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理想の働き方は? ワークスタイル変革の概要と課題

水谷育恵(特定社会保険労務士)

中田ボンベ@dcp

誰もが「理想的な働き方」ができるわけではありません。働き方に悩んでいる人も多いでしょう。では、自分に合ったワークスタイルを見つけ、取り入れるにはどうすればいいのでしょうか? 今回は、現代女性が求める理想のワークスタイルや、ワークスタイルをうまく変えるためのアドバイスを社労士の水谷育恵さんに聞いてみました。

ワークスタイルとは

ワークスタイルの意味

ワークスタイルは「働き方」と訳すことができます。個人に使う場合は「正社員」「パートタイム労働者」など「自分がどのように仕事をするか」を意味し、企業として経営視点で使用すると、「企業の働き方の仕組み」や「労働環境」などの意味になります。

現代女性が求める理想のワークスタイルとは

よく聞くのが、女性の大きなライフイベントである「結婚」や「出産」を叶えつつ、続けられる働き方が理想というもの。

多くの女性の場合、ライフイベントを迎える前までは、「毎日9時から18時まで出社して働く」「残業がある」といった一般的な働き方でも問題ありません。しかし結婚や出産といったライフイベントを経たあとは、さまざまな理由により従来の働き方では働けないと感じます。それにより「退職」せざるを得ず、退職後も社会復帰のきっかけがないままの女性が少なくないのが現状です。

「フルタイム勤務は難しいけれど、短時間勤務や在宅勤務であれば大丈夫」であるのに、そのような働き方が受け入れられるケースが少ないなど、「柔軟な働き方が選べないこと」が女性が仕事を続けていく上での障害となっているようです。

自分に合うワークスタイルの見つけ方

自分に合うワークスタイルを見つけるためには、「それぞれのライフイベント時に自分が仕事に対してどの程度、時間と労力を使えるか」をはっきりさせることが大事だと思います。

以前から、多くの女性が「家庭」と「仕事」のどちらを選ぶかという選択を迫られ、悩んできました。しかし、現在は個人の価値観や置かれている状況が多様化しています。ですから、まずは自分が「結婚」「妊娠・出産」「子育て中」といった大きなライフイベントを迎えた際に、「仕事のためにどのくらい動くことができるのか」を考えるといいでしょう。

もし理想の働き方が現在勤める企業に導入されているのであれば、どうすればその働き方を取り入れられるか担当者に相談するといいでしょう。また、そうでない場合は理想的な働き方を導入している企業に転職することも選択肢の一つです。

ワークスタイル変革とは

ワークスタイル変革とは

ワークスタイル変革とは、組織の働き方(ワークスタイル)を変えて新しくすることです。

これまでの日本では、フルタイム勤務できる労働者が長時間働き、生産性を上げていました。しかし長時間労働によるメンタルヘルスの不調などが近年問題視されています。また、現在の日本は労働生産性が先進7カ国の中でもっとも低く、国際競争力が低下しています。その上、労働人口が減少して働き手が少なくなっており、今後も少子高齢化が進むので、労働人口はどんどん減っていくことが予想されます。

従来の働き方で働ける人が少なくなっているものの、フルタイムでなくても働きたい人は社会にたくさんいます。こうした状況の中で、企業が取り組むべき改革として重要視されているのが「ワークスタイル変革」です。

企業としても従業員の多種多様な事情に合わせて働き方の選択肢を増やし、労働環境を整える必要が出ているのです。

ワークスタイル変革の目的とは

ワークスタイル改革により、今まで働きたくても時間や場所の制約によって働きに出られなかった人達が働けるようになります。社会とのつながりを持てるようになるわけです。

また、仕事を通して社会に貢献することで、自己実現の場も生まれます。個人が自分の状況を考慮した上で、生き生きと働くことができれば、それが結果的に企業の価値を高めることにつながります。

個人のワークスタイル変革を推進し、自分らしい働き方ができる企業となれば、人材の流出を防ぎ、モチベーションの高い優秀な人材を獲得できます。ワークスタイル変革は、個人だけでなく企業の成長のためにも必要な制度改革と言えるでしょう。

ワークスタイル変革の具体的な取り組み

ワークスタイル変革の具体的な取り組みをご紹介します。

(1)フリーアドレスの導入

社員の固定席を設けず、仕事の状況に応じてオープンスペースや空いている席を使う形態。時短勤務や在宅勤務を希望する社員や、オフィスに常駐しない社員のスペースを有効活用することでオフィススペースの最適化を図ります。また、固定席を設けないことで、固定されたメンバー以外とのコミュニケーションの活性化が期待できます。オフィスが小さいスペースで済むことでコストが削減されますし、仕事内容に応じて部署の垣根を越えてチーム編成ができる利点もあります。

(2)テレワークの導入

「tele(遠い)」と「work(働く)」を合わせた造語で、場所や時間にとらわれない働き方を意味しています。テレワークは、以下の3つに分類され、オフィス以外の場所で仕事をするスタイルです。オフィスに通うことが難しい人でも労働が可能になります。

・1.在宅勤務
パソコンとインターネットなどで企業と連絡をとり、働く。

・2.モバイルワーク
移動中にパソコンやスマホを使って働く。

・3.サテライトオフィス勤務
企業の事業所以外のオフィススペースで働く。

(3)社内制度の整備

オフィス以外で働いたり、働く時間が短い社員が増えるため、オフィスにいないことが人事評価に影響しないようにすることが重要です。ほかの社員と不公平にならないよう、業務内容で正当な評価が受けられるように人事評価制度を見直す必要があります。

ワークスタイル変革の課題

ワークスタイル変革での問題点や今後の課題について解説します。

(1)経営者の意識改革

最近は、昭和時代の働き方を推進する経営者は少ないと思いますが、中にはかつての働き方を重要視する人がいます。そうした企業の場合、会社の制度を見直すことが難しくなります。実務レベルの担当者に対する風当たりも強くなりがちなので、「長時間働く人ほど評価が高い」といった社内風土の改革や、人事制度や評価制度を見直す必要があると、経営陣に理解してもらうことが大きな難問となります。

(2)IT環境の整備

オフィス以外で働く上で、情報をどこでも見られるようにするなど、新たな働き方に合わせたIT環境を整え直す必要があります。ただし、企業の資本力により、必要なシステムをすべて用意することが難しい可能性があります。

(3)社員全体の意識改革

新しい制度を導入したとしても、社内での理解が得られないことがあります。そうなると、制度を利用することがはばかられる状況になって浸透せず、ただ制度があるだけになってしまいます。そうならないためには、新しい働き方に対して社員の理解を深め、組織全体で「働き方」に対する意識を変える必要があります。

理想の働き方を

残念ながら、女性は男性と比べて結婚、妊娠・出産といったライフイベントが仕事に影響しやすい状況にあります。そのため、理想の働き方を実現させるには、そうした重要なライフイベントを踏まえた働き方を男性以上に考える必要がありそうです。水谷さんのアドバイスを参考に、あらかじめ「結婚したらどうするか」などのプランを考えておくといいでしょう。その際は、ワークスタイル変革についての知識があると役立つかもしれません。今のうちにしっかりと理解しておくといいですね。

(文:水谷育恵、構成:中田ボンベ/dcp)

※画像はイメージです

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