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「ご手配」と「お手配」の違いとは。意味と正しい使い方を解説

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

ビジネスメールなどで使われる「ご手配」という言葉。「お手配」とどちらを使うべきか悩んでしまいますよね。今回は、コミュニケーションアドバイザーの松岡友子さんに、ご手配の意味や使い方、お手配との違いを解説してもらいます。

ビジネスシーンでは、お互いにさまざまな仕事の段取りをお願いすること、されることが多いですよね。中でも、よく使われる言葉が「手配」です。

ところがこの「手配」という言葉は、敬語の中でも数少ない「ご」と「お」の両方が接頭語となる難しい名詞の1つなのです。

「ご手配」なのか「お手配」なのか、どちらを使うかとても悩ましい問題です。今回は、この「ご手配」と「お手配」について見ていきます。

「ご手配」の意味と使い方

ではまず「手配」の意味を辞書で調べてみましょう。

手配
(1)てくばり(手配り)。準備。
(広辞苑第7版)
(2)事を行うために必要なものや人の準備・連絡・調整などをすること。
(大辞林第4版)

「手配」には、何かを準備したり調整したりする意味があります。

私たちは、他に「配る」ものとして、「気配り」「心配り」などの言葉を知っていますが、その中でも、相手に依頼する時に使えるのは「手配(手配り)」だけです。

つまり、「手配」は、相手に何かをお願いする時にも使える言葉であることが分かります。

「ご手配」と「お手配」の使い分け方

「手配」は、「ご手配」であれば尊敬語と謙譲語、「お手配」であれば美化語となります。

つまり、相手に何かをお願いする場合は「ご手配」、丁寧で柔らかい印象にしたい場合は「お手配」と使い分けることが可能です。

詳しく見ていきましょう。

相手に何かをお願いする場合は「ご手配」を使う

「ご手配」は、尊敬語、謙譲語として使える言葉です。

尊敬語とは「ご住所」や「お名前」など、相手を敬う意味で使用されます。謙譲語とは、目上の人に対して自分がへりくだる表現のこと。「恐縮ですが、○○のご手配をお願いします」というニュアンスを伝えられるため、早急に何かをお願いしたい時にも有効です。

例えば、

・お忙しいところ恐れ入りますが、至急、航空券のご手配をお願いできますでしょうか。

・お手数ですがお客様の方で宿泊先のご手配をお願いいたします。

のように使用できます。

柔らかい印象にしたい時は「お手配」を使う

「お手配は尊敬の意味のない美化語だから、ビジネスでは『ご手配』を使うべき」と解説しているケースがありますが、筆者は少し違うのではないかと思っています。

美化語とは物事を美化して、自分の品位を高める時に使う敬語です。上品な言葉遣いにしたい時や、急ぎの印象を与えたくない時に「お手配」を使うと良いでしょう。

例えば、

・弊社では先行チケットのお手配が可能です。

・来年度の総会準備にあたり、もろもろのお手配につきまして、そろそろご相談申し上げたいのですが。

など、ビジネスシーンでも美化語として使用が可能です。

使い分けに迷ったら「ご手配」がおすすめ

「ご手配」と「お手配」には厳密に見ると意味の違いがあることが分かりました。ですが、「ご」「お」の接頭語のつけ方には明確な決まりがなく、例外が多く存在します。

そのため、使い分けに迷った時は、目上の人に対して失礼になることのない「ご手配」を使うと良いでしょう。

「ご手配」の使い方(例文付き)

それでは、「ご手配」という言葉の使い方について、例文と共に詳しく解説していきます。

目上の方にお願いする時の例文

一般的に「ご手配」という言葉は、目上の方や社外の人に向けて何かお願いをするシーンで使われることが多いでしょう。

例文

・大変お手数ですが、当日の会場のご手配をお願いいたします。

・何卒運営のご手配を賜りますようお願い申し上げます。

手配していただいたことへのお礼の例文

続いて、目上の人や社外の人などに何かを準備してもらったことに対してお礼をする時の使い方です。

例文

・この度は素晴らしい会場をご手配いただき、誠にありがとうございました。

・私にまで席をご手配くださいましたこと、お心遣いに胸がいっぱいでございます。

自分が手配することを伝える時の例文

自分が何かを準備しておくこと、調整することを相手に伝えたい時は、以下のように使うことができます。

例文

・当日の会場は私どもでご手配いたします。

・先般ご依頼いただきました札幌までの航空券は、すでにご手配済みでございますので、どうぞご安心くださいませ。

「ご手配」の言い換え表現

「ご手配」の類語として「ご準備」「ご用意」「お膳立て」などがあります。この4つの言葉はそれぞれ少しずつ意味が異なります。

お膳立て

「お膳立て」の「膳」とは1人分の食事を載せた台のこと。つまり、食事ができるように料理や食器がすでに並んでいて、支度が整っているという意味です。

「お膳立て」を使った例文

・A氏のお膳立て通りにセミナーが進んだ。

ご用意

「ご用意」とは、ある物事を行うために必要な「物」などを取り揃えることです。つまり、「準備」する範囲が狭いのが特徴です。

「ご用意」を使った例文

・明日のセミナーには、筆記用具をご用意ください。

ご準備

物事がうまく運ぶように、前もって「環境や態勢」までを整えることです。「準備」の範囲は、「用意」より少し広くなります。

「ご準備」を使った例文

・明日のセミナーでの発表に向けて、資料や事前練習などご準備いただいていることと存じます

これらの言い換え表現に対して、「ご手配」はさらに広範囲の連絡や調整を含みます。

相互に代用可能な場面もありますが、細かいニュアンスの違いを知っておくと良いでしょう。

自信を持って「手配」を使いこなして

「手配」は電話やビジネスメールでもよく使う言葉であるにも関わらず、尊敬語・謙譲語・美化語の要素があり、さらに「ご」「お」の両方を接頭語にすることができる、扱いの難しい言葉です。

「ご」「お」の接頭語のつけ方には明確な決まりがなく、例外が多く存在します。だからこそ、実際に使う場面では戸惑うことが多く、その結果失礼な言葉遣いになっていないかと不安になるかもしれません。

使い方を自分の中で整理し、ぜひ納得と自信をもって使いこなしてほしいと思います。

(松岡友子)

※画像はイメージです

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