お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

「おっしゃる」の意味と使い方。「仰る」との違いと注意点

ビジネスシーンなどで頻繁に使用する「おっしゃる」という敬語。正しい意味や使い方は理解できていますか? 今回は、語彙解説を得意とするライターの笹美さんに、「おっしゃる」の使い方や注意点を解説してもらいます。

「言う」の尊敬語である「おっしゃる」という言葉。「おっしゃる通り」などのフレーズはビジネスシーンで頻繁に見聞きする表現ですが、正しく使用できているでしょうか?

今回は「おっしゃる」の意味や使い方、漢字とひらがなの使い分けについて解説していきます。

「おっしゃる」の意味

まずは、「おっしゃる」の意味を辞書で見ていきましょう。

仰る(おっしゃる)

(1)「言う」の尊敬語。言葉を口にお出しになる。言われる。おおせられる。「先生はこう―・いました」「早く―・い」
(2)(人名などを受けて)そういう名前でいらっしゃる。「佐藤さんと―・る方」「お名前はなんと―・いますか」

(『デジタル大辞林』)

「おっしゃる」とは、誰かが口に出した言葉や人名に対して使う尊敬語です。尊敬語とは相手に敬意を表す敬語になるため、目上の人や社外の人などに対して使用することが多いでしょう。

元々は、「ご命令があった」「お言いつけがあった」という意味の「仰せ有る(おおせある)」という言葉でしたが、省略されて「おっしゃる」と記すようになりました。

「おっしゃる」はひらがな表記が一般的

「おっしゃる」を文面で記載する場合、「おっしゃる」あるいは「仰る」の漢字表記となります。

どちらの表記でも間違いではありませんが、平仮名で「おっしゃる」と表記するのが一般的です。

「仰る」と漢字で表記すると、かしこまりすぎた雰囲気が出てしまったり読みづらかったりするため、迷ったらひらがなで表記しておくと無難です。

「おっしゃる」を使用する際の注意点

「おっしゃる」はビジネスや日常会話で頻繁に使用するフレーズなだけに、誤った使い方もよく見聞きします。

よくある「おっしゃる」の間違った使い方を注意点と共に紹介します。

(1)自分には使えない

尊敬語は、相手への敬意を表現する言葉です。つまり「おっしゃる」は相手の行為に用いるものであり、主語が自分になる場合には使えません。

特に社会人になりたての方は、敬語の使い分けに混乱しがちです。「私がおっしゃったことは」など、自分に敬語を使ってしまうケースは少なくないのでご注意ください。

(2)目上の人でも身内には使えない

社外の取引先にいる時に「おっしゃる」を使う場合には注意が必要です。

社外にいる時に敬うべき相手は取引先の方になり、自分と同じ会社に所属している上司や先輩などは身内に該当します。

したがって取引先と会話している際に「私の上司がおっしゃるには」という使い方はしません。

(3)二重敬語で使用しない

「おっしゃる」でよくある間違いが、同じ種類の敬語を二重に使う「二重敬語」です。

例えば「おっしゃられる」「おっしゃられた」を使ったり言われたりしたことはありませんか? 「おっしゃる」という表現はすでに尊敬語なので、尊敬語である「られる」「られた」をつける必要はないのです。

尊敬の意を込めすぎたために起こる間違いではありますが、聞いている方は大げさな印象を受け、「正しい言葉遣いを知らないな」と違和感を覚える人もいるでしょう。

「おっしゃる通り」は正しい表現?

「おっしゃる」を使った代表的なフレーズとして「おっしゃる通り」があります。ビジネスシーンで頻繁に見聞きするのではないでしょうか。

「おっしゃる通り」は、尊敬語を用いた正しい表現ですが、シチュエーションによっては相手に敬意がうまく伝わらないため、使い方には注意が必要です。

「通り(とおり)」は「それと同じ状態にあること」を意味します。つまり「おっしゃる通り」は、他人が発言したことや指摘などを「そのとおりである」と認める表現です。

ビジネスの場では目上の人から叱責されたり、詰問されたりするシーンで使う場合が多いでしょう。

そのような時「おっしゃる通りです」の一言だけで返答を済ませてしまうと、コミュニケーションとしてはやや不十分かもしれません。

受けた指摘に対して丁寧に答えるためにも、「おっしゃる通りです」以外に、気持ちを伝える言い回しや反省の念を添えるようにしましょう。

例えば「おっしゃる通りです。ご指摘いただいた点は今後十分注意いたします」や、「おっしゃる通りです。わざわざ言いにくい点をご指摘いただき感謝いたします」といった言葉をつけ加えると、よりコミュニケーションが円滑になります。

「おっしゃる」の正しい使い方は?(例文つき)

「言う」の尊敬語である「おっしゃる」は、ビジネスシーンにおいて、口頭だけでなくメールなどの文面でも使うことができます。

知っておくと便利な「おっしゃる」の使い方を、例文と共に紹介するので、確認しておきましょう。

口頭で使う時の例文

「おっしゃる」を、口頭で使う場合の例文を紹介します。

例文

・先日確認を取った際に、お客様はAプランで進めたいとおっしゃいました。

・何か問題があれば遠慮なくおっしゃってください。

・先ほどのご意見ですが、おっしゃった意図をもう少し詳しくお聞かせ願えますか?

・先輩が私におっしゃったアドバイスは今でも心に残っています。

メール・書面で使う時の例文

「おっしゃる」はメールや文書などで使っても問題ありません。

もし「言う」を文章として書くことに抵抗がある場合は、「ご指摘のとおり」「ご意見」「お話し」などに置き換えてもスムーズに意図を伝えられます。

例文

・お客様が先日おっしゃった点(ご指摘された点)について、説明のためにメールいたしました。

・先生がおっしゃった(ご意見くださった)件を後日検討いたしました。

・先輩がおっしゃった(アドバイスしてくださった)件は肝に銘じております。

・プロジェクトが進んだ暁には、御社社長がおっしゃっていた(お伝えしていた)ビジョンが実現するかと思います。

「おっしゃる」の言い換え表現

「おっしゃる」という言葉ばかりが続いてしまったり、「おっしゃる」という表現に違和感を抱いたりするシチュエーションでは、類語を使って言い換えることができます。

ここでは、「おっしゃる」と同様、相手の「言う」行為に対する尊敬語を紹介します。

言われる

「言われる」も「言う」の尊敬語です。

同じような意味で「話される」も、相手の「言う」という行為に対する敬語表現です。

「言われる」「話される」も相手への敬意を示していますが、「おっしゃる」の方がより相手への敬意を高める表現となります。

「おっしゃる」を連呼しすぎた時や、「おっしゃる」がそぐわないカジュアルな雰囲気の会話などに「言われる」を使用すると良いでしょう。

例文

・課長から、10時に会議室へ来るように言われています。

仰せになる

「仰せになる(おおせになる)」は、おっしゃると同じ漢字の「仰せ」を使用します。

ほぼ「おっしゃる」と同じ意味になりますが、「仰せになる」には敬意と共に、目上の人からの言いつけ、ご命令というニュアンスが含まれています。

「おおせになる」を使う機会はあまりないと思いますが、面識の少ない目上の相手などに使用すると、丁寧な印象を与えることができるでしょう。

例文

・その件に関しましては田中様より仰せつかっております。

のたまう

「宣う(のたまう)」も「言う」の尊敬語表現ですが、現代の日常会話ではほとんど使われない表現です。

そのため、近頃の「のたまう」には、尊敬のニュアンスより皮肉のニュアンスの方が強く込められています。相手が大げさなことを言っている時に、目上・目下関係なく皮肉として用いられることが多いでしょう。

例文

・田中君が酔ってご高説をのたまっているよ。

「おっしゃる」の英語表現

英語には敬語表現がありませんが、「言う」という意味の言葉「say」や「talk」を使って表現するのが一般的です。

英語には敬語表現がないものの、以下のような言い回しを使って相手への敬意を表現する方法があります。

「おっしゃる」を英語で表す言い回し

・I agree with you.
(あなたのおっしゃる通りです)

・I will do as you say.
(あなたのおっしゃるようにしましょう)

・I understand what you’re trying to say.
(あなたのおっしゃることは分かります)

・If you want anything, please say so without reserve.
(欲しい物があったら、遠慮なくおっしゃってください)

「おっしゃる」を正しく使いこなそう

「言う」の尊敬語である「おっしゃる」は日常生活でもビジネスシーンでも頻繁に使う表現です。ただし、ビジネスの現場で使用する場合、社外ではたとえ上司であっても「おっしゃる」とは言わないといった注意点もあります。

また、「おっしゃられる」など、よく聞くものの実は間違っているフレーズにも注意が必要です。

相手への敬意を示したい気持ちがあったとしても、間違った敬語表現はビジネスシーンでは失礼にあたる場合もあります。自信がない方は、基本形の「おっしゃる」を正しく理解し、ビジネス会話で適切に使うことを目指してください。

(笹美)

※画像はイメージです

関連する記事も併せてチェック!

使う相手に注意。「よろしくお伝えください」の正しい意味と使い方(例文付き)

SHARE