インナーチャイルドとは? 意味や克服するための癒し方を解説
「インナーチャイルド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは、子ども時代のつらい記憶が癒されないまま、心の中で思考パターンとして残っていることを指します。今回は心理カウンセラーの高見綾さんに、インナーチャイルドの意味や原因、克服の方法を解説してもらいます。
「インナーチャイルド」とは、大人の心の中にある子ども時代のつらい記憶のことをいいます。
インナーチャイルドとはどういった概念なのか、またその癒し方と注意点について詳しく解説します。
インナーチャイルドとは?
まずは、インナーチャイルドの意味や原因、インナーチャイルドによって表れる行動などについて見ていきましょう。
インナーチャイルドとは「心の中にある子ども時代の記憶」
インナーチャイルドとは、大人になっても持ち続けている、子ども時代の思考パターンやマインドのことをいいます。一般的には、子ども時代のつらい記憶を指しています。
子ども時代に傷ついた経験が癒されないままでいると、負の感情や記憶が大人になっても残り続けます。
それによって、人間関係がうまくいかなかったり、ストレスを抱えたりするなど、ネガティブな影響が出てくるとされています。
インナーチャイルドは正式な心理学用語ではない
インナーチャイルドという概念は、米国のセラピストであるジョン・ブラッドショーが、著書『インナーチャイルド―本当のあなたを取り戻す方法』において、この言葉を使い始めたことが発端とされています。
正式な心理学用語ではないものの、彼の著書が大ヒットしたことで世界中に広まり、心理学の世界でも使われるようになりました。
インナーチャイルドによって表れる変化や行動例
インナーチャイルドが心の中にいると、ちょっとした刺激にも敏感に反応して傷つきやすくなってしまいます。
例えば幼少期、両親ともに仕事で忙しかったため、いつも1人で過ごしていた人がいるとしましょう。
大人になったその人が、パートナーから「ごめん。仕事が終わらないから、今日のデートをリスケしてもらえる?」と言われた場合、「自分は愛されていない」といった気持ちが出てきてしまうことがあります。
インナーチャイルドによって、孤独を感じやすくなったり、自分に自信が持てなくなったりしてしまうケースが多いのです。
「インナーチャイルド」と「アダルドチルドレン」
「アダルトチルドレン」とは、子ども時代に虐待されたりトラブルがある家庭で育ったりしたことで、心にトラウマを抱えている大人のことをいいます。
アダルトチルドレンを癒す方法の1つとして、インナーチャイルドを癒やすことが有効だと考えられています。
インナーチャイルドの癒し方
続いて、インナーチャイルドを癒す方法を解説します。
(1)子ども時代のつらい記憶を見つける
まずは、今も傷ついたまま残っている子どもの頃のつらい記憶を見つけていくことから始めましょう。
日常で感じる「寂しかった」「悲しかった」「イライラした」「どうせ私は嫌われる・選ばれない」「見捨てられて不安だった」などのネガティブな感情について、深堀りしていきます。
(2)子ども時代の記憶と気持ちを言語化する
今感じているネガティブな感情と同じような感覚を、子どもの頃にも抱いたことがなかったか思い出していきます。
パッと思い出せる記憶があれば、その時どんなことがあって、どんな気持ちになったのかを言語化していきましょう。
例えば、「子どもの頃に学校で仲間外れにされてつらかった」という記憶が出てきたとします。その出来事が、今にどんな影響を及ぼしているのかを見ていくのです。
すると、「自分の中に不安があるから、自分は選ばれない、どうせ嫌われると思って、相手を疑ってしまうのか……」と気づくことができるかもしれません。
過去の体験や記憶が今にどんな影響を及ぼしているのか、それが分かるだけでも気持ちがラクになることがあります。
(3)記憶の中の感情を否定せずに受け入れる
子ども時代に傷ついた当時の状況を思い出して、その時抱いた感情をありのままに感じていきます。
悲しい、つらい、悔しい、腹が立つ、恥ずかしい……など、湧き出てきた感情は否定せずに全部感じきっていきましょう。
この時、心の中にいる子どもの自分に「つらかったよね」「もう泣いていいんだよ」「我慢しなくていいよ」と、当時の心情に寄り添うように優しく声を掛けていきます。「私はあなたのことが好きだよ」など、褒めたり励ましたりする言葉も良いでしょう。
そして、最後は当時の自分を心の中で優しく抱きしめて終了します。こうして、愛ある言葉を掛けて受け止めてあげることで、傷ついた感情が癒されていくのです。
以上のプロセスをカウンセリングで行う場合は、カウンセラーがリードしてくれますから自分の気持ちを素直に話してみましょう。
自分で行う場合は、紙に書き出して感情を言語化してみるのがおすすめです。インナーチャイルドに声を掛ける時は、できるだけ声に出して行う方が効果的です。
インナーチャイルドを癒す時の注意点
インナーチャイルドを癒すには、いくつかの注意点もあります。
(1)思い出せない記憶は無理に引き出そうとしない
インナーチャイルドを癒す時、過去のつらかった経験を思い出す必要があります。
しかし、あまりにもショッキングな出来事だった場合は、心を守るために記憶から抜け落ちてしまっていることも。
もしあまり思い出せないことがあれば、無理に思い出そうとしないよう気をつけましょう。
(2)気持ちが十分落ち着いている時に行う
インナーチャイルドを癒すには、自分の気持ちが十分に落ち着いている時、1人の静かな時間を確保して取り組みましょう。
セルフセラピーでも構いませんが、もしカウンセラーなど専門家のサポートが欲しい場合には、自分と相性の良いカウンセラーを選ぶことも大切。あなたを理解して、気持ちに寄り添ってくれるような信頼できる人にお願いしましょう。
インナーチャイルドを癒すメリット
最も大きなメリットは、自分自身を肯定的に受け入れられるようになることです。周りからの好意に気づきやすく人間関係が良くなったり、ちょっとした刺激が加わっても心が傷つきにくくなったりします。
また、自分自身を制限していた「こうしなければならない」という義務感が軽減され、「こうしたい」という素直な気持ちに沿って行動できるようにもなります。
インナーチャイルドを癒すデメリット
インナーチャイルドを癒す過程で過去のつらい記憶と向き合う必要があるため、エネルギーを使います。
怒りや悲しみ、寂しさなどの抑圧していたネガティブな感情が溢れ出てくるため、一時的につらくなるケースもあるので注意してください。
自分1人で向き合う自信がないという人は、カウンセラーにサポートを頼むのも良いでしょう。ただしその場合、それなりに費用がかかる点は留意しましょう。
インナーチャイルドを理解して受け入れよう
子ども時代に何らかの理由で傷つくことは、誰しもあるものです。もし今、あなたが生きづらさを感じているのであれば、インナーチャイルドが関係しているのかもしれません。
過去の傷ついた記憶も、あなた自身の一部。インナーチャイルドを理解して受け入れてあげることができれば、自分をより肯定的に見つめられるでしょう。
そして、周りにも優しい目を向けられるようになり、人間関係に良い影響があるかもしれません。
(高見綾)
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