コーチングとは? やり方とスキルを身に着けるコツ
仕事におけるコーチングとは? ティーチングとの使い分けや手法、コーチングスキルの身に着け方をキャリアアドバイザーの藤井佐和子さんが解説。注意点やコツを紹介します。
コーチングは今や世の中に浸透している言葉。
ですが、実際は“コーチングとはなんぞや”を知らない人も少なくないのではないでしょうか。
コーチングとは、簡単にいえば「その人の目標を達成させるために、対話や関わりの中から成長や能力を引きだす手法」です。成長に必要な答えは本人が持っています。それをコーチする人が引き出していくのです。
この手法は、人生やスポーツ、ビジネス上とさまざま場面で活用することができます。今回は、仕事におけるコーチングについて取り上げてみましょう。
仕事におけるコーチングとは?
ビジネスにおけるコーチングは、一般的に上司や先輩が、部下や後輩に対して行うケースが多いです。
部下が仕事上達成すべき目標、あるべき姿の実現に向け、対話をしながら本人の能力を引き出していく手法です。思考し、実行するのは部下本人であり、上司は対話をしながらスキルを引き出していきます。
よくある誤ったケースとして、上司自身の思い通りに誘導してしまうことが挙げられますが、大切なのはあくまでも部下本人の意思を尊重すること。
最近では、直属の上司ではなく、むしろ仕事上関わりのない上位職や、専門家がコーチとして関わることもあります。評価者ではないほうが、評価と関係なく支援できる、という理由があるようです。
ティーチングとコーチングのちがい
▼ティーチングにかんするくわしい解説はこちら
コーチングとあいまいになりがちな手法がティーチングです。
ティーチングは上司や先輩が部下に「自分の経験や知識を教えること」を指します。
ちなみにティーチングで教えられた対象者は、答えがすぐにもらえるので、行動に移しやすいというメリットがある一方、教える側の経験や知識を超えることができないため、限界が生じてしまいます。
コーチングが有効な場面や相手とは?
では、コーチングはどんな場面で有効なのでしょう。また、ティーチングとコーチングはどのように使い分けるといいのでしょうか。
経験の少ない対象には「ティーチング」
まず、ティーチングは、新入社員など、まだ経験や知識の少ない者を対象とします。なぜなら「彼らはまだ引き出しが少ないから」です。
ある程度の経験者には「コーチング」
一方のコーチングは、ある程度経験や知識の蓄積があり、それを元に今後について考えられる対象者でないと、有効ではないともいえるでしょう。たとえば、入社して数年経ち、次のステージを目指したり、周囲から期待されたりするフェーズにいる人です。既にリーダーとして活躍している場合でも、コーチングされる立場にまわることはあるでしょう。
コーチングのやり方
それでは、具体的なコーチングのやり方を見ていきましょう。
以前、先輩にコーチングを受けた女性から、「とてもしんどいコーチングだった」と相談されたことがあります。その理由を聞いてみたところ、
・ほとんど自分は喋れず、ずっとコーチが喋り続けていた
・決めつけられ、「そうではなくて」と思ったが、途中で諦めてしまった
・結局どうしたらいいのか、目的・ゴールがよくわからなかった
コーチングを受けた人からそんなふうに思われないためには、どうしたらよいのでしょうか。まず、コーチングにはステップがあります。手順をご紹介しましょう。
STEP1:信頼関係の構築
相手がコーチを信頼して、心を開いて対話できる状態が前提です。
そのためにコーチ自身の自己開示、コーチングとは何をすることなのか、できることは、など、相手が安心できる説明を怠らないようにしましょう。
また、質問に対してフラットに答えてあげることも信頼に繋がります。
STEP2:ゴール設定
このコーチングでは、何を目指すのか、を最初に決めましょう。
もちろん、途中でゴールが変更になることもあります。都度、変更はないかを一緒に確認することも忘れてはなりません。
STEP3:手順など、やり方を話し合う
コーチングのやり方やペースも決めておきましょう。たとえば、月1回やる、次回までに課題を出す、などです。
コーチングをする際の注意点
コーチングの難しいところは、1.自分(コーチングする側)のコミュニケーションの特徴を理解しなくてはいけないこと、そして2.相手(コーチングされる側)の特徴に合わせたやり方をすべきことの2点です。
コーチングする側は「会話量」に注意
まず、自分のコミュニケーションで気をつけるケースとして「会話量」があります。コミュニケーションには、発信と受信があります。もとから発信が強めの人は、「聴く」ことをより意識しましょう。
オープンクエスチョンを意識して
また、コーチが質問をすることで、受ける側は、考えます。
それによって、答えが導き出されるわけですが、この質問はオープンクエスチョンを心がけましょう。オープンクエスチョンとは、直訳すると開かれた質問です。
YES・NOで答えられる、考えを狭めるような尋ね方ではなく、「〇〇についてどうですか?」というように、質問意図は如何様にでも捉えることができる聞き方のことを指します。それに対して相手は幅広く思考しながら答えることができます。
アドバイスは必要最低限
また、相手が話した内容について、必要最低限のアドバイスにとどめましょう。つい、上司や先輩としてアドバイスしたくなる瞬間もあると思いますが、それによって相手の思考を狭めたり、誘導したりすることになりかねません。
DISC理論でコーチングする相手の特徴を分析
そして、前述の通り相手の特徴に合わせたコーチングも大事です。コーチングをする際、相手分析でよく使われるDISC理論を知っておきましょう。
Dominance(主導型)
自分で決めたがる人。まずは目標をしっかり立て、道筋は本人に決めてもらうとモチベーションアップにつながる。
Influence(感化型)
人の影響を受けたり、合わせたりする人。褒められることや、一緒に取り組んでもらうことでがんばることができる。
Steadiness(安定型)
変化や大きなチャレンジが苦手。細かく目標を設定したり、やることが明確であったりするほうが安心する。
Conscientiousness(慎重型)
論理で納得する人。なぜこれをやるべきなのか、やったらどうなるのか、など根拠を示すと安心して行動できる。
このように相手のタイプによっても関わり方を変える必要があるでしょう。相手がどんな思考をし、どんな性格の特徴を持つのか、コミュニケーションを通して知ろうとする姿勢もコーチングには欠かせません。
コーチングスキルを身に着けるには?
最後に、コーチングスキルの身につけ方を解説します。
コーチングの基本は「聴く力」、そして「質問力」です。
また、コーチ自身がぶれずにフラットでいることも大事なスタンスです。これらのスキルは、やはり訓練が必要。まずは自分自身がコーチングを受けてみることで、自分が行うならどうすべきか、イメージがわくはず。
コーチングスキルを身に着けるには、まずは自らが体験してみることをおすすめします。
能力を最大限に引き出すコーチング
変化の激しいビジネスシーンでは、ティーチングによる上司や先輩の指導だけでは限界があるといわれています。
部下や後輩自身の能力を最大限に引き出し、個人のモチベーションをあげ、自走できる人材を育成すること。それこそが、組織の活性化に繋がっていくもの。
コーチングスキルを身に着けて、期待する人材を育てることができる一歩先のビジネスパーソンになれるといいですね。
(藤井佐和子)
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