スピーチのコツとは? 話し方・構成・緊張しない方法を解説
会社の朝礼や結婚式などでスピーチをすることになった時。緊張してどんな内容を話せば良いか分からなくなりますよね。今回は、コミュニケーションに関する研修を手掛ける櫻井弘さんに、話し方や目線など、スピーチを成功させるコツを解説してもらいました。
1対1の会話なら話せるけれど、大勢を前にしたスピーチあるいは、あらたまった場での話をするような場合は、緊張してしまうという人は少なくありません。
そこで今回は、大勢の前でも堂々と自分の考えを話す「スピーチ成功への鍵!」を伝授したいと思います。
印象に残るスピーチ構成の作り方
スピーチを成功させるためには、準備が何よりも大切。準備に時間を掛けておくと、当日も自信を持ってスピーチができます。
では準備で何をするべきか、それは「スピーチの構成作り」です。相手の印象に残るスピーチにするために、まずは何をどんな順番で話すか、5つのステップで構成を練りましょう。
ステップ1.主題を一文で決める
スピーチの構成を作る時、「おでんの串」をイメージしてみましょう。まず、具を支える「串」が必要ですね。串が曲がっていたり、弱かったりすると具はうまく刺さりません。
ここで言うおでんの串とは、スピーチの「主題」のこと。主題とは、話し手の中心となる考えであり、「何を一番伝えたいのか?」によって決まります。ここがしっかり決まっていると、軸がぶれず、筋が一本通っている理想的なスピーチになります。
まずは、主題を20字以内で具体的にまとめましょう。例えば、「自分から声を掛ければ、人は動く」のように「○○すれば、○○できる」「○○すれば、○○になる」という簡潔な表現で考えると良いでしょう。
ステップ2. 話題を用意する
話題とはつまり、おでんの「具」に当たります。主題を伝えるために必要な具体例・事例・例え話など、思いつく限りの話題をランダムに紙に書いてみましょう。
この時点で話題を1つずつ丁寧に書き起こしていては、時間が掛かってしまいます。そこで、話題にそれぞれ5文字程度のタイトルをつけるのがおすすめです。
このタイトルをいくつか挙げておき、次のステップでスピーチの展開に落とし込みます。まずは深く考えすぎずに、タイトルをいくつか挙げておきましょう。
ステップ3.展開を考える
続いては、おでんの具を整えて、串に刺す順番を選んでいきます。つまり、ステップ2で挙げた話題のうち、どれをどのような順番で話すかを決める段階です。
主題を支えるのに必要な話題は何かを選んでいきましょう。話題を俯瞰で見て、「これを話すと軸がぶれてしまうかもしれない」と感じるものはどんどん省いていき、必要な物だけを残すことが大切です。
例えば1分間のスピーチで話す目安としては、270文字〜300文字が適切です。こうした文字数に収まるかどうかや、聴衆の年齢層・特性に応じて話題をどんな順番で話すべきか、その展開をまとめていきます。
ステップ4.強調点や山場を設定する
「淡々と同じリズムで、解説調で話す」という話し方が日本人の話し方の特徴の一つと言えます。ですが、同じリズムで話されると、その話し方がまるで子守唄のように聞こえ、いつの間にかうなずきではなく、眠って船を漕ぐということになりかねません。
そこで、ステップ3で決めた話題の中で特に面白そうなもの、つまりインパクトのある具をピックアップしましょう。
この話題を対比・反復・拡大して伝えていくと、スピーチ構成の中に強調点や山場が生まれます。相手を飽きさせないで興味深く話を聞いてもらうために、ストーリーテラーになって、相手をどんどん引っ張っていきましょう。
ステップ5.「切り出し」と「結び」を決める
「切り出し」と「結び」の部分には、ユーモアを仕込んでおくと聴衆の気持ちをぐっとつかむことができるでしょう。
小説家の井上ひさしさんの言葉に「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに」というものがあります。
これはつまり、「難しいことをやさしく噛み砕いて、やさしいことを深く掘り下げて、深いことを愉快に提示しよう!」ということ。
難しいことや深いことを伝えようとすると、話がつまらなくなりがち。物事の本質に気づいてもらうには、意外と喜劇のように滑稽に伝える方が有効かもしれません。
聴衆を惹きつけるスピーチのコツ
リンカーンは「ハチの群れと格闘しているかのように興奮した話し手の話を聞きたい」と言っています。聴衆を相手にしたスピーチでは、そのぐらいさまざまなエネルギーと技術を駆使しなければ届かないのです。
そこで次に、聴衆を惹きつけるスピーチのコツを示していきます。
(1)全体を見渡すようにアイコンタクトする
例えばスタンドマイクがあれば、マイクから20センチくらい空けたところが標準の立ち位置でしょう。
ところがそれよりわざとさらに30センチくらい遠くに立ち、全体を見渡すように、アイコンタクトをするのです。こうすると、光の速度で聴衆の心を惹きつけることができます。
この時に、「誰から目を合わせようか?」とあらかじめ目星をつけておくのがコツです。
(2)鼻呼吸で「間」を取る
全体とアイコンタクトをしながら、体中に十分空気を取り入れておきます。間を取ることで、観衆が聞く体制になるのを待ちます。
ちなみに、鼻呼吸はスピーチしている時はいつも意識的に実践しましょう。口を閉じるので、「え~」「あの~」「まぁ」などの無駄な言葉も減ります。
(3)爽やかなあいさつで聞き手を巻き込む
鼻呼吸によって体に十分空気を取り入れたところで、「みなさんこんにちは!」と高めの爽やかな声であいさつします。一瞬にしてスピーカーに注目させられるのです。
コミュニケーションは相互のやり取りです。まずは明るく、相手に届くあいさつをして、相手から明るい返事をもらうように心掛けましょう。
爽やかなあいさつに対しては、スピーチを聞く側もあいさつを返してくれることが多いもの。最初に聞き手を巻き込んで、スピーチに参加してもらう(聞く体制をつくってもらう)ことが大切です。
(4)ゆっくり、はっきり「フルネーム」を名乗る
話し始める最初の部分は、最もスピーカーが緊張する時です。この時に、間違いようのない情報である「フルネーム」をゆっくり、はっきり名乗ることで、時間ができて気持ちが落ち着くのです。
その後落ち着いたところで本論へと展開して行くのです。
(5)メリハリのある話し方を意識する
「。」の多い短い文章に区切って話すことによって、メリハリのある簡潔な話し振りが実現します。
緊張すると、「○○なので~、○○ですが~」など一文を切ることを忘れてしまいがち。これではメリハリがなく、聞いている方が飽きてしまいます。言葉は簡潔に、短く切ることを意識しましょう。
(6)結びには会話を盛り込む
会話を盛り込むことで話に膨らみが出ます。スピーチの結びには、「○○だと思いませんか?」など、観衆に向かって会話を盛り込むことを意識してみてください。
結び方を工夫することで、あなたのスピーチは輝きを増して、より印象深いものとなることでしょう。
スピーチで緊張しないためのポイント
最後に、スピーチで緊張しないためのポイントをご紹介します。ぜひ参考にして、スピーチを成功させてくださいね。
(1)自分が話す姿を客観視する
まずは、鏡の前でスピーチしてみたり、ビデオカメラ・スマホ等で録画したものを見たりして、自分が話す姿をチェックしてみると良いです。
自分がスピーチする姿は見えないので、事前にチェックしておくと違った発見があるかもしれません。また、より客観的に判断するためにも、何人かの仲間からのフィードバックももらうとさらに良いでしょう。
(2)堂々と話す姿を想像して自信を持つ
スピーチする時というのは、「誰も助けてくれない状態」です。頼れるのは自分だけ。したがって、「自分自身を軽視しない!」ことが大切になってきます。
「会場で伸び伸びとスピーチしている自分の姿」を想像してみてください。大勢の人の前で自分の意見を堂々と発表できる訳ですから、これほど気持ち良いことはないのです。
(3)当日は会場の雰囲気に自分を慣らす
当日は可能な限り早めに会場入りして、演題に立ったり、客席に座ってみたりして、さまざまなチェックポイントを確認しましょう。
現場に立って気がつくこともありますし、会場の雰囲気に自分を慣らしておくことも重要なことです。
勇気は言う気! 思いを伝える勇気を持とう
最後に、スピーチ上達のコツを3つお教えします。
1.スピーチの場から逃げずに、場数を踏んで自信をつける
2.スピーチする時は、「打ち込んで話す」
3.わざと「つっかえて話す」くらいの気持ちの余裕を持つ
考えれば考えるほど緊張するかもしれませんが、大勢の前でのスピーチは「勇気」がいるのです。でも、こんな時「勇気は言う気!」をおまじないに、今まで学んだことを実践しましょう。
(櫻井弘)
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