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リフレーミングとは? 意味や練習方法を紹介

笹氣健治(心理カウンセラー)

「リフレーミング」という言葉を知っていますか? 物事を今と違う見方で捉え直す思考方法のこと。物事をポジティブに捉える際に便利な考え方です。今回は心理カウンセラーの笹氣健治さんに、リフレーミングの意味や概念、練習方法を解説してもらいます。

「リフレーミング」という言葉を知っていますか?

ネガティブな気持ちをポジティブに変えるための思考の切り替え法であり、心理カウンセリングでよく用いられる技法です。

このリフレーミングをマスターすると、問題が生じてもすぐに前向きな気持ちになることができます。

今回のコラムでは、初心者でも使えるリフレーミングのコツをご紹介します。

リフレーミングの意味は?

まずは、リフレーミングの意味や概念を紹介します。

リフレーミングとは「物事を今と違う見方で捉え直すこと」

リフレーミングとは、「物事を今と違った見方で捉え直すこと」です。

例えば、自分自身の優柔不断な性格を問題視している人がいて、「優柔不断だからすぐに決断できなくてダメだ」と考えているとします。

ここで、「優柔不断」をリフレーミングしてみましょう。

優柔不断とは、別の見方をすると、「慎重に判断しようとしている」「より良いものを選択しようとしている」ともいえます。

このように捉え直してみると、気持ちはどう変わるでしょう? 「優柔不断は必ずしもダメではないな」と思えてきて、気持ちが軽くなるのではないでしょうか。これがリフレーミングの効果です。

リフレーミングの仕組み

少しだけ専門的に説明すると、リフレーミングとは「ある物事に対する認知の枠組み(フレーム)を変えて、別の違った枠組みで捉え直す(リフレームする)こと」です。

先ほどの「優柔不断」の例で言えば、「すぐに決断できない」という枠組みで捉えていた性格を、「より良いものを選択しようとしている」という枠組みで捉え直しています。視点や解釈を変える、と言ってもいいでしょう。

このように、認知の枠組みを変えると、気持ちも変わります。この心理メカニズムを利用し、意図的に物事を健全なものと捉え直して、ネガティブな気持ちをポジティブに変えるのがリフレーミングです。

リフレーミングを活用できるのはどんな時?

私たちは日常生活を送る中で、嫌な気持ちになる時があります。

そんな時、その気持ちを解消するためにリフレーミングが役に立ちます。

具体的にどのような場面で役に立つのか、例を挙げてみましょう。

うまくいかない時

営業成績が上がらない。キャリアアップのための資格試験に落ちてしまった。

このような時に落ち込んでしまった気持ちは、リフレーミングで変えることができます。

次のようにリフレーミングしてみましょう。

・常にうまくいく人はいない。

・自分を成長するための課題が見つかった。

・私には向上心がある。

うまくいかなかった現状をダメだと決めつけるか、現状の良い部分にスポットを当てるかによって、気持ちが変わることが分かると思います。

自分の性格が嫌だと思う時

私は短気だ。よく落ち込む。

このように「こんな自分の性格が嫌だ」と思う時にも、リフレーミングは効果があります。

まず「私は短気だ」をリフレーミングするとしたら、例えば次のようになります。

・私は早く決断しようとしている。

・早く決断することで時間を大切にしている。

そして「私はよく落ち込む」をリフレーミングすると、こんな感じです。

・私はうまくやりたいという意識を強く持っている。

・私は理想を高く持っている。

また、どちらにも共通するものとして、以下のようなリフレーミングも可能です。

・私には自分の改善点に気づく謙虚さがある。

・私は、より良い人になりたいんだ。

リフレーミングによって、それまで自己否定的だった感覚が、「自分のこういう部分も捨てたもんじゃないな」といった自己肯定に変わっていくと思います。

他人に悪いことをしたと思った時

ひどいことを言ってしまった。私がミスしたことで周りの仕事を増やしてしまった。

前提として、申し訳ないという気持ちを相手に伝えることがまず大切です。

それでもネガティブな気持ちが強い場合は、リフレーミングですぐにスッキリ解消とはいかないかもしれませんが、気持ちを少しでも軽くする役には立つはずです。

以下のようなリフレーミングで、気持ちを少し前向きにできるかもしれません。

・他人に嫌な思いをさせたことを認める潔さが私にはある。

・私は他人に嫌な思いをさせたくないという配慮を持っている。

・自分の過ちを真摯に受け止める心の強さがある。

嫌なことをされたと思った時

ひどいことを言われた。店員さんの接客がひどかった。

このように、ショックを受けたり、腹が立ったりした時は、どのようにリフレーミングできるでしょうか?

・相手にも何か事情があったのかもしれない。

・世の中には、こういう人もいるものだ。

・私は何か試されているのかもしれない。

ここまでの例とは少し違った印象を受けるかもしれませんが、このように「気持ちを切り替える効果がある思考転換」もリフレーミングに含まれます。

リフレーミングの大切なポイント

上記で挙げた例は、リフレーミングとはどういうものかを理解していただく目的で示したものです。そのため、もしかすると中にはあまりピンと来ないものもあるかもしれません。

リフレーミングには非常に重要なポイントがあります。それは「リフレーミングするのは自分自身だ」ということです。

例えば、営業成績が上がらなくて悩んでいる人に、「自分を成長するための課題が見つかったってことだよね」と言葉を掛けても、「気休めなんかいらない」と言い返されてしまうかもしれません。

あくまでも、嫌な気持ちになっている本人が自らリフレーミングしなければ効果はないということです。

リフレーミングの簡単な練習方法

リフレーミングが気持ちの切り替えに役立つことが理解できたところで、次は、リフレーミングするコツを紹介したいと思います。

今回は、初心者でも使える初級編ということで、ケース別にリフレーミングする手順をお伝えします。

自分の嫌な性格についてリフレーミングする場合

ネガティブに感じている性格をポジティブに捉え直したい時には、次のように考えてみるといいでしょう。

STEP1:その性格の特徴を考える

STEP2:その特徴のプラス面を考える

STEP3:そのプラス面が役立つ場面を考える

例として、「繊細な性格」について考えてみましょう。

「繊細な性格だから、いろいろ感じて気疲れする」とネガティブに捉えているところを、リフレーミングしてみます。

STEP1:その性格の特徴を考える

まず、「繊細な性格」の特徴を考えます。

その中で、「感じやすい」という特徴が思い浮かんだとします。

STEP2:その特徴のプラス面を考える

次に、その「感じやすい」特徴のプラス面を考えてみます。

その中で、「感じやすいために、いろいろなことを察知することができる」というプラス面を思いついたとします。

STEP3:そのプラス面が役立つ場面を考える

最後に、「感じやすいために、いろいろなことを察知することができる」というプラス面が役立つ場面を考えます。

「いろいろなことを察知することは、ミスがないかどうかチェックする時に役立つ」といえます。

以上から、「繊細な性格」をリフレーミングすると、「いろいろなことを察知することができて、ミスがないかどうかチェックする時に役立つ性格」となります。

今まではマイナス面だけを見てネガティブな気持ちになっていたかもしれませんが、このようにリフレーミングしてプラス面があることに気づくと、ネガティブになる必要がないと思えるようになるのではないでしょうか。

自分にとっての嫌な状況をリフレーミングする場合

予期せぬトラブルが発生した。理不尽なクレームにうんざりしている。

自分にとって嫌な状況の時には、次のようにしてリフレーミングします。

STEP1:自分の行動の中で褒められる点に気づく

STEP2:自分の中のポジティブな動機に気づく

STEP3:ピンチはチャンスだとしたら、どんなチャンスなのかを考える

STEP1:自分の行動の中で褒められる点に気づく

例えば、トラブルやクレームに対する自分の行動の中で、どのような点が褒められるでしょうか?

苦しさを我慢している。逃げずに対応している。なんとかうまく解決しようとしている。

自分の行動をよく観察すると、このような良い点が必ず見つかります。

STEP2:自分の中のポジティブな動機に気づく

次に、その良い点の背後にあるポジティブな動機を考えます。

「我慢し、逃げずに対応することでうまく解決しようとしている」という上記の例でいえば、自分が解決しようとする責任感、会社のためにも解決しなければと思う貢献意識があることが分かるでしょう。

STEP3:ピンチはチャンスだとしたら、どんなチャンスなのかを考える

「人は試練を乗り越えることで成長する」と考えると、このピンチも成長のチャンスだと言うことができます。

では、今はどのような成長を遂げるチャンスだと考えられるでしょうか?

トラブル解決のための交渉力やリーダーシップを身に付けるチャンス、クレームを言っている人を納得させられるコミュニケーションスキルを磨くチャンスだと考えられるかもしれません。

以上から、自分にとって嫌な状況をリフレーミングすると、「私は逃げずに我慢強く解決しようとしていて、責任感や貢献意識がある。今こそ自分が成長する絶好のチャンスである」といったポジティブな面に気づくことができ、もう少し頑張ってみようという前向きな気持ちが湧いてくると思います。

自分の失敗についてリフレーミングする場合

失敗すれば誰だって落ち込みます。

「やってしまった」「なんてバカだったんだ」「自分が情けない」……このようなネガティブな気持ちを変えるには、次の3つを考えてみることでリフレーミングできます。

STEP1:失敗する前の自分を弁護する

STEP2:失敗することのメリットを考える

STEP3:長期的な視点で失敗の意味を考える

STEP1:失敗する前の自分を弁護する

まずは、失敗する前のことを考えてみましょう。

誰だって、しようと思って失敗しているわけではないですし、失敗すると分かっていれば違うことをやっていたはずです。

そう考えると、失敗した自分について「自分なりに良かれと思ってやったのだ」「あの時は、あれでいいと思ったのだ」と弁護することができるでしょう。

STEP2:失敗することのメリットを考える

続いて、失敗することのメリットを考えます。

頭の体操のつもりで、遊び心を持って、「失敗して良かった。なぜなら……」という文章を作ってみてください。

「失敗して良かった。なぜなら、今後は慎重になれるから」

「失敗して良かった。なぜなら、自分の悪い癖が分かったから」

「失敗して良かった。なぜなら、失敗した人の気持ちが理解できるようになったから」

このように柔軟な発想をすると、「失敗=悪いこと」という固定観念にとらわれる必要がないと分かるでしょう。

STEP3:長期的な視点で失敗の意味を考える

最後に、長期的な視点で失敗の意味を考えてみます。

例えば、人生80年とした時、今回の失敗は自分の人生においてどれくらい重大な出来事だと考えらえるでしょう? その失敗の影響は、あと何年くらい残るでしょう?

こうやって長期的な視点で眺めてみると、それほど大きな問題ではないと思える失敗がほとんどのはずです。

以上を踏まえると、失敗して落ち込んでいることについては、「自分なりに良かれと思ってやったのだ。むしろ、失敗を通していろいろ学べて良かった。長い人生を考えると、この失敗は大したことではない」といったようなリフレーミングができます。

そうすれば、「過ぎたことをくよくよ考え続けるのはやめて、今後を考えて生きていこう」と、前向きな気持ちに切り替えやすくなると思います。

物事をどう捉えるかで気持ちは変わる

嫌なことがあった時、ネガティブな気持ちから抜け出せない時、リフレーミングはとても役に立ちます。

慣れないうちは、うまくリフレーミングできないこともあるかもしれませんが、繰り返し練習することでスムーズにできるようになります。

今回紹介した手順を参考に、ぜひ日常的に活用してみていただきたいと思います。

(笹氣健治)

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