お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

「鑑みる」の意味は? 使い方と例文・類語との違い

Sai

「鑑みる」の読み方や意味を正しく理解できていますか? 「踏まえる」や「考慮する」「顧みる」などとの使い分けにも悩むこの言葉。今回は、ビジネス系ライターのsaiさんが正しい使い方を解説。類語との違いも詳しく説明します。

ミーティングや同僚との会話中などに見聞きすることが多い「鑑みる」という言葉。日常生活ではあまり使わない言葉のため、類語と意味を混同している人や、間違った使い方をしている人は少なくないでしょう。

この記事では、「鑑みる」の意味や誤用を避けるための注意点、類語との違いなどを例文も併せて詳しく解説します。

「鑑みる」の読み方や意味は?

まずは、「鑑みる」の読み方や意味を詳しく確認してみましょう。

「鑑みる」の読み方

「鑑みる」は「かんがみる」と読みます。

元々は「鑑る」と書いて「かがみる」と読んでいましたが、徐々に変化していき、現在では一般的に「かんがみる」と読まれるようになりました。

「鑑みる」の意味

辞書の『広辞苑』では、「鑑みる」は以下のように説明されています。

かんが・みる【鑑みる】

先例に照らして考える。他とくらべあわせて考える。

(『広辞苑 第七版』岩波書店)

語源は「鑑(かがみ)」

「鑑みる」の語源となるのは「鑑(かがみ)」という漢字。「あの人は社会人の鑑だ」などの表現で使われる言葉です。

「鑑」という字には「規範」や「手本」というニュアンスが含まれており、そこから転じた「鑑みる」は、「先例に照らし合わせて考える」という意味の言葉として使われています。

コロナ禍でよく使われる「鑑みる」

・感染拡大の状況に鑑みて、イベントを中止します。

「鑑みる」という言葉が使われたこのような表現を、コロナ禍になってよく耳にする人も多いでしょう。

新型コロナウイルスの感染が広まるにつれ、イベントや会議など、人々が多く集まる状況を避けるための動きがなされるようになりました。従って、上記は「感染拡大の状況を考えて/考慮して」という意味になるでしょう。

もしも自身が主催者で調整が必要になった時は、「鑑みて」という表現を使いながら、中止や延期の旨を伝えてみてください。

英語で表現すると「In view of 〜」

「鑑みる」を英語で表す場合は、「物事を考慮して」とか「〜の点から見て」などに使う「In view of〜」という表現が当てはまります。

「In view of〜」の後に、先例として照らし合わせたい対象を入れて使用するようにしましょう。

例えば、照らし合わせたい対象が「過去の研究(previous work)」の場合、「In view of previous work」とすることで、「過去の研究に鑑みたところ」というニュアンスを表現することができます。

例文

In view of his recent behavior, we should choose another person as a manager.(最近の彼の行動に鑑みると、別の人間をマネージャーとして選ぶべきだ)

In view of an unstable world economy, we cannot afford to become optimistic.(不安定な世界経済に鑑みると、我々も決して楽観視することはできない)

・That project has been postponed in view of profits last year.(前年の収益に鑑みて、あのプロジェクトは延期される運びとなりました)

 

「鑑みる」の使い方【例文付】

日常生活ではあまり使わないものの、ビジネスシーンではよく見聞きする「鑑みる」という言葉。

具体的にどのような場面で使うのかが分からなかったり、誤用して使ったりしている人も多いため、正確な使い方をしっかり確認しておいた方が良いでしょう。

ここからは、「鑑みる」の正しい使い方を、場面別に例文つきで詳しく解説していきます。

会議や商談中などに使う場合

ミーティングや商談などでは先例や規範に照らし合わせて物事を判断することがよくあり、「鑑みる」を使う機会は比較的多いでしょう。ビジネスにおいて先例となる対象は、過去の施策や売上、失敗などが挙げられます。

まずは、会議や商談中などに「鑑みる」を使う場合の例文を紹介します。

例文

・前例に鑑みると、今回のプロジェクトは根本的に見直さなければいけない。

・昨年の売り上げに鑑みて、広告費の予算を大幅に引き上げることにした。

・昨今の経済状況に鑑みると、新しい施策を打ち出した方が良いだろう。

・御社の前年度実績に鑑みて、計画を大幅に修正することにいたしました。

社会情勢や市場動向を話す際に使う場合

「鑑みる」は、社会情勢や市場動向などについて話す場合にもよく使う表現でもあります。このようなテーマを会話する際の例文を確認しておきましょう。

例文

・昨年の動きに鑑みると、今年の株価は恐らく上がるだろう。

・戦後の社会や経済状況に鑑みると、絶えず市場から求められているものがはっきり分かる。

・前回の失敗に鑑みて、かなり余裕を持って試験対策をすることにした。

・他社の福利厚生への取り組みに鑑みると、我が社の制度はやや改善の余地があるように思う。

間違い・誤用に注意! 「鑑みる」を使う時の注意点

「鑑みる」は似た言葉が多く存在し、きちんと意味や使い方を理解していないと、間違いを生んでしまうこともある表現です。

従って、使用する際の注意点をチェックしておきましょう。

「~に鑑みる」と「~を鑑みる」どっちが正しい?

「先例や手本などを参考に考える」という意味の「鑑みる」という言葉。「~に鑑みる」と「~を鑑みる」など、助詞の使い方を誤用していないか迷う人も多いはずです。

参考に『広辞苑』や『大辞林』で「鑑みる」の使い方を探してみると、どちらも「に」の助詞を使った「~に鑑みる」の例が紹介されています。

従って、本来「〜を鑑みる」という表現はあまり好ましくないと解釈できるかもしれません。

「鑑みる」は、対象のもの「に」照らし合わせて考えるという意味なので、「先例に鑑みる」や「現状に鑑みると」のように、「に」をつけて使うのがきれいな表現だと言えるでしょう。

とはいえ、現在では「~を鑑みる」という表現も一般的に使われるようになってきています。中には「~を鑑みる」とした例文を扱う辞書もあるそうです。

助詞が「に」なのか「を」なのかによって、伝わる意味は大きく変わりません。言葉は常に変化していくものとして、こだわる必要がないという意見もあります。

「鑑みる」は目上の人に使ってOK?

会話の相手によって、表現の仕方に迷う瞬間は多々ありますよね。では、「鑑みる」はどうでしょうか。

「鑑みる」はそこに要求や謙譲、尊敬などの他意を強く含まないフラットな言葉と言えるでしょう。従って、相手を選ばず使える表現のはずです。

ただし、使う場面には注意が必要です。苦言を呈する時、「先例を鑑みるにちょっと……」伝えると、相手によっては角が立っているように感じることもあるでしょう。

もちろん、言葉を正しく使って意見をはっきり言うことは大切です。大事なのは伝え方。どの言葉にも言えることですが、相手をバカにしたり、強く否定したりするニュアンスを含ませた話し方にしないことがポイントです。

「鑑みる」の類語や似た表現

「鑑みる」の用法が難しいと感じる理由の1つとして、似たような言葉が多いことが挙げられます。「踏まえる」や「考慮する」などの類語と混同してしまい、正しい使い分けに迷う人は多いでしょう。

ここからは、ビジネスシーンでよく使う「鑑みる」の類語や意味の違いについて紹介します。

「踏まえる」と「鑑みる」との違い

「しっかり足で踏みつける」や「掌握する」など、さまざまな意味を持つ「踏まえる」という言葉。「鑑みる」と似たニュアンスで使われる場合は、判断のよりどころにする」という意味合いを含みます。

何かを根拠にしたり比較対象があったりするため「鑑みる」と非常に似ている言葉ですが、「鑑みる」が現状を考えている状態なのに対し、「踏まえる」は現状を判断している状態となります。

先例に照らし合わせて考えているだけか、それとも先例を基準として判断しているのかという点に着目することで、うまくそれぞれを使い分けることができるでしょう。

「考慮」と「鑑みる」との違い

「考慮」は、「いろいろな要素を含め、よく考えること」という意味です。

「考慮」の「慮」には「あれこれと思いを巡らせる」という意味があり、単に考えているのではなく、「判断や行動をする前によく考えている状態」を表します。

「考える」というニュアンスを含むため「鑑みる」とよく似ていますが、先例や規範など照らし合わせる対象がある「鑑みる」に対して、「考える」は参考の対象とするものを必要としません。

したがって、先例などを対象にした上で考えているのか、それともただよく考えているだけなのかが、使い分けのポイントだといえます。

なお、「考慮する」は「考える」と同じように「〜を考慮する」という使い方をします。「鑑みる」とは前につく格助詞が異なるため、併せて覚えておくと良いでしょう。

「顧みる」と「鑑みる」との違い

「過ぎ去ったことを思い出す」や「回顧する」という意味の「顧みる(かえりみる)」という言葉。「鑑みる」と読み方が似ていることもあり、混同する人が多いでしょう。

ただし、「顧みる」は過去にあった出来事や出会った人などを思い返しているだけで、現状に照らし合わせて考えている訳ではありません。

思い返した過去や事例を対象に新しいことを考えているのか、それともただ過去を振り返っているだけなのかに着目することで、正しく使い分けができるようになるでしょう。

「慮る」と「鑑みる」の違い

「慮る」と書いて、読み方は「おもんばかる」です。

「慮る」とは、「よく考える」「思いをめぐらす」という意味の言葉。「思いはかる」という言い回しから生まれており、「相手の立場を慮る」といった使い方をします。

意味は少し異なる「慮る」と「鑑みる」ですが、“考える”というニュアンスでは共通点があると言えるでしょう。

「配慮」と「鑑みる」の違い

「配慮」は、「心配り」や「心遣い」といった意味。

「鑑みる」の「先例に照らし合わせて考える」という意味と比較すると、あまり共通点がないように感じる言葉ですよね。

しかし、「照らし合わせて考える」中で、誰かに対する心配りや気遣いが生まれることもあるため、言葉の違いに悩む人が出てきたのでしょう。

元々は意味の異なる2つの表現ですが、このように関連性があるとも言えそうです。

「鑑みる」の対義語

「鑑みる」の反対の言葉を使いたい場合、類語や似た表現の動詞を「~しない」といった否定の形にするのがいいでしょう。具体的には

・鑑みない/鑑みずに
・踏まえない
・考慮しない
・顧みない

など。「対義語を探さなくては!」と難しく考えずに使ってみましょう。

類語との違いがカギになる「鑑みる」の使い方

会議や商談時、同僚との会話などでよく使われるものの、正確な読み方や意味を理解していない人が多い「鑑みる」という言葉。

日常生活であまり使わない言葉である上に、「踏まえる」や「顧みる」などの似た言葉も多く、意味や使い方を混同してしまっている人は少なくないでしょう。

しかし、「鑑みる」の意味や誤用を避けるためのポイント、類語との違いなどをよく理解しておけば、ビジネスシーンで正確に使うことはそれほど難しくありません。

場面別の例文も併せて確認しておき、自信を持って「鑑みる」を使えるようにしましょう。

(Sai)

※画像はイメージです

SHARE