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浮気していないのに性病になったら。彼氏への伝え方や対処法は?

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

彼氏としかセックスをしていないのに、性病にかかってしまうことがあります。「彼氏はかかっていないのに。浮気もしていないのになぜ?」と悩むこともあるでしょう。そこで、産婦人科医・医学博士の宋美玄先生に性病にかかる原因と彼氏への上手な伝え方について伺ってみました。

性病(性感染症)には「遊んでいる(不特定多数とセックスしている)人がかかる」というイメージがあり、かかったことがわかっても恥ずかしくて言い出せない人が多いかもしれません。

パートナーがいる人は、「浮気しているのでは」と疑われるのが怖くて言い出せないケースも。

ですが、性感染症にかかることとセックスの回数は実は無関係。さらに、浮気の有無も関係ない場合が多いのです。

性病は何でうつる?

性病は、医学的には「性感染症」といいます。性感染症とは、セックス(オーラルやアナルなども含む)などによって感染する病気の総称で、病気の元となるウイルス、細菌、原虫などが、性器周辺や口の中、喉などに接触することで感染が起こります。

しかし、感染しても発症までの潜伏期間が長かったり、症状が軽かったりして、感染自体に気付かないことも多々あるなど、注意が必要です。後述の「主な性病の種類と症状」で、詳しく説明しています。性感染症ごとの症状などを知りたい方は、そちらをご覧ください。

浮気していないのに自分だけ性病が陽性になるのはなぜ?

カップルの場合、どちらか一方が性感染症になると「浮気している」と疑われてケンカになってしまうことがあるかもしれません。ですが、浮気をしていなくてもカップルの1人だけが性感染症にかかることはあります。そのようなことが考えられるのは、たとえば以下のようなケースです。

カップルのうち1人だけが性感染症にかかるケース

・前のパートナーから感染した性感染症が潜伏期間を経て発症した
・お互いに性感染症にかかったけれど、どちらか一方だけが感染に気付かないまま、先に治ってしまった
・感染に気付いたパートナーがこっそり治療していた
・パートナーの性器ではなく咽頭(のど)に感染していた
・パートナーの検査結果が誤り(偽陰性)だった

性感染症は、感染してもすぐに症状が出るとは限りません。感染~発症までには潜伏期間があり、その期間は病気によってはまちまちです。

淋病は最大7日ほどと短いですが、数週間潜伏している病気もありますし、同じく性行為によっても感染する恐れのあるHIV(エイズ/後天性免疫不全症候群)などは自覚症状のないまま、長い場合は10年以上潜伏することもあります。

そのため、以前のパートナーから性感染症をうつされたことに気付かずに別れ、別のパートナーと出会った後にそれが発症する……ということもあるのです。

男女によって症状の出方が違うことも

たとえばクラミジア感染症では、男女の検査の精度に差があり、男女ともに感染していても男性は陽性にならず、女性だけが陽性になるケースが少なくありません。

またクラミジア感染症ではパートナーの咽頭、つまり喉に感染し、クラミジア咽頭炎を起こすこともあります。そうなると尿検査では感染がわかりません。しかし感染力はあるので、オーラルセックスで女性の性器に感染し、発症することも考えられます。

このようにカップルの片方だけが性感染症にかかったと判断される要因は、いくつもあります。決して浮気だけが原因ではないのです。

性病にかかった場合の彼氏への伝え方

性感染症にかかった場合、かかった人だけでなくパートナーも一緒に検査をし、治療をすることが大切です。一緒に治療しなければ、せっかく治ってもまた感染してしまう可能性があるからです。

しかし、ここでやっかいな問題がひとつ生じます。それは、多くの性感染症は男性よりも女性に症状が現われやすいため、女性のほうが先に、性感染症にかかったことに気付きやすいということです。

この場合、一緒に治療をするには女性からパートナーに、性感染症にかかったことを伝える必要があります。なかなか難しい問題ですよね。どうやって伝えるのがよいのでしょう。

「別件で病院に行った時に指摘された」と伝える

カップルそれぞれの関係性があるので、一概に「こう伝えるのがおすすめ」と紹介するのは難しいのですが、たとえば「生理痛がつらくて病院に行った時に、念のため性感染症の検査もしたら、感染が見つかったんだけど……」などのように、別件で病院に行った際に指摘されたこととして伝えたりすると、話を切り出しやすいかもしれません。

「パートナーと自分、どちらが先にかかったか」という犯人捜しをするのではなく、「一緒に治してほしい」という気持ちを優先すると、うまく伝わりやすいでしょう。

医師と一緒に、良い伝え方を考えておく

そもそも性感染症は、過去のセックスによって感染したものが、時間をおいて発症することがあるため、カップルのうち、どちらが先に感染したのかを検査で調べることはできません。

カップルで一緒に受診すると、こうした説明を医師から、パートナーも納得できるように伝えてくれることがあります。自分でうまく言えない場合は、あらかじめ医師に相談して、一緒に良い伝え方を考えておくのもよいでしょう。

自治体によっては、保健所で梅毒など一部の性感染症の検査を無料かつ匿名で受けることも可能です。「疑っている」という姿勢ではなく、まずは「お互いの健康のために、念のため検査を受けてほしい」と伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。

性病は病院に行かなくても治る?

もし、性感染症にかかっていることに気付かず、病院に行かずに放っておいた場合、たとえば切り傷がいつの間にか治るように、自然に治ることはあるのでしょうか。

治ることもあるけれど、見えないところで症状が進行することも

じつは性感染症にかかっていても症状が軽い場合、気付かないうちに治っていたということがないわけではありません。しかし「病院に行かずに治った! やった!」となるかというと、それは違います。

性感染症そのものは治ったとしても、放置している間に、男性では精巣炎、女性では卵管炎や腹膜炎などが起こっていることがあります。そうなると、病原体がいなくなっていても、機能に異常が起きている可能性があります。

女性の場合はとくに、体の中の見えないところで症状が進行して、将来の不妊、早産、流産、母子感染につながることもあります。ほとんどの性感染症は、早めにきちんと治療すれば治ります。まずは放置しないことが大切です。

性病を防ぐ3つの方法

性感染症は、かかったことがわかってから治療することももちろん大切ですが、そもそもかからないように予防をしておくことが重要です。性感染症に感染する確率を低くするには以下の3つのポイントを守ることが大切だとされています。

(1)NO SEX:セックスをしない
(2)STEADY SEX:特定の相手とだけセックスをする
(3)SAFER SEX:腟への挿入だけでなく、オーラルセックスも含めてコンドームを使用する

とくにコンドームは避妊具としてだけでなく、性感染症の感染予防にとても重要な役割を果たします。挿入の前のオーラルセックス(フェラチオ)の時からコンドームをペニスの根元までしっかり装着するなど、正しく使用しましょう。

ただし、コンドームを着けていればすべての性感染症を防げるわけではありません。たとえば梅毒は、性器周辺の、本人も気付かないほど小さな傷からも感染します。どんなことにも100%はありませんが、コンドームを適切に使って、できる限りの予防を心がけましょう。

主な性病の種類と症状

最後に、20代~30代がかかりやすいとされる主な性感染症と、その症状を解説します。症状が出にくいものや、症状が収まったと思ったらぶり返してくるものもあり、注意が必要です。

クラミジア感染症

日本で最も多い性感染症です[*1]。感染すると男性は軽い排尿痛を感じることもあります。女性は無症状の場合が多いです。そのため気付かないうちに進行し、卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠を引き起こしたり、不妊の原因になったりすることがあります。

オーラルセックスやアナルセックスで喉や肛門にも感染します。女性の場合、感染後、1~3週間で発症します [*2]。

梅毒

近年、患者数が急増し、とくに若い女性の感染が増えている性感染症です。感染力が強く、粘膜や皮膚の小さな傷からでも感染することがあります。

発症は感染の約1カ月後。性器や肛門、口にしこりができたり、全身に発疹が現れたりします。痛くない口内炎や原因不明の皮膚の発疹などがあると要注意です。

しかし、しばらくするとそれらの自覚症状がなくなるため、治ったと思い込み、放置しがちです。発見が遅れると脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。妊娠中に感染した場合は、赤ちゃんに障害が出ることがあります。

淋病(淋菌感染症)

感染力が非常に強く、性器のほかに喉、直腸にも感染します。男性にはすぐにはっきりした症状(ペニスから粘液や黄色の膿が出るなど)が現れますが、女性は無症状のことが多く、進行して初めて感染に気付くことがあります。

女性でも症状がある場合は、男性同様、性器周辺から緑黄色の濃いおりものや膿が出ます。放置すると不妊の原因になることも。感染後、2~7日で発症します。

腟トリコモナス症

一般的に男性よりも女性に強い症状が出る性感染症です。男性は無症状のことが多く、あっても軽い排尿痛や頻尿程度ですが、女性は強い悪臭がする白や黄色っぽい泡状のおりものが大量に出てきたり、デリケートゾーンにかゆみや痛みが生じたりします。

なかには女性でも症状がない場合もありますが、症状がない場合でも他人に感染させることはあります。感染から発症までは1~3週間です。

尖圭コンジローマ

性器周辺に小さな尖ったイボができる病気です。できたイボが集まると小さなカリフラワー状になります。ただし、イボができないケースもあり、痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどないので、感染に気付かないことが少なくありません。

子宮頸がんを引き起こすことで知られるHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが原因ですが、子宮頸がんを発症させるHPVとは型が異なります。数週間~3カ月間という長い潜伏期間を経て発症します。

なお、子宮頸がんワクチンのうち、4価(4種類のHPV感染を予防できる)と9価(9種類のHPV感染を予防できる)のワクチンには尖圭コンジローマの予防効果もあります。尖圭コンジローマは出産時、赤ちゃんに感染してトラブルを引き起こすこともあるので、可能であればワクチンを接種しておくと安心です。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスに感染することで発症します。無症状のことが多いですが、性器に小さな水ぶくれやただれができることがあり、なかには激痛で排尿困難や歩行困難を生じる人もいます。

一度感染すると、治療してもウイルスを体から完全に除去することはできないため、疲労などにより体の免疫が低下すると何度でも再発します。初回の発症は感染後3~7日で起こります。

なお、よく間違われるのですが、腟カンジダ症は性感染症ではありません。腟カンジダ症は腟の常在菌であるカンジダというカビの一種が、体力が低下したり抗生剤を飲んだりすると活発になって不快な症状が現われる病気のことです。

原因は腟の常在菌ですので、性行為によって感染するわけではありません。腟カンジダ症になると、外性器に強いかゆみが生じたり、クリーム色の濁ったおりものやカスのように固まったおりものが出たりすることがあります。

こうした症状がある場合は病院で診てもらい、必要に応じて治療を受けましょう。

性病は誰でもかかる可能性がある

性感染症は、セックスが盛んな人、異性関係が派手な人だけが関係する病気ではなく、セックスを一度でもしたことのある人なら、誰もがかかる可能性のあるものです。そして、かかってもきちんと治療をすれば治る病気が多いです。

性感染症にかかった恥ずかしさから病気になったことを隠すのではなく、少しでも早く治せるよう、正しく向き合って、パートナーと一緒に検査や治療をしていきましょう。

※記事内の「病院」とは診療所を含めた医療機関を指します。

(監修:宋美玄、取材・文:山本尚恵)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 性器クラミジア感染症|東京都性感染症ナビ
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/knowledge/chlamydia/index.html

[*2]「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」p86

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