【第1話】解決は困難!?　形の違う二組のセックスレス

※このコラムはドラマ「あなたがしてくれなくても」1話までのネタバレを含んでいます。

豪華キャストを引っ提げ始まった、フジテレビ木曜22時放送のドラマ「あなたがしてくれなくても」セックスレスを題材に描いたこのドラマについて、毎週考察コラムを書いていきたいと思います。

セックスレス解消における一番の禁句

みち（奈緒）は建設会社で働くOL。カフェで働く旦那・陽一（永山瑛太）とは結婚5年目で、とても仲がいいが、2年間もの間セックスレス。姑にも子どもを急かされ、下着を買ったり予定を決めて誘ったり、あの手この手を尽くしてみてもはぐらかされ、全くレスが解消する気配はありません。

向こうから誘ってくれた！　と思ったら、約束を反故にされるわ、生理になるわ、とタイミングにまで見放される始末。

ただでさえ言葉に出して誘うのも勇気がいるし、心がすり減らされることなのに、陽一からは「そんなの約束してするもんじゃない」「そんなにしたかった？　みち、性欲強くない？」というパワーワードをぶん殴られもう自尊心は粉々。

「性欲」の一言で片づけ、レスで悩んでいる気持ちを辱める乱暴さは、我々視聴者の心まで打ち砕くほどの威力でした。レスにおける一番の禁句。

「性欲のためにセックスがしたい」わけじゃなく、「心のためにセックスがしたい」という女性の真意が伝わらないもどかしさ。女としての不安を解消し、体ではなく心でつながりたい、という気持ちが空回ってすれ違う様はもどかしさでたまらなくなってしまいました。

形の違う二組のセックスレス

みちの職場の上司、新名（岩田剛典）はイケメン、優秀、部下への気遣いもパーフェクトで、愛妻家。この世の理想の配偶者像を破裂しそうなほど詰め込んだ完璧な男性です。

ひょんなことから、みちは「レスであること」を新名に告白し、新名はみちを妙に気にかけるように。その後「陽一からEDであると告白を受け、うそか本当かは分からないが、それを信じて自分に折り合いをつけることにした」と新名に伝えると、彼は妙に熱が入りだし、新名もセックスレスで悩んでいることが発覚します。

レスと一言に言っても、共に子どもがおらず夫婦二人と共通した家族構成でありながら、原因は全く違う二組のセックスレス。果たしてこれからどのような展開を見せていくのでしょうか。

それぞれのレスの原因

みちのセックスレスは「旦那の体の問題」が原因です。その根底には心の問題があるのでしょうが、「妻だけED」という見出しの雑誌を手に取ろうとしたり、AVをこっそり観ていたりしたことから、EDという告白はきっとうそではないのでしょう。

一方、新名のセックスレスは今のところ妻である楓（田中みな実）の多忙によるすれ違いが原因のようです。楓は雑誌の副編集長を務めており、仕事＞＞＞＞家庭で、常に仕事に追われ、プライベート時間は皆無。新名との時間はほぼ取れていない、という状況です。

後者は現状では（おそらく）気持ちが離れているわけでも、体に問題を抱えているわけでもないので、「時間」さえ捻出できればすれ違いは解消できそうですが、その一瞬すらなかなか取れないほどの多忙の極めっぷりなのでしょう。コミュニケーションを取る時間もないので、楓は新名の悩みにすら気づいていなそうです。

「揚げ」の工程にみる新名のやばさ

にしても新名は最強の旦那すぎますね。岩ちゃんの顔面を持ってして、仕事完璧な出世頭、性格良し、家事も完璧。彼自身も多忙な中、夕飯を作って待っていてくれるどころか、新名自身が花見で帰宅しない日まで、楓の夕食を心配して冷蔵庫には大量の作り置きを常備してくれるという。

「俺夜いないから、今日はすき家行っとけ！」にならないどころか、常備してたのは揚げ餃子ですよ？　餃子作るだけでも相当工程数が多くてだるいのに、さらに揚げてるまめさ、半端なくないですか？　終わった後の油の処理もだるいのに、日常仕事もこなし、あれだけの品数作りながら、さらに揚げる。この「揚げ」の工程に彼の“旦那力の高さ”を一層垣間見ました。

浜崎あゆみも歌っていた新名夫婦の問題

しかも新名家はインテリアコーディネーターがついているかのような素晴らしい内装に、少なく見積もっても90平米はありそうな夜景のきれいな（おそらく）都内タワマン。今の価格なら1億円以上はくだらなそうなお住まいです。

おまけに美男美女のバリキャリ夫婦。この世の全ての幸福を煮詰めて凝縮したかのような絵面で、まさに他人からは幸せにしか見えません。でも、俺らのあゆが昔言ってました。

「恋人たちはとても幸せそうに手をつないで〜、全てのことが上手くいっているかのように見えるよね、真実はふたりしか知らない」

まさに新名夫婦は “appears状態”。新名は自分の気持ちを伝えれば解決するかもしれないけれど、あれだけ気遣いができる人だから、仕事で忙しくしている彼女の時間を奪って、気苦労を増やさないよう配慮しているんでしょうね。アリーナーー!!

でもちょっと新名キモくね？

でもちょっと現実的な話すると、「愛妻家」と呼ばれるパーフェクト上司が、レスを告白した途端、距離詰めて心配してきたら、「え、なにこわ？　きもww」とちょっと警戒してしまいそうです。上司として関与する話でもないですし、愛妻家ゆえに性の話に食いつかれると、ギャップを感じて余計にビビってしまいます。

新名的には「やっと見つけた！　同志よ！」って感じなんでしょうけど。新名もそれだけ追い込まれてるってことですかね。

みちが「AIには卵は焦がせないし、それを笑って食べられるのは人間だけ」と言った時も、新名に少し間があったように見えたのは、笑って一緒に食べる時間もない自分の悩みを思い出して、辛くなってしまったように見えました。

長年一緒にいると忘れがちな配慮

みち本人も気づいてましたが、長年一緒にいるがゆえに心を許しすぎて配慮がなくなってしまうシーンはドキッとした方も多いのではないでしょうか。

陽一にもらったキーケースが壊れた時、陽一はみちが喜んでくれると信じて全く同じものを探してプレゼントしたのですが、みちは「自分の欲しいものもう買っちゃったから、買うなら言ってよ」とありがとうの前に、本音をぶつけてしまったあの場面。

サプライズプレゼントですれ違いが埋まることを期待した陽一と、その行動を迷惑と感じてしまったみちとのすれ違いに胸が苦しくなりました。相手の気持ちを第一に考え、うそでも一旦「ありがとう」をきちんと伝える敬意は、何年経っても忘れてはいけない、と身につまされる思いです。

“妻だけED”を証明しないでくれ！　頼む！

偶然コーヒーをご馳走したことから、陽一のカフェにやってきた美女・結衣花（さとうほなみ）の出現に、この二人がくっついて致すのはマジで最悪 of 最悪だからやめてくれよ！　とヒヤヒヤしつつ、二組のレスの行方がどうなっていくのか、気になってたまりません。

新名のことが気になっているみちの後輩も、これからかき回してくれそうでヒヤヒヤしますね。次回を楽しみに待ちましょう！

（やまとなでし子）