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「どういたしまして」は目上の人にも使える? 使い方や例文・言い換え表現を解説

大部美知子

相手からお礼を言われた時、「どういたしまして」と返すこともありますよね。目上の人にも使える表現なのでしょうか? 今回は「どういたしまして」の正しい意味や使い方、言い換え表現について、ビジネスコミュニケーション指導に従事する大部美知子さんに教えてもらいました。

目上の人から「ありがとう」と言われた時、どのように言葉を返せば良いか迷うことはありませんか?

代表的な例として「どういたしまして」という表現があります。

この表現、目上の人に対しては何となく使いづらい印象がありますが、実際のところ使っても問題ないのでしょうか?

今回は「どういたしまして」の意味と正しい使い方を確認してみましょう。

「どういたしまして」の意味や言葉の成り立ち

「どういたしまして」は、直訳すると「どうしてそんなことがあるでしょうか? 何もしていませんのに」という意味の言葉です。

例えば、相手から「ありがとう」と言われた時、相手の感謝の気持ちに対して、「気にしないでください」という相手への謙遜の意味と同時に「大したことはしていません」という軽い否定を示しています。

なお、「どういたしまして」は「どう+いたし+まし+て」で構成されており、それぞれの意味は下記の通りです。

どう=「どのように」「どうして」「何を」の意味の副詞
いたし=動詞「する」の謙譲語である「いたす」(の連用形)
まし=丁寧語を作る助動詞「ます」(の連用形)
=反問的用法の終助詞

なぜ「どういたしまして」という反問的な表現になったのか、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

これは、「どうしてそんなことがあるでしょうか? 何もしていませんのに」の後半部分が省略されて、最初の「どうして」だけが残り、さらにその丁寧な表現として「どういたしまして」という形になったという説があります。

このような経緯があるため、「どういたしまして」には「お礼の必要はありません」と否定する意味が受け継がれているとされているのです。

「どういたしまして」はどういう時に使う言葉か?(例文付き)

次に、「どういたしまして」の具体的な使い方についてご紹介します。

お礼や感謝に対して「それほどでもありません」と謙遜する時

相手から感謝された時、「大したことではないですよ」「それほどのことでもありませんよ」というような謙遜の意味も込めて使います。

例文

例えば、同僚の仕事を手伝った際には次のように使えます。

同僚:「助かったよ。ありがとう」
あなた:「どういたしまして。少しでも役に立てたのなら私もうれしいよ。また手伝いが必要な時はいつでも言ってね」

おわびに対して「わびることではないですよ」と謙遜する時

こちらも前述したニュアンスと同じように、相手のおわびを丁寧に打ち消して「わびることではない」という謙遜の気持ちを表す時に使います。

例文

例えば、長いお付き合いのある顧客のミスのフォローをした時にはこのように使えます。

顧客:「こちらのミスで大変ご迷惑をお掛けしました」
あなた:「いえいえ、どういたしまして。担当として当然のことをしただけですので、どうぞお気になさらないでください」

「どういたしまして」は目上の人にも使えるか?

最初に説明したように「どういたしまして」の「いたし(いたす)」は「する」の謙譲語なので、「どういたしまして」は敬語上の問題はありません。

ですが、ビジネスシーンで目上に人に使うのは避けた方が無難でしょう。

なぜなら、相手に「上から目線で偉そうだ」とか、「自分の気持ちを拒否された」と受け取られる可能性があるからです。

では、目上の人にはどのような言葉を選べば良いのでしょうか? 次の項目で、「どういたしまして」の言い換え表現を考えてみましょう。

「どういたしまして」の言い換え表現

ここでは、「どういたしまして」の言い換え表現を紹介します。

目上の人に対しても使える表現ですので、「どういたしまして」と同じようなニュアンスを伝えたい際には参考にしてみてください。

「恐れ入ります」

相手に対して申し訳なく恐縮している気持ちから転じて、「心苦しいほど、ありがたく思う」というニュアンスがあるので、目上の方への表現としてぴったりです。

例文

・ありがたいお言葉を頂戴し、大変恐れ入ります。

「恐縮です」

「恐縮」は「身も縮まるほどに恐れ入る」という意味ですが、相手の厚意に対して恐れ多いという謙譲の気持ちを表している言葉でもあります。

例文

・そのようにおっしゃっていただき、恐縮です。

「とんでもないです」

「お礼を言ってもらうほどのことではありません」というような、謙遜の気持ちを表す言葉です。

言い方によっては、相手の思いや言葉を否定しているかのように聞こえてしまう恐れがあるので、謙遜していることが分かるよう、以下の例文のように一言添えると良いでしょう。

例文

とんでもないです。お礼を申し上げたいはこちらの方でございます。

「お役に立てて○○です」

「お役に立てて+(何より・光栄・私もうれしいなど)です」のパターンは、「お役に立てて」という敬語表現に、後に続ける言葉もいろいろなバージョンがあるので、口頭でも使いやすい表現です。

例文

お役に立てて何よりです。

「幸甚です」

メールや文章などにふさわしい、改まった印象を与える表現です。

「幸甚です」の代わりに「幸いです」にすると敬意が少し下がりますが、堅苦しさが和らぐので使いやすいかもしれません。

例文

・お力になれたとのこと、幸甚でございます。

「こちらこそありがとうございました」

相手の厚意に対して、前向きに捉えている表現ですので、相手の心理的な負担が軽くなるようにとの気遣いが伝わる表現です。

「ありがとうございました」の代わりに、「勉強させていただきました」「良い経験になりました」なども使えそうです。

例文

私の方こそ、貴重な機会をありがとうございました。

言葉を知ってよりスムーズなコミュニケーションを

いかがでしたか? 「どういたしまして」の使い方に自信がつきましたか?

言葉の意味を知り、その他の表現も使えるようになると、相手の気持ちを適切に受け止めて、よりスムーズなコミュニケーションができるようになります。

ビジネスシーンでお礼やおわびの返事をする際にぜひご活用ください。

(大部美知子)

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