「ごめんください」って方言? 正しい意味と使い方を解説
「ごめんください」は方言なのでは? という説もあり、使う時に戸惑う人もいるかもしれません。今回は、語彙解説が得意なライターの黒木美沙さんに、「ごめんください」の正しい意味や使い方、返事の仕方を解説してもらいます。
他人の家に訪問する時などに「ごめんください」という言葉を使う人も多いのではないでしょうか。普段何気なく使っている言葉ですが、実はいろいろな意味を持っており、「ごめんください」は「すみません」「失礼します」といった言葉との言い換えもできます。
また、地方では「ごめんください」が方言で使われる場合もあります。
今回は「ごめんください」の意味や使い方、方言などをご紹介します。間違えて使わないようにしっかりと意味を理解しましょう。
「ごめんください」の意味
「ごめんください」の意味を知るために、まずは辞書で調べてみましょう。
ごめん下さい
読み方:ごめんください
別表記:ご免下さい、御免下さい、ご免ください主に、よその家などを訪れた際に挨拶文句として用いられる言い方。訪問時の第一声として用いられることが多い。
字義通りには相手の許しを請う表現であり、「ごめん下さいませ」のような言い回しで(軽度の)お詫びを示す意味合いで用いられることもある。
(『実用日本語表現辞典』)
「ごめんください」は、一般的に他人の家や職場を訪れて案内を求める時や、人と別れる際に使用する言葉です。また、丁寧に詫びる場合も「ごめんください」と表現することがあります。
「ごめんください」の「御免(ごめん)」は、「無礼を許してもらう」というニュアンスを含みます。
そこにお願いを表す「下さい」がつけられるようになり、定型文として「ごめんください」が定着しました。一般的には、あいさつやお詫びの際に使われる言葉です。
「ごめんくださいませ」は二重敬語だが使用可能
「ごめんくださいませ」は、丁寧語の「ください」と「ませ」の2つを使用しているため、二重敬語にあたります。
二重敬語とは、1つの言葉に2つ以上の同じ種類の敬語を使用している間違った敬語のこと。
ただし、「ごめんくださいませ」はたくさんの人が使う表現であるため、二重敬語ではあっても許容範囲とされています。
「ごめんください」とお願いするよりも「ごめんくださいませ」の方が柔らかい印象になるため、特に顔の見えない電話などで丁寧さを表す時に使用されます。
「ごめんください」は方言?
「ごめんください」という言葉は、方言なのではという意見もあります。新潟県では、「こんにちは」「こんばんは」といったあいさつの代わりに「ごめんください」が使用されることも。
これを方言と取るか、標準語と捉えるかは諸説ありますが、方言という認識で「ごめんください」を使う人もいると覚えておきましょう。
「ごめんください」の正しい使い方(例文つき)
「ごめんください」は、あいさつや相手に許しをもらう際に使用する言葉です。対面、電話、メールなど使用するシーンはさまざま。
今回は「ごめんください」の正しい使い方を例文と共にご紹介します。
他人の家や会社を訪問・退去する時
他人の家へ訪問・退去する際に「ごめんください」というあいさつを使用します。
「突然の訪問を許してください」という意味もあり、あいさつの常套句として使われます。一方で謝罪の意味も含まれるため、アポなし訪問の時に使う場合もあるでしょう。
例文
・ごめんください。13時に予約しております田中と申します。
・ごめんください! 田中さんはいらっしゃいますか?
・本日は楽しかったです。それではごめんください。
謝罪をしたい時
申し訳なく思っている気持ちを「ごめんください」と表現することもあります。
しかし、実際は謝罪する時の言葉として「ごめんください」ではなく「ごめんなさい」「申し訳ございません」を使う人がほとんどです。
例文
・お気に障ったのであればごめんください。
・遅れてしまいごめんください。
電話を切る時
電話を切る時にも「ごめんください」を使用します。この時は、「時間を取ってごめんなさい」や「電話を切ることを許してください」という意味が込められています。
例文
・ご連絡いただきありがとうございました。それではごめんください。
・では後ほどこちらから折返しご連絡させていただきます。ごめんくださいませ。
「ごめんください」に対しての返事
「ごめんください」に対しての返事は迷いますよね。迷った時は、「申し訳ない」と感じている相手の気持ちを気遣う言葉を伝えましょう。
それぞれのシーンにおいて「ごめんください」に対する返事は変わります。すぐに言葉が出るように語彙力を高めておきましょう。
「ごめんください」の返事の例
ここでは、シーンごとに分けて「ごめんください」に対する返事の例を見ていきましょう。
相手を出迎える場合の返事の例
・どうぞお上がりください。
去り際に相手に掛ける返事の例
・またお越しください。
・お気をつけて。
電話などでの返答の例
・失礼します。
「ごめんください」と同じ表現の言葉
かしこまった印象を受ける「ごめんください」ですが、同じ意味を持つ言葉も存在します。表現が変わるだけで、相手に柔らかさや軽い印象を与えます。
今回は同じ意味を持つ言葉を3つご紹介します。相手の立場などを考えた上で、どの表現をするか考えて使ってください。
お邪魔します
他人の家に訪問する時に「お邪魔します」を使用します。「ごめんください」の時と違って、より身近で親しい相手の家に訪問する際に使用されます。大人だけでなく子どももよく使う表現です。
「お邪魔します」はビジネスシーンでは使用しません。オフィスや事務所を訪れる際は「ごめんください」を使いましょう。
例文
・お邪魔します! 誰かいますかー?
・お邪魔します。今日は呼んでいただきありがとうございます。
すみません
「すみません」は動詞の「済む」丁寧語の「ます」打ち消しの「ぬ」が入った「済みませぬ」が現代語になった言葉です。つまり「すみません」は「済まぬ」の丁寧語です。謝罪だけでなく、何かを依頼する時にも「すみません」は使用されます。
やや軽めの丁寧語であるため、ビジネスシーンには向いていないこともあるので注意しましょう。
例文
・すみません。ここにあったお菓子を全部食べてしまいました。
・すみません、部屋まで運ぶのを手伝ってもらってもいいですか?
失礼します
「失礼します」は、相手の空間や時間を割いて入る際の軽い謝罪の意味があります。入室するだけでなく、退室する際や電話を切る時にも使用されます。
「すみません」とセットで「すみません、失礼します」と使われることもあります。さらに丁寧な敬語になると「失礼いたします」に変わります。
例文
・失礼します。田中さんはいらっしゃいますか?
・お時間を作っていただきありがとうございました。それでは、失礼いたします。
「ごめんください」の英語表現
「ごめんください」は、あいさつや謝罪など複数のシーンで使われています。日本語では「ごめんください」の一言でニュアンスが伝わりますが、英語においては「ごめんください」と同じニュアンスを持つ単語は存在しません。
そのため、シーンに合わせて表現を変える必要があるでしょう。
部屋へ入る時の許可を得る時
「May I come in?」は「中に入っても良いですか?」と入室の際に許可を得る言葉です。
返事は「Yes, you may」という丁寧な言い方と、「Of course, come in」という気軽な言い方があります。他にも「Sure」のみや「Sure, come in」なども使います。
「すみません」と断りを入れる時
「Excuse me」は「私をお許しください」の意味がある言葉です。道を尋ねる際や、何かを手伝ってほしい時、少し席を外す時に使用します。
「ごめんください」という意味はありますが、訪問の際には使用しません。あくまで、相手の注意を引きたい時に使う言葉です。
別れのあいさつとして使う時
電話や訪問時に別れのあいさつとして使う場合は「Have a nice day」という表現が一般的。
曜日や時間帯によっては「良い夜を」の意味で「evening」、「良い週末を」の意味で「weekend」という単語も使用できます。
「ごめんください」に慣れていこう
「ごめんください」という言葉について、理解が深まったのではないでしょうか。「ごめんください」は訪問時だけでなく、電話や手紙にも使用されます。それぞれ意味合いが異なるので、適切なタイミングで正しい使い方をしましょう。
「ごめんください」は使う場面が多いため、慣れない間は違和感があるかもしれません。しかし、徐々に慣れていき上手に使いこなしてください。
(黒木美沙)
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