「インバウンド」の正しい意味や使い方とは? わかりやすく解説
観光やIT業界で頻繁に使われ、ニュースでも耳にする機会が増えた「インバウンド」という言葉。今回は、「インバウンド」の意味や正しい使い方について、使用シーンに合わせて詳しく解説します。
世間の関心が高まりつつあり、ビジネスシーンで話題に上がることも多い「インバウンド」。
言葉の意味をきちんと理解していないと、職場などで「インバウンド問題についてどう思う?」などと聞かれた時に、困ってしまいますよね。
恥ずかしい思いをしないためにも、「インバウンド」の正しい意味と使い方を把握しておきましょう。
インバウンドの意味
まずは、「インバウンド」がどんな意味を持つ言葉なのかを確認してみましょう。
最もわかりやすい言い換えは「外から中に入ること」
『デジタル大辞林』によると、「インバウンド」の定義は、以下の4つに分かれます。
インバウンド
1 帰りの、本国行きの、の意。⇔アウトバウンド。
2 転じて、電話が外からかかってくること。問い合わせの。⇔アウトバウンド。
3 コンピューターネットワークや通信分野における、外から中へ、の意。⇔アウトバウンド。
4 《「インバウンドツーリズム」の略》外国人の訪日旅行。また、訪日旅行客。⇔アウトバウンド。(『デジタル大辞林』小学館)
「インバウンド」は複数の意味を持つ言葉ではありますが、総じて「外側から内側へ入ってくる」というニュアンスを含んでいます。
特に今日の日本では、「外国からの観光客が日本へやってくること」という意味で使われることが多いでしょう。
対義語は「アウトバウンド」
複数の意味を持つ「インバウンド」ですが、いずれの使い方でも、対義語は「アウトバウンド」です。
外国からの観光客が日本へやってくることを「インバウンド」と呼ぶのに対し、日本人が外国へ旅行することを「アウトバウンド」と呼びます。
外から中に入るのは「インバウンド」、中から外へ出ていくのは「アウトバウンド」とイメージすると、覚えやすいでしょう。
英語だと意味のニュアンスがやや異なるため注意
日本で一般的に使われている横文字の用語は、英語だと異なるニュアンスを持つケースが多く、「インバウンド」もその例外ではありません。
英語の「inbound」は、本国・市内へ向かうといった意味を持つため、英語のネイティブスピーカーに「外国からの観光客」という意味で「インバウンド」を使用すると伝わらない恐れがあります。注意しましょう。
業界別「インバウンド」の正しい使い方
「インバウンド」には広い意味があることから、あらゆる業界で多種多様な使われ方をしています。
ここからは、「インバウンド」が業界によってどんな使い方をするのか、例文を交えて解説していきます。
観光業界における「インバウンド」の使い方
観光業界では、現代の日本で最も馴染み深い「外国からの観光客が日本へやってくること」という意味で「インバウンド」を使います。
外国からの観光客が増えることを「インバウンドが伸びる」と表現するなど、独特の言い回しをするケースも。
例文
・外国を訪れる中国人が増加した2015年、日本へのインバウンドも大きく伸びた。
・インバウンドのお客様に満足いただけるよう、精一杯おもてなしします。
・国外へ移動する精神的ハードルが上がることで、日本のインバウンド市場は徐々に縮小するだろう。
営業における「インバウンド」の使い方
営業分野における「インバウンド」は、「見込み客(外側の人間)が商品に興味を持って購入する(内側に入る)」といったニュアンスで使われるのが一般的です。
自分から飛び込み訪問で商品を売りつける、昔ながらの営業手法は「アウトバウンドセールス」と呼ばれ、現代では効果が減少していると言われています。
これに対し、有益な情報発信などで見込み客から信用を得て、相手側から自主的に商品を買ってもらえるよう誘導する手法を「インバウンドセールス」と呼びます。
例文
・インバウンドセールスのメリットは、顧客に不快感を与えず、商談成功の可能性が高まることだ。
・我が社もそろそろ、インバウンドセールスを導入する時が来たのかもしれない。
マーケティング業界における「インバウンド」の使い方
マーケティング業界には、「インバウンドマーケティング」という用語があります。
「インバウンドマーケティング」とは、ブログ記事や動画のようなコンテンツをWeb上に公開し、それに興味を持った見込み客にSNS等で拡散してもらうという戦略です。
営業と同様、「顧客(外側の人間)の方から商品に興味を持って、自発的に行動してもらうよう促す(内側に入る)」といったニュアンスで、「インバウンド」が使用されています。
例文
・当社でもインバウンドマーケティングを採用した結果、公式Webサイトのアクセス数が昨年の2倍に増えました。
・広告費等のコストが削減できるのは、インバウンドマーケティング最大のメリットと言えるでしょう。
IT業界における「インバウンド」の使い方
IT業界では、「インバウンド」の使い方として代表的なものが2種類あります。
通信関係の業務においては、「外部からデータを受信すること」を指して「インバウンド」と呼ぶのが一般的。
また、Webサイト運営においては、第三者がサイト内の問い合わせフォームに意見を書き込む・アンケート回答するなど、「外部の人間が何かしらのアクションを起こすこと」をまとめて「インバウンド」と呼びます。
例文
・自分のWebサイトのリンクが外部サイトに貼られた場合、そのリンクのことを「インバウンドリンク」と呼ぶ。
・特定のインバウンド通信を許可したいので、設定方法を教えてください。
医療業界における「インバウンド」の使い方
医療業界では、観光業界と同じく「外国から日本に人が来ること」を指して「インバウンド」という言葉を使います。
しかし、外国から日本へ来る目的が「観光」ではなく「医療サービスを受けること」というのが、観光業界が使うニュアンスとの大きな違いです。
外国人が医療サービスを受けるために日本を訪れることを、「医療インバウンド(医療ツーリズム)」と呼びます。
例文
・認知度の向上や受け入れ人数の増加など、日本の医療インバウンドには課題が山積みだ。
・当社では、新たに医療インバウンド事業をスタートしました。
コールセンターにおける「インバウンド」の使い方
コールセンターでは、顧客(外側)からかかってくる電話を受けることを「インバウンド」、コールセンター(内側)から顧客へかける電話を「アウトバウンド」と呼びます。
例文
・コールセンターのインバウンド業務では、お客様の話をしっかりと聞く傾聴力が求められます。
・インバウンドはアウトバウンドと比べて、顧客が明確な目的を持っているため、「顧客と企業の距離が近い」という特徴がある。
「インバウンド」を含む用語集
ここからは、特にニュースなどで取り上げられることが多い「インバウンド」を含む用語を解説していきます。
オリンピックインバウンド
ネットニュースなどでしばしば使われることがある「オリンピックインバウンド」という言葉。
2020年に開催予定であった東京オリンピックにともなって誕生した造語であるため、明確な定義はないものの、「オリンピックを開催することにより、外国人が日本へと訪れること」を指す用語として使われています。
インバウンド対策
「インバウンド対策」とは主に観光業界で使われる用語で、外国から日本へ来た観光客に対して、より快適に過ごしてもらうための施策を指します。
全国の飲食店や宿泊施設が実施している、具体的なインバウンド対策には、以下のようなものがあります。
・電子マネーやクレジットカード決済を導入した、支払いのキャッシュレス化
・外国語が話せるスタッフの配置
・外国にはない日本文化やマナーについての解説
インバウンド需要
「インバウンド需要」とは、日本に訪れる外国人観光客を表す「インバウンド」と「需要」を合体させた造語で、日本を旅行したいと考える外国人観光客からの需要のことを指します。
インバウンド需要が高まれば高まるほど、観光・飲食・レジャーといったさまざまな業界が潤い、日本の経済に大きな影響を与えます。
そのため、インバウンド需要は、日本の各業界から大きな注目を集めているのです。
「インバウンド」を正しく理解して使いこなそう
非常に多様な意味を持ち、業界やシーンによって使い方が少しずつ異なる「インバウンド」という言葉。
それぞれの意味を完璧に覚えて使いこなすのは難しいですが、「インバウンド=外側にあったものが内側へと入ってくること」という本質さえしっかり押さえておけば、問題ありません。
あまり難しく考えず、言葉が持つ本来の意味を理解するよう努めましょう。
(maco)
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