分野をもとに、回答者全体の384人に“今、注目しているニュース分野”を聞くと、74.7%が「経済」と回答。次いで、「IT」が49.0%、「はたらき方」が46.1%と上位3つの回答となりました。
経済分野に関しては、賃上げや物価高、税収に関する内容が集まりました。
年収は増加したものの毎月の生活に余裕なし
回答者全体の384人に今年年収は上がったかを聞くと、「上がった派」が76.6%で過半数を占め、過去調査から約2年で30.3%増加しました。
しかし、現年収で毎月の生活に「余裕がない派」が38.8%と、過去調査から約1年で13.2%増加しました。年収は増加したものの生活に余裕のない人の割合が増加した同調査からも、物価高によって実質賃金がマイナスであることがわかります。
実生活で余裕がないことの裏付けとして、回答者全体の384人に貯金額を聞くと、平均貯金額は6.4万円と、過去調査から約2年で1.8万円減少していることがわかりました。
少子高齢化による人材不足に加え、2023年以降物価高の影響が強まる中、大企業を中心に賃上げ発表が行われています。さらに、今年の春闘は33年ぶりの高水準となり、“名目的”には賃上げが進んでいます。
しかし厚生労働省の毎月勤労統計調査を見ると、直近2ヶ月でプラスには転じているものの、実質賃金は26ヶ月連続のマイナスを記録しており、賃上げが物価高に追いついていない状況は明らかです。原材料価格及びコスト上昇で、消費者の消費意欲も減少し、結果、企業の利益も減少することで大きな賃上げに繋がりにくいという悪循環のインフレが起きています。
賃上げが物価高に追いつかないこの状況は、消費意欲にも関係すると考えられます。人々が“気軽な出費さえできない”状態になると、高額商品の購入だけでなく、日常的な外食やレジャーへの出費など、いわゆる“プチ贅沢”などの消費まで消極的になり、この消費意欲の減少は経済低迷の一端に繋がると考えられます。
政府も賃上げのための9つの方策を立てていますが、賃上げを実感するも、貯金額の減少や生活に余裕がない現場の状況を見ると、今後実生活の厳しさは避けられないものと考えられます。
老後不安は投資や副業でカバーか
回答者全体の384人に老後資金への不安有無を聞くと、「不安がある派」は88.2%と、約8ヶ月前に実施した過去調査から5.9%増加しています。
不安な理由では「年金の受給有無」が79.4%と圧倒的1位となり、次ぐ「物価高騰による生活費の増加」66.1%、「健康保険や医療費の増額」53.7%など、上位3回答に変化はないものの、上位2項目が過去調査よりも10.0%以上増加しています。
老後資金への不安の劇的な増加が見られた同結果は、毎月の生活に余裕がないことの裏付けにもなっていると考えられます。
そこで、投資・資産運用をしている287人にその理由を聞くと、約8ヶ月前の過去調査で約半数が回答していた「老後の備え」が今回の調査では78.4%になるなど、他項目に大きな差をつけ1位となりました。
次ぐ「リスク分散」が44.9%と他項目より大幅に増加する結果となり、3回答目に「将来の目標・ライフイベント」が挙がりました。投資・資産運用の意識は、金融庁から「老後2,000万円」が発表された2019年以降徐々に顕著になり、昨今の物価高や少子高齢化の観点から強まっていると考えられます。
また、回答者全体の384人に副業をしたい・続けたい理由を聞くと、「収入を上げるため」が75.3%と、他項目に大きな差をつけて1位となり、次いで「生活費の補填」が48.0%となりました。
過去2年間にわたり実施した調査では、「スキル向上のため」が上位3位以内にランクインしていたものの、今回の調査では「生活費の補填」と入れ替わり、収入や生活費を軸にした考えの基で副業を行う人が多数の結果となっています。
老後の備えを目的に投資・資産運用をしている人が多いにもかかわらず、老後不安は減るどころか増加しています。老後不安が増加した背景には、物価高の行く末が不透明であること、少子高齢化による社会保障負担の増加、さらには少子化対策とされる被保険者の保険料値上げが関係していると考えられます。
また、目的の2位に挙がった「リスク分散」の“リスク”とは、年金を受給できない可能性や、物価・保険料が今後も上がり続ける可能性を含んでいるのではないかと推察されます。
現在、投資や資産運用は「将来の備え」として行う人が多い傾向にありますが、今後もインフレが続くことを見据えると、この対策の必要性も高まるでしょう。
また、老後の収入確保の意識がさらに強まっていくものの、年金受給への期待が希薄になっていることを踏まえると、老後、いわゆる“定年後”でも働き続ける人が増加する可能性も考えられます。
そして、副業やリスキリングが今よりも主流となり、「複業」として収入源を確保していくかもしれません。反対に、定年後もはたらき続けることを考えた場合、現在〜数年後には副業やリスキリング意識がより強まっていくとも考えられます。
賃上げ求む声は強まる
ここまでの調査結果では「収入アップ」を望む声が多く見られました。
そこで最後に、回答者全体の384人に賃上げとボーナスどちらを望むかを聞くと「賃上げ派」は84.9%と、過去調査実施から約10ヶ月で6.9%増加するなど、賃上げを求める声が強まる結果となりました。物価高・人材確保・賃上げ促進税制を背景に、大企業を中心に賃上げは実施されている状況です。
厚生労働省の毎月勤労統計調査のグラフを見ても、実質賃金は平成18年から徐々に下落傾向にあり、令和5年には名目賃金との差が大きく開いています。最近でも実質賃金は2ヶ月連続で上昇していますが、これには夏季賞与が関係していると考えられ、本質的に実質賃金がプラスに転じているかは定かでない可能性があります。
厚生労働省の分析資料でも、マクロの消費に好影響をもたらすだけでなく、婚姻率や出生率の増加に繋がりうるとの考えから、若年層を中心に賃金を上げていくことを重要視しています。
とはいえ、企業が賃上げをするには、その分利益も上げる必要があり、その手段として、物の単価を上げる、もしくは原材料費やその他コストを下げる必要があります。しかし現在は原材料費の上昇は回避できない状況であるため、結果、単価を上げる企業が増え、全体的に物価が上がる更なるインフレが起きると考えられます。
このように、単に賃上げをすれば個人の不安や不備、及び社会問題が解消されるわけではないことがわかるでしょう。加えて、賃上げにも「ベースアップ」と「定期昇給」の2種類が存在するため、どちらの上昇を推進していくかも重要です。
そのため今後は、税金や社会保障負担の軽減・年金供給への確実性向上など、消費者並びにはたらく世代に対する、賃上げ以外での救済措置の必要性が高まっていくと予想されます。
【回答者自由記述コメント】
「経済分野」において回答者から寄せられたコメントは、以下4つのジャンルに分けられました。
1.賃金と物価について
・物価高がいつまで続くのか、今後どこまで上がってしまうのか、実生活への影響が気になる(30代後半・女性)
・もっと賃上げしてもらわないと生活が追いつかない。これじゃ結婚も出産も考えられない(20代後半・女性)
・物価高で全く賃上げを実感しない。税金も取られるので賃上げが本当にされるのか知りたい(30代前半・男性)
2.経済・景気動向
・金利上昇や為替の変動など、日本経済の変革期に来ていると思うため今後の対策が気になる(30代前半・男性)
・景気がよくなっている報道がされているが全く実感がない(40代前半・男性)
・日本経済の低迷、少子化、増税などによる日本のいくすえが不安で仕方がない(30代後半・女性)
3.税金・社会保障
・少子高齢化によって現役世代への税負担が増えていることで、実質賃金も上がっていないこと(40代前半・男性)
・医療費・介護保険の増加によって社会保障の負担が毎年増えていること(20代前半・女性)
4.投資・資産運用
・NISA活用のメリット・デメリットが気になる(50代前半・女性)
・日経株価の今後の動向やインフレ率が気になる(40代後半・男性)
調査概要
参加対象者:現在職を持つすべての社会人/JobQ Town登録者
募集条件:全国 男女/20代〜50代
募集期間:2024年8月21日〜9月9日
総応募数:384人
(エボル)