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これって不感症かも……。セックスが気持ちよくない原因と対処法

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

セックスが気持ちよくない……。これってもしかして不感症? そんな悩みを持つ女性に向けて、その症状と原因・対処法を産婦人科医・医学博士の宋美玄先生が教えてくれました。

愛する彼とのセックスなのに気持ちよくならない……そんな悩みを持つ女性は少なくありません。

本当は気持ちよくなりたいのに、どうも感じにくい気がする。それは私のせい? それとも相手のせい? もしかして不感症なの? と気になってしまうこともあるのでは。

セックスを楽しみたいのに性的刺激を感じにくいという場合、どんな原因や対処法があるのでしょうか。

セックスで感じない……それは不感症?

性的興奮をほとんど感じない、または感じにくいことを「不感症」と呼ぶことがありますが、それは正式な名称ではありません。医学的には「性的興奮の障害(Sexual Arousal Disorders)」といいます。

以前は医師も「不感症」という名称を使っていたことがありました。しかし、不感症という言葉には、性的刺激を感じないことの非が女性の側にだけあるように聞こえる(男性側のテクニックが稚拙なせいで感じない可能性もあることが、言葉の中に含まれていない)ことから、今は使われていません。

現在では「セックスで感じない」という場合、そもそも性的興奮がまったくおきないのか、それともオルガズムには達しないものの性的興奮はおきているのかを区別して、治療法や対応を考えています。

また、従来の不感症の中には、性的なことに対して嫌悪感があるために性的興奮を感じないケースも含まれていることがあります。

しかし性的なことに嫌悪感がある場合の原因や対処法は主に心因性であることが多く、今回ご紹介する内容とは大きく異なります。今回は「セックスに対する嫌悪感がなく、セックスで感じない(感じにくい)ことをなんとかしたい」という人に向けた原因と対処法を提示いたします。

不感症の症状

さて、そもそも「セックスで感じない」とはどういう状態のことをいうのでしょうか。

一般的にセックスが始まってから終わるまでに、女性の体は4段階の変化をたどっていくといわれています[*1]。

1段階目は性的刺激を受けることによって性的興奮を感じる興奮期。皮膚の紅潮、発汗、心拍数の増加などの全身反応が現れるほか、クリトリスや小陰唇、腟壁が充血し、腟内に潤滑液がしみ出るなど、挿入に適した状態になっていきます。

それがもっと加速するのが2段階目である高原期です。この段階までくると、もはや途中でセックスを止めることはできなくなり、快感に達する3段階目・オルガズム期へと突き進みます。

オルガズムに達した後は、4段階目である回復期を経て、平常時に戻っていくのが、一般的な女性の性反応とされています。

この変化をスムーズにたどれず、どこかで止まってしまったり、前の段階に戻ってしまったりする場合、性機能が正しく働いていない、感じにくい状態にあるといえます。

不感症の原因と対処法

ではなぜ「性的興奮を感じにくい」状態が起こるのでしょう。それには以下のような理由があると考えられます。

(1)セックスにあまり興味がない、性欲がない

セックスがうまくいかないと悩む女性の中には、そもそもセックス自体にあまり興味がないという人が少なくありません。

「相手のことは好きで、イチャイチャするのは楽しい。でもセックスをしたいかというと……そういうわけでもない」という人や、「自分がしたいわけではないけれど、パートナーがセックスをしたいというので受け入れている」というように、性欲がなかったりパートナーとしての義務で行ったりしている人が意外と多いのです。

そうした人は自分が何に興奮を感じやすいのか、どうすると気持ちいいのかを考えたこともないことがしばしばあります。

何事も楽しむためには、自分自身が興味関心を持つことが大切です。セックスも同じこと。まずは自分なりにセックスや性的興奮への興味を持つことから始めてみましょう。

(2)十分な性的刺激を受けていない

どちらかというと女性側ではなく男性側のテクニックに問題があって感じないという人が、このタイプに当てはまります。

女性器を刺激するとき、女性が性的興奮を感じるのは、実はやさしい愛撫なのですが、男性の中には「女性は激しいほうが感じる」という思い込みを持っている人が少なくありません。

パートナーのそうした思い込みから痛いだけの愛撫をされ、十分な性的刺激がないまま挿入に至るようなセックスを繰り返していると、セックスで気持ちよさを感じるのは難しいでしょう。

初めてのセックスの相手が痛い愛撫をする人で、その人以外の相手と経験がない場合、セックスとはこういうものだと女性の側が思い込んでしまって、快楽を追求しないことも多々あります。

こうした原因によって「感じない」という場合、適切な性的刺激があれば正しい性反応が起こって、感じるようになることが十分に考えられます。そのためには自分が気持ちいいと感じる場所や触り方を把握しておくことが必要です。

もしもそれがわかっている場合は、感じやすい触り方やポイントをパートナーに伝えるなどしてみましょう。しかし、どう触られると気持ちいいのか、自分ではわからない……という場合には、次の(3)で紹介する対処法を試してみるとよいかもしれません。

(3)どうしたら自分が気持ちよくなるのかがわからない

自分がどんなことに性的興奮を感じるのか、どの部位をどんな方法でどれくらいの強さで刺激すると気持ちいいのかなど、自分が感じるポイントを知ることは、セックスで感じるためにとても重要なことです。けれども女性の中には、そうしたポイントを知らずにいる人がとても多いのです。

その理由として大きく2つのことがあげられます。ひとつは性行動において女性は、男性からの働きかけに応じてセックスをするという受け身のパターンが多いこと。男性からの誘いがきっかけで性欲や性的興奮が生じてくるということが多いと、自分から積極的に気持ちよくなる方法を探そうという気にはならないかもしれません。

もうひとつは、女性があまりマスターベーションをしないということ。一度もマスターベーションをしたことがないばかりか、自分の性器を触ったことすらないという女性も、実は少なくないのです。

マスターベーションは自分が気持ちいいと感じる場所や触り方などを知るためにとても有効な手段です。性的快感の得やすさはある程度、経験と比例していくもの。マスターベーションによって自分自身で性経験を積んでいくことは、決して恥ずかしいことではないのです。

生まれつき性的快感がないという人はほとんどいません。もっと感じるようになりたいという気持ちがあるならば、自分で積極的に探求してみてはどうでしょう。

(4)性的なことを「いけないこと」と捉えている

性的興奮を感じにくい人の中には、性的なことを「いけないこと」「後ろめたいこと」ととらえている人もいます。

親から「性的なことはタブーだ」と教育されてきたことによる影響など、人によって理由はさまざまですが、「セックスは不潔なこと」「してはいけないこと」といった呪縛が深層心理に存在するあまり、性的興奮を感じないよう、脳が無意識にストップをかけているという可能性も考えられます。

性的興奮を感じるには、そうした呪縛を取り払う必要があります。セックスは決していやらしいだけの行為ではなく、とても重要なコミュニケーション手段であり、心身が満たされるセックスというのはとても知的な行為でもあります。

必要に応じてカウンセリングや婦人科医に相談するなどしながら、まずは少しずつでも「セックスがいけないこと」という思い込みをなくしていきましょう。

(5)エストロゲンの不足で性的興奮を感じにくい

女性ホルモンの一種であるエストロゲンには腟粘膜を厚くしたり、性的興奮があったときに潤滑液を分泌して腟を濡らしたりなど、性行為をスムーズに行うためのサポートをする働きがあります。

そのエストロゲンがなんらかの原因で不足してしまうと、潤滑液の分泌が不十分になるなど、性的興奮を感じにくい状態になることがあります。エストロゲン不足によって性的興奮を感じにくくなるのは、更年期の影響であることが一般的ですが、若い世代でも極端なダイエットや多忙などにより、一時的なエストロゲン不足になっていることが考えられます。

これまでは平気だったのに突然濡れない、感じないという状態になり、それが続くときは婦人科に相談してみるとよいでしょう。

(6)陰核包茎など体に感じにくい原因がある場合も

中には性感帯にちょっとした不具合のようなものがあり、物理的に感じにくくなっているケースもあります。

レアな例ではありますが、女性の性感帯のひとつである陰核(クリトリス)に皮がかぶったままになっていて、性的刺激を得にくいという場合もあります。

クリトリスは普段は包皮と呼ばれる皮膚に覆われた状態になっていますが、性的興奮を感じて膨張すると包皮がむけてクリトリスが露出する仕組みになっています(その後、興奮状態ではなくなると再び包皮に覆われた状態に戻ります)。

しかし中には、クリトリスが膨張しても包皮がむけない陰核包茎という状態にある人もいます。そのような場合、やさしい愛撫では刺激が伝わらず「感じにくい」となることもあるでしょう。

陰核包茎であっても強く刺激すれば感じるということであれば、とくに気にする必要はありません。パートナーに伝えて対応してもらえばよいでしょう。しかし、どうしても気になるのなら、美容整形外科で手術をしてもらうことも可能です。

自費診療になるため、それなりの金額がかかりますが、それで悩みが解決できるのなら思いきって手術をしたほうがよいこともあります。じっくり考えて結論を出すのがよいでしょう。

「どうやったら感じるか」を前向きに考えてみて

「もっと感じたい」と思う気持ちがあれば、自分がどのようなことに性的興奮を感じるのか、どこをどのように触られると気持ちがいいのかなど、自分自身の性的興味に関心を持ってみることが大切です。ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、勇気を持って一歩を踏み出すことで、めくるめく快感にたどり着くことができるかもしれません。

性的刺激を受けてもまったく何も感じないという人は、そう多くはないでしょう。感じない自分を責めたり、恥じたりするのではなく、「どうやったら感じるのか」を前向きに研究してみましょう。

(文・構成:山本尚恵、監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 「セックス・セラピー入門 性機能不全のカウンセリングから治療まで」日本性科学会/金原出版 p39-41

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