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生理中は性欲が高まる? ムラムラする理由と生理中のセックスにおけるリスク

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

生理中になぜか性欲が高まることってありませんか? そもそも、生理中にオナニーやセックスをしてもいいものなのでしょうか? 産婦人科医・医学博士の宋美玄先生に、生理中に性欲が強くなる理由とセックスにおけるリスクについて伺ってみました。

女性には生理周期(月経周期)があり、それに伴ってさまざまな変化が体に起こります。性欲の変化もそのひとつ。

「生理の前にはなぜかムラムラする」「私はいつも生理が終わる頃にセックスしたくなる」など、生理と性欲が変化するタイミングが関係するという女性も多いのではないでしょうか。

生理中に性欲が高まったときは、セックスをしてもよいのでしょうか。

生理前や生理中に性欲が変化するのはなぜ?

そもそも生理前や生理中にムラムラしたり、性欲が変化したりするのはなぜなのでしょう。女性の性欲の変化と生理は、どのように関係しているのでしょうか。

女性の性欲は排卵日の頃に高まる

女性の性欲の変化には、大きく2つのことが影響しているといわれています。ひとつは性的な魅力を感じる対象を認識することです。魅力的な相手を認識すると、脳が性的興奮を感じて、性欲が高まります。

しかし、これは生理周期にとくに関係ありません。生理周期に関係するのは、もうひとつの理由、テストステロンという男性ホルモンの分泌です。

テストステロンは男性ホルモンの一種ですが、女性にも分泌されています。テストステロンには筋肉や骨格を発達させたり、性衝動を高めたりする作用があり、女性は排卵日付近になるとテストステロンの分泌が活発になって性欲が高まる傾向にあるといわれています。

とはいえ、これはあくまで理論上のことで、「私はこれに当てはまらないからおかしい」「排卵日以外にも性欲が高まる私はおかしい」というわけではありません。個人差はあるものです。

生理前に性欲が強くなる理由

なかには生理前に性欲が強くなる人もいます。しかし、なぜその時期に性欲が強くなってムラムラするのか、理由はわかっていません。PMS(月経前症候群)でイライラしたり、ストレスがたまったりすることが性欲に向かうという説もあるようですが、はっきりとした原因が解明されていないのが現状です。

生理中は性欲が落ち着く?

生理前に性欲が高まった人も、「生理が始まると、いったんは性欲が落ち着く」というコメントが、ネット上などに見受けられます。生理が始まると生理痛などで体調にも影響が出て、セックスどころではなくなるため、そういわれるのかもしれません。

ですが個人差はありますし、生理の終わりかけになると、またムラムラしてくる人もいるなど、一概に「生理中は性欲が落ち着く」とはいえないようです。

生理中にオナニーをすることのリスク

生理中にムラムラしたとき、性欲を解消するためにマスターベーションをする人もいるでしょう。でも「生理で血が出ているときにマスターベーションをしてもいいの?」「体に悪い影響があるのでは?」と心配になるかもしれません。

子宮内膜症のリスクが高まることも

生理中のマスターベーションには、子宮内膜症の発症リスクが高まる可能性があるといわれています。子宮内膜症とは、子宮内膜またはそれに似た組織が卵管や卵巣など、本来子宮内膜が発生しない場所にできる病気です。

子宮内膜症になると、生理痛がひどくなったり、生理のとき以外にも腰痛や下腹部痛、性交痛などが生じたりするほか、周囲の組織と癒着をおこして、不妊の原因になることがあります。

子宮内膜症がおこる詳しい原因はわかっていませんが、生理のときにはがれた子宮内膜が、経血と一緒に逆流することがかかわっているといわれることがあります。マスターベーションをすると、子宮が収縮して逆流する経血の量が増えるため、リスクがより高まると考えられます。

しかし、そもそも生理の経血は、マスターベーションの有無にかかわらず、少なからず逆流しているそうです。生理中のマスターベーションが必ずしもリスクが高いとは考えられないため、適度に行うことに問題はないでしょう。

生理中にセックスをすることのリスク

続いて、生理中のセックスのリスクを考えてみましょう。生理中にセックスをすることでおこるリスクとしては、おもに以下のようなことがあげられます。

避妊がおろそかになる

「生理中は中出ししても妊娠しない」と言われることがあり、避妊がおろそかになる可能性があります。そもそも「生理中は妊娠しない」というのは、大きな誤りです。

とくに生理周期が不安定な場合は排卵のタイミングがずれ、生理中でも避妊せずにセックスをすれば妊娠する可能性があります。妊娠を望んでいない場合は、しっかりと避妊をしましょう。

感染症にかかるリスクが上がる

生理中の性行為では、血液(経血)との接触が避けられません。血液には、じつはさまざまなウイルスや病原体が含まれており、血液を介して感染する病気もあります。たとえば、B型肝炎、C型肝炎、後天性免疫不全症候群(HIV)、梅毒などです。

マスターベーションのように、自分の経血が自分の体につくのと異なり、セックスでは他人の血液が体につくため、感染症にかかるリスクは高まります。

そのほか、生理中のマスターベーションのところでも説明した、子宮内膜症のリスク増の可能性もあります。

生理中はオナニーやセックスをしない方がいい?

これらのことから考えて、生理中は自分やパートナーの体を守るためにも、セックスはできれば控えるのがよいでしょう。

もし生理中にムラムラした場合は、セックスよりもマスターベーションで解消するほうがよいかもしれません。ただし、マスターベーションにも、さきほどお伝えしたようなリスクがあることを理解して行いましょう。

どうしてもしたくなったら。生理中のオナニー・セックスの注意点

ただし、遠距離恋愛中で会えるタイミングが限られているなど、どうしても生理中にセックスをしたい場合もあるかもしれません。生理中のセックスやマスターベーションでは下記のことに注意しておきしょう。

(1)必ずコンドームをつける

生理中は感染症のリスクが普段よりも高まるため、必ずコンドームをつけましょう。コンドームには避妊だけでなく、性感染症の感染を防ぐ役割があります。「生理中だから妊娠しない」「ピルを飲んでいるからコンドームはつけなくていい」という誤った情報に惑わされず、必ずコンドームをつけてセックスをしましょう。

マスターベーションの際も、バイブレーターを使う場合はコンドームをつけて行うことをおすすめします。

(2)手やセックストイを清潔にする

これも生理中に限ったことではありませんが、セックスやマスターベーションは必ず手を清潔にしてから行いましょう。そもそも女性は腟と尿道口、肛門との距離が近いため、尿道や腟に雑菌が入り込みやすく、膀胱炎や細菌性腟炎などの炎症が起こりやすいといわれています。

生理中のセックスやマスターベーションでは、経血で手が汚れることから「終わってから手を洗おう」と思うことがあるかもしれませんが、目に見えなくても手にはたくさんの菌やウイルスがついている可能性があります。始める前に手を清潔にする習慣を、ぜひ身につけてください。

バイブレーターやローターなどを使用する場合は、それらも洗ったり、アルコールで拭いたりして清潔にしてから使いましょう。不潔なセックストイから感染し、性器が炎症を起こしてしまうケースをときどき耳にします。使い終わった後も、必ず清潔な状態にして保管しましょう。

生理中のオナニーやセックスには注意が必要

生理中のマスターベーションやセックスには、自分とパートナーの体に少なからずリスクがあります。できることなら我慢することをおすすめします。ただし、「どうしても」という場合には今回紹介したような注意点を守ることで、リスクを多少なりとも下げることができるはずです。

「生理とセックスの予定がいつも重なってしまう」という場合は、生理中に無理やりするのではなく、ピルやIUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)などで生理のほうをコントロールすることも検討してみてください。

自分とパートナーの体をいたわりながら、セックスやマスターベーションを楽しみましょう。

(監修:宋美玄、取材・文:山本尚恵)

※画像はイメージです

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