「ご厚意」と「ご好意」の違いは? 意味と正しい使い方を紹介
「ご厚意」という言葉の正しい意味と使い方を知っていますか? ビジネスシーンで使う機会の多い言葉だからこそ、しっかりと理解しておきたいものですよね。今回はビジネスコミュニケーション指導に従事する大部美知子さんに、「ご厚意」の正しい使い方を教えてもらいます。
ビジネスシーンにおいては、メールや文書などで相手の気遣いに感謝する機会が多くあります。
その際、よく使われるのが「ご厚意」という表現。ですが、使い方に自信がないまま使っていませんか?
今回は「ご厚意」の意味と正しい使い方を確認してみましょう。
「ご厚意」とは?
『広辞苑 第七版』(岩波書店)によると、「厚意」とは「思いやりのあるこころ。厚情」と解説されています。
「ご厚意」は「厚意」に「ご(御)」という尊敬を表す接頭語を添えた敬語表現です。
つまり、「ご厚意」は「思いやり」や「やさしさ」をより丁寧に表した言葉で、他人が自分に示してくれた親切心や心遣いのことを意味しています。そのため、自分の行動に対しては使用しません。
なお、「ご厚意」は、「お金」を表す場合もあります。直接的な表現を避けて「寄付金」や「援助金」などを「ご厚意」と表現する場合もあることを覚えておきましょう。
「ご厚意」と「ご好意」の違いは?
「厚意」と「好意」は、どちらも「こうい」と読みますが、意味は異なります。
『広辞苑 第七版』(岩波書店)では、「厚意」が「思いやりのあるこころ、厚情」であるのに対して、「好意」は「親切な心。好きな気持。親愛感」と記載されています。
つまり「好意」には、相手を親しく思う気持ちの他に、好きな気持ちという愛情表現のニュアンスが含まれているのです。
「厚意」と「好意」は、それぞれ以下のように使われます。
・厚意:厚意に感謝する/厚意を無下にする
・好意:好意を寄せる/好意的に迎えられる
ビジネスメールや手紙において、「厚意」の意味で「好意」を使用すると、相手に対して恋愛感情があるように誤解されてしまう可能性があるので気をつけましょう。
「ご厚意」の使い方と例文
「ご厚意」は大きく分けて、感謝の気持ちを伝える時と、謝罪や断りを入れる時の2つの場面で使用されます。
例文と合わせて、使い方を確認してみましょう。
「ご厚意に甘えて」
相手の行為に対して「遠慮をせず素直に受け入れる」という意味です。
「ご厚意に甘えて」と付けることで、謙虚な気持ちを伝えることができます。
例文
(上司から食事をごちそうになる時)
・ご厚意に甘えて、ごちそうになります。
「ご厚意にあずかる」
「あずかる」は「受け取る」という意味。
先ほどの「甘える」と同じように、「人からの気遣いや親切を受け取る」という場面で使う表現です。
例文
(顧客からこちらに配慮がある提案を受けた時)
・ご厚意にあずかりまして、深く感謝いたします。
「ご厚意を賜り」
「賜(たまわ)る」とは目上の人からもらう、いただくという意味の謙譲語です。手紙やメールのあいさつにもよく用いられます。
ほとんどは、日頃からお世話になっている取引先や顧客を対象とした表現です。
例文
(お得意様へメールを出す際のあいさつとして)
・平素より格別のご厚意を賜り、心よりお礼申し上げます。
「ご厚意を無駄にする」
「厚意を無駄にする」は、^相手の親切心や気遣いを無駄にしてしまった際に、謝罪の意味で
使われる表現^です。
例文
(顧客からの提案を活かせなかったお詫びを伝える時)
・○○様のご厚意を無駄にしてしまい、お詫びの言葉もございません。
「ご厚意を無下にする」
「無下にする」は、「台無しにする・捨てて顧みないでいる」ことを意味しています。
「親切にしてもらったにも関わらず、台無しにしてしまったことをお詫びします」といった意味合いで使うことができます。
例文
(顧客が双方にメリットがあると期待していたアイデアが社内会議で却下されたことを伝える時)
・この度はご厚意を無下にしてしまい、申し訳ございません。
「せっかくのご厚意ですが」
感謝の気持ちや申し訳ない気持ち伝える時に使用することもできます。
「せっかくのご厚意ですが」と最初に「せっかく」を使うことによって、相手に不快感を与えることなく、やんわりと相手の誘い断ることができます。
例文
(顧客や上司・先輩からの誘いを断る時)
・せっかくのご厚意ですが、今回は辞退させていただきます。
「ご厚意」の類語
「ご厚意」に似た表現として、下記のようなものがあります。
「ご厚情(こうじょう)」
「ご厚情」は、「厚い情け」「心からの深い思いやりの気持ち」を意味する「厚情」に尊敬を表す接頭語「ご」がついた表現です。
つまり、「ご厚情」は、「大事にしてもらう」「親切にしてもらう」「情をかけてもらう」というニュアンスがあり、相手を尊敬する気持ちと深く感謝する気持ちを合わせ持つ表現です。
「ご厚情」の後には「賜る」「あずかる」「いただく」などの言葉が続き、あいさつ状などの改まった場面でもよく使われます。
例文
・○○支店在勤中は公私にわたって格別のご厚情を賜り、誠に感謝申し上げます。
「ご配慮」
「ご配慮」は「ご厚意」と同様、目上の人が自分に気を使ってくれた時の感謝やこちらからのお願いを伝える表現です。
「配」は「くばる」「割り当てる」、「慮」は「あれこれと思い巡らせる」という意味があります。
なお、「配慮」は相手の心遣いへの感謝だけではなく、自分が気を配る場合にも使うことができます。
「気をつけます」を「配慮いたします」と言い換えることで、より謙虚な気持ちが伝わるでしょう。
例文
・ご配慮いただけますようお願い申し上げます。
「ご温情(おんじょう)」
「温情」は、「目上の人から受けた温かみのある優しい心、思いやりのある寛大な心」を意味しています。
「ご温情」は感情についての意味合いが強いので、ビジネスシーンではあまり使用することのない表現ですが、手紙やお礼状などで多く使用されます。
例文
・最後になりますが、これまで頂戴したご温情に心より感謝申し上げます。
「ご恩情(おんじょう)」
「恩情」とは、「目上の人の親切心や慈しむ心」を意味しています。ちなみに「慈しむ」とは「母が子を大事に育てること。また、その愛情の深いさま」を表す言葉です。
手紙やお礼状などで、目下の人が目上の人に対して使用するのが一般的です。
例文
・○○さまには言い表せないほどのご恩情を頂戴し、心から御礼申し上げます。
「ご高配(こうはい)」
「高配」は「目上の人の心配りや配慮のこと」を意味しています。
主にビジネス文書や手紙のあいさつ文として用いることが多く、「ご高配賜りありがとうございます」といった形でよく使われます。
なお、「ご高配」は「他人への心配り」を表しているので、自分のことに対しては使うことができません。
自分が相手へ心配りをしていることを伝えたい場合は、「最善を尽くす」や「鋭意努力する」と言い換えることができます。
例文
・平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
「ご厚意」は感謝やお詫びに使える言葉
今回紹介した「ご厚意」は相手に感謝やお詫びを伝える際に、謙虚でより丁寧な印象を与えることができる言葉です。
「ご厚意」の意味と正しい使い方を理解することで、自信を持って使うことができるのではないでしょうか?
他にも類語の表現があるので、それぞれの場面にあった適切な言葉選びで、あなたの気持ちをきちんと伝えてみましょう。
(大部美知子)
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