「疑心暗鬼」の意味や使い方・類語を簡単紹介
「疑心暗鬼」は有名な四字熟語ですが、慣れないと使い方に戸惑いやすい言葉でもあります。今回は、「疑心暗鬼」の正しい意味や使い方などを解説します。
「疑心暗鬼」は「疑う」「暗い」「鬼」などの漢字が使われている四字熟語です。何となく意味はイメージできても、使い方に不安がある人は意外と多いかもしれません。
そこで今回は「疑心暗鬼」の意味や読み方・使い方・類語表現などを見ていきましょう。
「疑心暗鬼」とは
「疑心暗鬼」とは「疑心暗鬼を生ず」という言葉の省略形で、下記のような意味があります。
ぎしんあんきをしょうず【疑心暗鬼を生ず】
うたがう心が強くなると、なんでもないことが恐ろしく感じられたり、うたがわしく思えたりする。(『デジタル大辞泉』小学館)
南宋代の文献である「列子」の注釈書、「列子杲斎口義-説符篇」に掲載されている逸話の注釈が由来といわれています。
「疑心」とは
「疑心暗鬼」は「疑心」と「暗鬼」という2種類の熟語を組み合わせてできた言葉です。「疑心」には下記のような意味があります。
ぎしん【疑心】
1.うたがう心。うたがい。
2. 仏語。根本煩悩の一。仏教の真理に対して、まどいうたがう心。疑(ぎ)。(『デジタル大辞泉』小学館)
仏教が由来の言葉で、人や物ごとに対して疑う気持ちのことを「疑心」と表します。
「暗鬼」とは
「暗鬼」には、下記のような意味があります。
あんき【暗鬼】
《暗がりの中に見える鬼の意から》妄想からひき起こされる恐れや疑い。
(『デジタル大辞泉』小学館)
たとえ暗がりの中に誰もいない状態でも、真っ暗で見えずに不安になってしまった結果、恐れや疑う気持ちが表れることを指して、「暗鬼」と言います。
【例文あり】「疑心暗鬼」の使い方
「疑心暗鬼」がどのような状況で使われる言葉なのか、例文を交えて具体的に見ていきましょう。
「疑心暗鬼になる」
「疑心暗鬼になる」という表現は、不確かなことが原因で不安な気持ちになることです。日常的に使いやすい表現として、覚えておきましょう。
例文
・採用されるかどうかなかなか連絡がこないと、疑心暗鬼になってしまう
・彼氏となかなか連絡が取れないと、浮気しているのではないかと疑心暗鬼になることがある
・親友に裏切られてから、人間関係で疑心暗鬼になりがちだ
「疑心暗鬼に陥る」
「陥る」には「望ましくない状態になる」という意味がある言葉。「疑心暗鬼に陥る」という言い回しは、「必要以上に不安を感じすぎる状態になってしまう」という状況を表します。
例文
・度重なる隠蔽が発覚したことで、社員は疑心暗鬼に陥っている
・選考試験に落ちることが続くと、電話がかかってきてもまた落ちたのではないかと疑心暗鬼に陥ってしまう
・友達に裏切られることが続いて、また裏切られるのではないか疑心暗鬼に陥ってしまった
「疑心暗鬼を生じる」
「生じる」には「新しく何かが起こる」という意味があります。「疑心暗鬼を生じる」という表現は、疑うような状況ではないのに疑う心になってしまうことを表します。
例文
・一転して物ごとが順調に進みすぎると、疑心暗鬼を生じることもある
・株式投資に失敗が続くと、また失敗するのではないか、疑心暗鬼を生じがちだ
・好感触だった取引先に断られることがよくあると、誰かが糸を引いているのではないかと疑心暗鬼を生じてしまう
「疑心暗鬼」の類義語
「疑心暗鬼」には似た意味の言葉がありますので、代表例をご紹介します。
「猜疑心」
「猜疑心」とは、「猜疑」と「心」が組み合わせられた言葉です。「猜疑」には、下記のような意味があります。
さいぎ【猜疑】
人の言動をすなおに受け取らないで、何かたくらんでいるのではないかと疑うこと。(『デジタル大辞泉』小学館)
「心」には「物ごとについて考えて判断する働き」という意味があることから、「猜疑心」は「他人の言動を素直に受け取らず疑う気持ち」のことを指します。
「疑心暗鬼」は何もないところに疑いの気持ちを持ってしまうことですが、猜疑心は裏があるのではと疑うことです。意味は似ていますが、ニュアンスが少し異なります。
「不信感」
「不信感」には下記のような意味があります。
ふしんかん【不信感】
信じていない思い。信用できないという気持ち。(『デジタル大辞泉』小学館)
「不信感」は人や物ごとを信用していない状態です。不信感から疑うようになった場合に先ほど紹介した「猜疑心」が使われます。
「疑心暗鬼」は疑う気持ちが引き起こす感情のこと
「疑心暗鬼」が「疑う心が強くなると、何でもないことでも恐ろしく感じたり、疑ったりしてしまう」という意味があることをご紹介しました。
元々は「疑心暗鬼を生ず」という言葉でしたが、現代では「疑心暗鬼」だけで使われるようになっています。
「周りのことを信じられない状況だった」と表現するより「疑心暗鬼になっていた」と表現する方が使いやすい場合もあるでしょう。
「猜疑心」や「不信感」など似た状況で使われる言葉もありますので、違いを理解してうまく使い分けましょう。
(武田 麻希)
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