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においの原因となる「恥垢」とは? デリケートゾーンの正しい洗い方とケア方法

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

しっかりとケアをしているはずなのに、気になるデリケートゾーンのにおい。一体何が問題なのでしょうか? 産婦人科医・医学博士の宋美玄先生にその原因と正しいケアの方法について伺ってきました。

腟まわりのデリケートゾーンのお手入れは女性にとって悩みの種。

とくにきちんと洗っているつもりでも、きれいに落としきれず、気が付くと溜まってしまう恥垢(ちこう)は、においの原因にもなってしまいます。どのようにケアするのがよいのでしょう。

恥垢とは

恥垢とは、排泄物や経血、おりもの、汗といったタンパク質の汚れがうまく落としきれず、性器のヒダなどに溜まってしまったもののことを言います。

女性器はそもそも複雑な構造をしている上に、女性が自分自身でその構造を把握していないことが少なくありません。そのため正しく洗うことが難しく、汚れが溜まってしまいがちです。

溜まった汚れは恥垢と呼ばれる垢となります。主に白っぽいクリーム状をしていて、大陰唇と小陰唇の間、小陰唇の内側、クリトリス包皮の内側あたりによく溜まっています。

恥垢が溜まるとどうなる?

デリケートゾーンに汚れが溜まると、さまざまなトラブルを引き起こすことがあります。

(1)においの原因になる

恥垢によるトラブルといえば、まずは「におい」ではないでしょうか。デリケートゾーン以外でも、たとえば体を洗って清潔にしていないと、におってくることがありますが、汚れやすい上に下着などで締め付けられて蒸れやすいデリケートゾーンは、とくににおいの発生しやすい条件がそろっています。

まずは汚れをしっかり落とし、においの発生を防ぐことが大切です。

(2)雑菌が繁殖し、かゆみの原因になる

デリケートゾーンが蒸れることで、溜まった恥垢に雑菌が繁殖しやすくなります。その結果、炎症が起きて、かゆみやヒリヒリした痛みなどが生じることもあります。

(3)膀胱炎などの感染症を起こしやすくなる

デリケートゾーンに繁殖した雑菌が尿道から膀胱に侵入し、膀胱炎の原因になることも少なくありません。とくに生理(月経)期間中は要注意です。ナプキンをつけるため、経血が常にデリケートゾーンに付着したままになり、より雑菌が繁殖しやすい状態になっています。生理中はデリケートゾーンの清潔さを保つことを、いつもよりも心がけておきましょう。

恥垢が溜まる原因

清潔にしているはずなのに、なぜか溜まる恥垢……。それはこんなことが原因かもしれません。

(1)お湯だけで洗っている

「デリケートゾーンは粘膜が露出しているので、ソープは使わずお湯だけで洗っています」という人がいるかもしれませんが、恥垢のようなタンパク質の汚れは、お湯をかけるだけでは落ちません。ソープを使って、汚れをきちんと洗い流しましょう

使用するソープも、デリケートゾーン専用のものを使うのがベストです。詳しい洗い方については、のちほど説明します。

(2)隠れた部分の汚れを落としきれていない

最初にもお伝えしたように、女性器は複雑な構造をしています。そのため、ヒダやシワの間など、隠れた部分の汚れを落としきれないことも。「きれいにしているつもりだったのに、実は……」とならないよう、隠れた部分もしっかりと清潔にしてあげましょう。

(3)性感染症の可能性も

きれいに洗っているはずなのに、おりものがどんどん出てきて恥垢が溜まる場合、もしかしたら性感染症にかかっている可能性があります。女性は性感染症にかかっても無症状であることが多く、自覚症状がないため気付きにくいのです。

中でも代表的な性感染症が、性器クラミジア感染症です。感染しても自覚症状はほとんどなく、炎症が進むにつれ水っぽいおりものの量が増えたり、不正出血や下腹部痛がみられたりすることがありますが、そうした症状に気付いたときには、すでにかなり進行してしまっていることが多いのが特徴です。

おかしいなと感じたら、恥ずかしがらずに早めに婦人科を受診しましょう。治療が遅くなると、将来の不妊症につながることもあります。

恥垢の正しい洗い方やケア方法

においや雑菌のもとになりやすい恥垢を溜めないためにも、デリケートゾーンの正しい洗い方やケア方法を確認しておきましょう。

(1)指の腹を使って、やさしくこすりとるように洗う

洗うときはよく泡立てたソープを手に取り、指の腹を使って恥垢をこすりとるように洗います。やさしく洗うことが大切ですが、恥垢は意外としつこいので、なでるだけでは汚れが残ってしまうことも。

とはいえ爪をたてたり、ボディタオルでゴシゴシ洗ったりすると、粘膜を傷つけることがあるのでNGです。指の腹で、ヒダやシワの間の汚れをしっかりこすり落としていきましょう。

なお、洗うのはあくまで外陰部だけ。腟の中まで洗う必要はありません。むしろ腟の中は基本的に、洗い流さないほうがよい部位です。なぜなら健康な女性の腟内には、ラクトバチルス(デーデルライン桿菌)と呼ばれる善玉菌がいて、腟の中を感染から守る自浄作用の働きを果たしているからです。

腟の中をソープで洗ってしまうと、この善玉菌も洗い流されてしまうため自浄作用の働きが低下し、かえって、においの原因となる細菌が繁殖してしまうこともあります。腟の中以外の外陰部だけを洗い、最後はぬるま湯でソープを洗い流しましょう。

タオルで拭くときもゴシゴシとこすらず、押し当てるようにして水気を吸い取ってください。

(2)ソープを選ぶときはpH値に注目

デリケートゾーンは体のほかの部位でいうと目や鼻、のどと同じく、皮膚とは違う粘膜が露出している部位です。また健康な成人女性の腟内は常在菌である善玉菌により、pH3.8~4.5の弱酸性に保たれています[*1]。

これらのことから、皮膚を洗うためのボディソープをデリケートゾーンに使うと刺激が強すぎたり、腟を清潔に保つために必要な常在菌まで洗い流してしまったりして、ヒリヒリしたり、かゆみが生じたりすることがあります。

ボディソープであっても弱酸性のものならばデリケートゾーンに使ってもよいといえますが、専用のソープと比べると「洗った後にヒリヒリする感じがある」という人も少なくありません。腟内のpH値にできるだけ近い、弱酸性のデリケートゾーン専用ソープを選ぶのがおすすめです。

(3)保湿も大切

デリケートゾーンを洗った後、乾燥などが気になる人は保湿ケアを行うとよいでしょう。乾燥は、かゆみなどの不快感や黒ずみの原因になることがあります。洗顔後に顔のスキンケアをするのと同じように、デリケートゾーンもケアしてあげてください。

保湿用のアイテムにも、デリケートゾーン専用のものがあります。テクスチャーはローション、もしくはミルキーローションがおすすめです。オイルのものが売られていることが多いですが、外陰部に使うことを考えるとベタつきや湿疹などのトラブルになりやすいので、なるべく避けたほうがよいでしょう。

(4)トイレで拭くときは、前から後ろにやさしく

洗い方や保湿ももちろん大切ですが、トイレでしっかりと排泄物や恥垢を拭き取っておくこともデリケートゾーンケアとして重要なことです。

トイレに行って排泄が終わったら、まずは折り畳んだトイレットペーパーで尿道から肛門向かって、つまり前から後ろに向かってやさしく排泄物を拭き取りましょう。ゴシゴシはNGです。肛門の周辺は便やトイレットペーパーが残りやすい部分なので、とくに注意しましょう。

排泄物をきれいに拭き取ったら、今度は恥垢をきれいにします。小陰唇のヒダを清潔な手で少し広げ、こちらも前から後ろに向かって、やさしくトイレットペーパーで拭き取ります。

中にはウェットタイプのトイレットペーパーや赤ちゃん用のお尻拭きなどを使って、排泄物や恥垢を拭いているという人もいます。値段も使い勝手もさまざまなので、いろいろ試してみて自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。

清潔に、でも神経質になりすぎずに

デリケートゾーンは、その呼び名の通り、デリケートな場所。清潔にして、やさしくケアしてあげることが大切です。

ただし、神経質になりすぎる必要はありません。ちょっとでも汚れが溜まったことを気にして清潔にしすぎてしまうと、それはそれで影響があります。

腟の自浄作用を上手に生かしながら清潔を保ち、適度なケアをしてあげましょう。

(文・構成:山本尚恵、監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科」(メディックメディア)p.79

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