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なすの栄養素と効果とは? 栄養を逃さない食べ方のコツ

山根みずえ(管理栄養士)

なすの栄養素とその効果を、管理栄養士の山根みずえさんが解説。栄養成分を逃がさない調理方法や「レンジ調理はOK?」「水にさらす理由は?」などの疑問に回答していきます。

夏野菜の代表格ともいえる、なす。煮る、焼く、揚げる、炒める等、いろいろな調理法があり、和洋中どんな料理にでも合う万能選手です。

今回は、なすの基本的なお話と栄養素、おすすめの食べ方などを解説します。

なすの基本

なすの皮は鮮やかな紫色で、一見緑黄色野菜のように見えますが、実は淡色野菜の仲間です。

原産地はインドといわれ、日本でも奈良時代頃から食生活の中で使われてきました。

もともと熱帯性の植物なので暑さに強く、旬は7~9月ですが、近年ではハウス栽培によって一年中出回っています。

なすの種類

スーパーでよく見かけるのは中長なすですが、他にも日本各地では特徴のあるなすが栽培されています。大きな丸型をした京都の賀茂なすや、山形の小さな民田なす、アメリカの品種を改良した緑色のヘタを持つ米なすなどは有名です。

賀茂なすは煮物や田楽に、民田なすは漬物に、米なすは煮物や焼き物に向いています。

多くの品種は紫色をしていますが、緑色や白色の品種もあります。料理によってなすの種類を使い分けてみるのもまた面白いでしょう。

なすに含まれる栄養素と効果

生のなす100g当たり(1本は約80g)の栄養成分を見てみましょう。

なすの90%以上は水分で、ビタミンやミネラルの含有量は比較的少ないですが、カリウムや食物繊維を多く含んでいます。

項目 100g当たりの栄養成分
エネルギー 22kcal
たんぱく質 1.1g
脂質 0.1g
炭水化物 5.1g
カリウム 220mg
カルシウム 18mg
マグネシウム 17mg
0.3mg
亜鉛 0.2mg
レチノール活性当量(ビタミンA)  8μgRAE
βーカロテン 100μg
αートコフェロール(ビタミンE) 0.3mg
ビタミンK 10μg
ビタミンB1 0.05mg
ビタミンB2 0,05mg
ナイアシン 0.5mg
葉酸 32μg
パントテン酸 0.33mg
ビタミンC 4mg
食物繊維 2.2g

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)データ更新2019年より一部抜粋

なすは夏バテ・熱中症予防におすすめ

夏バテは暑さや高い湿度と冷房環境との中で体温調節などの自律神経が乱れることが原因で、食欲不振を引き起こします。あわせて、暑さのために眠れないことから、疲労がたまり、体のだるさを感じるようになります。

また、熱中症は大量の汗をかくことにより、水分、ナトリウムと共にカリウムが体外に排出されることによって、めまい・頭痛・吐き気・脱力感といった症状が起こります。

熱中症予防のためには、水分、ナトリウム、カリウムをバランスよく摂取する必要があります。

なすやきゅうり、トマトといった夏野菜は水分を多く含み、利尿作用や血圧を下げる作用があるカリウムを多く含むことから、熱中症予防によいと考えられています。

なすにはカリウムが1本(約80g)当たり176mg含まれています。これは市販のスポーツドリンク1本(500ml)に含まれるカリウム(130mg)よりも多い量です。

水分、ナトリウム、カリウムも一緒に摂取するなら、なすの味噌汁がおすすめです。

血圧を下げ、むくみを予防する

なすに多く含まれているカリウムは高血圧の原因となるナトリウムを体外に出しやすくする作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節するのに役立ちます。

塩分の摂り過ぎは体のむくみにも繋がります。お酒を飲む時は、塩辛い食べ物が多くなりがちです。おつまみになすを使った料理を取り入れるとよいでしょう。

不溶性食物繊維はごぼうの約半分!

食物繊維には、便の材料になる不溶性食物繊維と、腸内環境を整える水溶性食物繊維があります。なす100gには不溶性食物繊維が1.9g含まれており、不溶性食物繊維を多く含む野菜の代表格であるごぼう(100g当たり3.4g)の約半分も含まれています。

これは、成人の1日の摂取目標量の約1/10量に値します。なすは柔らかく、食べやすいのでたくさんの食物繊維を摂りやすい食材です。

抗酸化作用のあるナスニン

上記の栄養素一覧に含まれてはいませんが、なすを語る上で欠かせないのが鮮やかな紫色の色素ナスニンです。

ナスニンはポリフェノールの一種です。ポリフェノールは、増え過ぎると体に害を与えてしまう活性酸素の働きを抑制する抗酸化作用があり、がんや動脈硬化といった生活習慣病や老化の防止などに効果が期待されています。

ナスニンは皮の部分にのみ含まれているため、皮を剥いてしまうと、摂取することができません。なすを調理する際はぜひ皮ごと使いましょう。皮のキュッキュッとした独特の食感が苦手な方は、ピーラーで縦縞になるように剥くと食べやすくなります。

ナスニンの他にもう一つ、クロロゲン酸というポリフェノールも含まれています。なすを切った際の変色やアク抜きをせずに調理をした際のえぐみはクロロゲン酸によるものです。

クロロゲン酸にはナスニン同様に抗酸化作用があります。夏の強い紫外線によって体内では活性酸素が発生します。したがって、屋外での活動の多い方にはなすのように抗酸化物質を多く含む野菜がおすすめです。

栄養素を逃がさないなすの調理方法や食べ方とは?

暑い夏にたくさん摂取したいなすですが、どのように調理すると簡単に栄養素を摂ることができるのでしょうか。

調理をする際のポイントや、ご家庭で手軽に調理できる方法をご紹介します。

アク抜きで水にさらすのは10分まで

なすを調理する際、多くの方は切ったなすを水にさらしてアクを抜くという作業をされるのではないでしょうか。

先述の通り、なすにはえぐみの元であるクロロゲン酸が含まれているため、アク抜きはおいしく食べるためには欠かせないことです。ただ、水にさらす時間が長くなり過ぎると、アクだけでなく、水に溶けやすい栄養素であるカリウムやナスニンが一緒に溶け出てしまいます。水にさらすのは10分程度にしましょう。

また、塩水にさらすと短時間でアク抜きをすることができます。少量の塩を入れた水に5分程度さらしてもいいでしょう。

油でさっと揚げてナスニンを効果的に摂取

なすは油と相性が良いといわれています。

油によってえぐみを緩和し、うまみが感じられるようになります。また、皮に含まれるナスニンは水に溶けやすいため、煮物にする際は油でさっと揚げてから使用すると、ナスニンを効果的に摂取できると共に鮮やかな紫色を保つことができます。

ただ、なすは素揚げにした場合でも重量の14%に相当する量の油を吸収するため、カロリーが気になる方は油を引いたフライパンで表面を焼くだけでもいいでしょう。

栄養素を逃がさない蒸し料理はレンジで調理

なすをヘルシーにさっぱりと食べたい場合には、茹でる、煮るといった調理法が考えられます。しかし、これでは茹で汁、煮汁に水に溶けやすい栄養素が溶け出てしまいます。

そこでおすすめなのは蒸し料理です。ご家庭で蒸し料理はなかなかハードルが高いので、レンジ加熱による調理をすると、手早く、蒸したようななす料理になります。

なすのヘタを取り、丸ごとラップで包んだものをレンジで5分程加熱すると、栄養素を余すことなく、おいしく調理できます。

なすの豆知識Q&A

最後になすを取り扱う時に多くの人が気になっている疑問、お悩みにお答えします。

おいしいなすの見分け方

なすは鮮度の低下につれて水分が抜け、縮んでしまうため、実がふっくらとして弾力があり、皮が鮮やかな紫色で、ハリのあるものを選びましょう。

見た目に比べて軽いものは、中身がスカスカになっていることがあります。ヘタが張ってトゲのあるものが新鮮ともいわれていますが、取り扱いに注意が必要なため、最近ではヘタにトゲのないものもあります。

おいしいなすの見分け方まとめ

・実がふっくらと弾力がある
・皮が鮮やかな紫色
・ハリがある

なすの保存方法

なすを冷蔵庫で保存したところ、数日経つと皮にハリがなくなりシワシワになっていた……という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、なすを長持ちさせる保存方法を紹介します。

新聞紙やラップに包んで冷暗所へ

なすは直接冷気が当たってしまうと、皮から水分が飛び、硬く縮んでしまいます。保存の際は、新聞紙やラップに包む、またはビニール袋に入れて冷暗所や冷蔵庫の野菜室に入れると良いです。

なすは傷みやすく、古くなると種が黒ずんできます。購入後は早めに食べましょう。

冷凍保存で長期間の保存が可能に

なすを長く保存する場合は、冷凍保存がおすすめです。煮物や炒め物などは保存容器でそのまま冷凍できます。

生のまま冷凍する場合は、輪切りや乱切りなどにカットしてから塩を振り、あらかじめ水分を抜いておくと冷凍後もおいしく食べられます。出てきた水分をキッチンペーパーなどで拭いてから保存袋に入れ、冷凍します。調理の際は凍ったまま使用しましょう。

冷凍することで細胞が壊れ、加熱調理した際に柔らかくなり、味が染み込みやすく、短時間で仕上げることができるメリットもあります。

なすに味を染み込ませる切り方のコツ

水分が多く、味がしないと思われがちななすですが、ちょっとした工夫でグッとおいしく食べられます。

皮が硬いため浅い切り込みを入れる

まず重要なことは、なすの皮は硬く、皮面から味が入りにくいため、縦半分に切った状態で、皮に格子状または数mm間隔で浅く切り込みを入れます。

断面の多い乱切りは味が染み込む

そして、煮物や炒め物にする場合は断面の多い乱切りにすると味が染み込みやすくなります。

煮物の場合、調理後すぐの温かい状態で味が薄いと感じても、冷めると中まで味が染み込んでいるので、一度冷ました後に温め直して食べるといいでしょう。

自分に合った調理法で食べましょう!

なすは淡白な味である分、幅広い料理に使うことができます。煮物や炒め物、揚げ物、焼きなす、味噌汁、カレー、グラタン、パスタ等これほど多くの調理法がある野菜はそう多くはありません。

暑い季節は疲れを感じやすく、食欲が落ちることもあります。がっつり食べられそうな時には、なすと一緒に豚肉、にんにく、にら、ねぎ、生姜等を食べて、スタミナをつけましょう。

食欲のない時はレンジ調理で蒸し料理にしたり、焼きなすにしたりするとさっぱりと食べやすいです。

どんな調理法であれば食べられるか、体調と相談しながら選び、暑さを乗り切りましょう!

(山根みずえ)

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