彼氏の遅漏は治せる? 遅漏になる原因とセックスをする時の注意点【医師監修】
セックスの際、彼氏が射精するまで長い。イケないのは私のせい? と悩む人もいるかもしれません。遅漏になる理由とは何なのでしょうか? 男性の性機能障害に詳しい小堀善友先生に伺ってみました。
「彼氏が早い」「すぐにイク」といったセックスの悩みがある一方で、「イクまでの時間が長い」という悩みも聞こえてきます。
「なかなかイカないので騎乗位で頑張っている」という女性も、頑張っても男性がイケないと、自信をなくしてしまうことがあるかもしれません。
なぜ、イクまでの時間が長くなるのか、原因や解決法を専門家に教えていただきました。
射精するまでの時間が長い「遅漏」とは?
教えてくださったのは泌尿器科医で、男性の性機能障害に詳しい小堀善友先生です。小堀先生は、「なかなかイカないなど、射精に通常より時間が掛かる状態は、いわゆる『遅漏』に含まれます」と話します。
「遅漏は、医学的には『射精遅延』といいます。大まかには『勃起はするけれど、射精はできない状態』ですが、専門的にはもう少し細かい基準があり、以下のような状態が6カ月以上続いている場合、その他の状況と合わせて専門医が総合的に判断し、射精遅延と診断することがあります」(小堀先生)
遅漏(射精遅延)の定義
・明らかな射精の遅延がある
・射精できることがほとんどない、またはまったくない
つまり、単純に射精までの時間が長いというだけではなく、射精そのものができない場合も、遅漏に含まれています。
また、マスターベーションでは射精できるのに、女性の腟の中では射精ができない「腟内射精障害」も遅漏のカテゴリに含まれます。
イケないのは私のせい? 男性が遅漏になる3つの原因
彼氏がなかなかイカないと、女性は「私に魅力がないせいかも」と不安になってしまうかもしれませんが、小堀先生いわく、女性のせいで遅漏になることは、そう多くないそうです。
射精の長さに影響を与える代表的な要因を教えていただきました。
(1)生活習慣や加齢
勃起や射精は性的刺激や興奮だけで起こると思われがちですが、健康状態が大きくかかわってきます。
「皆さん、意外に思われることが多いのですが、運動不足や食生活の乱れなど、生活習慣の乱れは性機能に影響を与えます。
アルコール類の飲みすぎや喫煙習慣なども同様です。若い人でも、そうした基本的な生活習慣の乱れが原因で射精に影響が出ているケースは少なくありません。
また加齢も、遅漏を引き起こす要因になります」(小堀先生)
(2)心理的葛藤・ストレス
心理的葛藤とは「セックスを失敗できないという不安」「相手を喜ばせなければという過度のプレッシャー」の他、妊活中であれば「排卵日にセックスをしなければいけない」というプレッシャーも当てはまります。
その他、仕事などによるストレスの蓄積も、射精遅延の原因になります。
「いわゆる『頑張りすぎ』により、自分にプレッシャーをかけてしまい、遅漏になってしまうケースもあります。真面目な人ほど、この傾向が強いかもしれません」(小堀先生)
(3)不適切なマスターベーション
小堀先生が「原因の過半数を占める」と指摘するのが、不適切なマスターベーションによる射精障害です。
「『床オナ』と呼ばれるペニスを床や布団・まくら・雑誌など、手以外のものにこすりつけてするオナニーは刺激が強すぎるため、それに慣れてしまうと腟では刺激を感じにくくなり、射精までに時間が掛かってしまうことがあります。
また、足をピンと伸ばした不自然な姿勢でのオナニーを繰り返していると、それがクセになり、セックスの時の姿勢ではイケなくなることもあります」(小堀先生)
「イケるかどうか自信がない」状況を変える遅漏の改善方法
彼氏が「なかなかイケない」と悩んでいる場合、どのように改善すれば良いのかについて伺ったところ、小堀先生から以下の5つの方法を提案していただきました。
(1)生活習慣を見直す
生活習慣を見直すだけで遅漏が改善することもあるといいます。睡眠時間を確保し、バランスの整った食事をとり、できるだけ規則正しい生活を送ると、体調が整い、性機能の回復にもつながる可能性があります。
(2)ストレスの原因をできるだけなくす
自分なりのストレス解消法を見つける、疲れがたまっている時は思いきって1日休んでリフレッシュしてみるなど、ストレスをなるべくためない工夫をすることも大切です。
(3)頑張りすぎない
「頑張ってイカないと!」「楽しませないと!」と思うほど、射精に時間が掛かってしまうこともあります。
プレッシャーは射精遅延の大敵です。できるだけリラックスした方がセックスを楽しめて、射精もしやすくなるかもしれません。少しなら、お酒の力を借りるのもよいでしょう(ただし、飲みすぎは射精遅延をもたらすこともあるので、要注意)。
(4)適切な刺激で射精できるよう、トレーニングをする
強すぎる刺激や早すぎる動きによるマスターベーションで射精することに慣れてしまい、腟の刺激では射精に時間が掛かっている場合は、適切な刺激で射精ができるようになるために、マスターベーションの方法などを変えることも有効です。
男性がイケない理由と不適切なマスターベーションをしている場合、どういうやり方に変えると良いかを解説します。
(5)医療機関を受診する
小堀先生のクリニックには、射精障害に悩む人が多く訪れているそうです。自分では改善が難しい場合でも、専門家の力を借りることで改善しやすくなることは多々あります。
射精障害はありふれた悩みで、決して恥ずかしいことではありません。通いやすい範囲にあり、性機能障害の治療を行っている泌尿器科を探して、受診してみましょう。
「射精障害を改善する方法はいくつかありますが、男性が自らする方法がメインで、女性ができることはあまり多くありません。ただ、男性が悩んでいることを理解したうえで、例えば生活習慣の見直しを一緒にしてみたり、医療機関を受診する際、一緒に受診したりするなどは、男性の支えにもなり、有効な場合が多いでしょう」(小堀先生)
遅漏傾向のある彼氏とセックスする時の注意点3つ
最後に、彼氏に遅漏の傾向がある場合、女性が気をつけておきたいことについても教えていただきました。
(1)射精をセックスのゴールだと考えない
「セックスの際、『毎回オーガズムに達している』という女性は、あまり多くないでしょう。じつは男性の場合もそれと同じで、毎回必ず射精するわけでもないのです。
『男性は必ずセックスで射精する』という思い込みを変えるだけでも、彼氏がイカないことに対する不安が軽減されるでしょう」(小堀先生)
(2)心の満足を優先する
「妊活中でなければ、男性の射精の有無とセックスの満足度は関係しないはずです。これまで説明したように、射精しないのは女性側に魅力を感じていないからでなく、体調や頑張りすぎなどが影響することが少なくありません。
射精にこだわらず、『お互いに楽しければOK』と割り切ってセックスを楽しんでみると、お互いプレッシャーを感じずにすみます」(小堀先生)
もし妊活中なのであれば、シリンジと呼ばれる注射器の一種を使って腟内に精液を注入するシリンジ法などによって、腟内射精なしで子どもを授かることは可能です。場合によっては、そうした方法を取り入れることを考えても良いでしょう。
(3)射精がなくてもコンドームは忘れずに
射精がないと、妊娠のリスクが下がるように感じてしまい、コンドームを使わずにセックスをすることが増えるかもしれません。
しかし、射精がなくても勃起をしている場合、カウパー腺液が分泌されています。カウパー腺液には精子が含まれていて、妊娠する可能性があります。
またコンドームには避妊だけでなく、性感染症を予防するという役割もあります。望まない妊娠と性感染症予防のためにも、コンドームは忘れずに使いましょう。
ペニスから分泌される「ガマン汁」「カウパー液」についてどうして出るのか、ガマン汁で妊娠はしないの? などを医師が解説。
射精にこだわらず、セックスを楽しんで
射精までに要する時間の長さは、男性の意思にかかわらず、体調やストレスなどの影響によって長くなってしまうことが少なくありません。女性の側は、男性がなかなかイカないことがあっても「そんなこともある」と考えましょう。
また、男性側も射精できないことを焦らずに、射精にこだわらないセックスを楽しんでみてはいかがでしょう。
(監修:小堀善友、取材・文:山本尚恵)
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