もう辞めたい! 仕事でミスしたときの報告と謝り方
仕事でミスをしてしまった際、どんな方法で報告をしたり謝ったりすればマイナスの印象が最小限で済むのでしょうか? また、そもそもミスを減らすコツはあるのでしょうか? 今回は、「仕事でミスしたときの報告と謝り方」について調べてみました。
仕事のミスは報告すべき?
仕事でミスをすると、怒られないように隠そうする人がいます。その場合、どんなデメリットが生じるのでしょう。「効果的な報告や謝罪の方法」とともに、キャリアコンサルタントの瀧本博史先生に教えてもらいました。
ミスを隠すデメリット
自分だけでなく会社の信用も失う
仕事のミスを隠した場合、それが発覚するとミスを隠した本人の信用だけでなく、会社の信用もなくなってしまいます。ミスが発覚すると、隠した本人に対しては、どんなミスが起こったのか状況や内容について詳しく原因追求が行われ、ストレスがたまっていきます。また、ステークホルダー(利害関係者)からは、「会社の体制」についても疑問が生まれ、信用がなくなってしまうのです。
仕事が一からやり直しになる
また、隠していたミスが発覚すると、それまでにその仕事にかけてきた費用と時間も無駄になってしまいます。通常、仕事は時間の経過とともに発展しながら進んでいきます。しかしミスを隠したまま仕事が成長し、発展した段階でミスが発覚すると、根本から再構築する必要に迫られます。
会社の採用活動も難しくなる
さらにはその企業の従業員採用活動も難しくなります。「ここの組織はミスをしても、それが言い出せない環境なのではないか」「組織全体でミスをもみ消そうとする体質があるのではないか」といったイメージが世間からついてしまうと、志望者から「居心地の悪い職場」だと思われてしまいます。そうすると、求人を出してもうまく人が集まらず発展が失われてしまうのです。
報告の仕方
ミスが起こったことを上司へ報告するときに、「こんなミスをした」とただ単に伝えるのではあまり意味はありません。伝えるだけでは上司はどんなミスなのか理解できず、解決策が浮かばないということになってしまうからです。ミスを報告する際は、上司によい解決策を導き出してもらうために1秒でも早く準備をし、内容を整えてから報告する必要があります。
現状把握
まずは現状を把握しましょう。今何が起こっているのか事実を把握し、正確な情報とデータを集めることに専念します。その上で、どんなことが起こっていったのかを時系列でまとめ、普段とどこがちがったのかという「ちがい」を明らかにしたものをレポートとして作成します。
ミスの厳密な特定
次に、どの部分で問題が発生したのか、仕事の区切りや階層ごとに分け、ミスが起こった「ブロック」を特定します。この際には、「かかわった人」「場所」「時間」「発言」「行動」を入れたレポートを作成すると問題が明確化されやすいです。
改善策とその優先順位を明確化
そしてそのブロックで起こったミスについて、改善策などこれから自分が具体的に取り組めそうなことを考えて優先順位をつけます。それを作成したレポートとともに上司へ報告します。
謝り方
上司といっても感情を持つ「ひとりの人間」です。ミスをしたことについて感情をぶつけ合ってしまうと、あとの仕事もやりづらくなります。尾を引かないようにするためにも謝る際に気をつけるべきポイントがあります。
「悪いのは自分」の気持ちを表す
まず、「悪いのは自分」という気持ちを持ちましょう。ミスをした人は自分の心へのダメージを避けるために自分以外のものや事柄のせいにする「自己防衛本能」が働きやすいです。上司はミスをした人からまわりのことばかり伝えられても、問題の本質がどこにあるのかわからないままとなるので、解決への道のりも遠くなってしまいます。
推測はNG! 話すのは事実だけ
次に、正確に事実だけを話しましょう。「~だと思う」という推測や、自分の判断や意見が入ってしまうと、上司はミスの詳細を把握しづらくなります。詳細が把握できないと対応策をピンポイントで打てなくなるので、解決するまでに時間がかかってしまう原因となります。
ありのままのすべてを正直に
そして、正直にすべてを話しましょう。自分やまわりに「起こったこと、感じたこと、行動したこと」、これらすべてを把握した上での対応策を考えていかなければ、どこかにひずみやわだかまりを残したままの対応となってしまいます。また、新たな問題が発生する可能性もあります。これ以上問題を大きくしないためにも、ありのままのすべてを正直に話すことが大切です。
仕事でミスをしないための対策
気をつけているつもりなのにミスが続いてしまったりすると、何をどう改善すればいいのかわからなくなってしまうでしょう。では、なぜミスが続いてしまうのでしょうか? ミスが続く原因や、ミスをしないためのコツを瀧本先生に聞いてみました。
ミスが続くのはなぜ?
ストレスも? 健康状態がよくない
まず、健康状態がよくないことが挙げられます。健康状態には肉体的なものと精神的なものがありますが、精神的なものは自覚のないまま蓄積していくことも多く、集中力に大きな影響を与えます。自分のことや家族のこと、お金や時間などさまざまなストレスが人の心に蓄積し、集中力を低下させる原因となります。
責任感が強すぎる? 自身の「傾向性」
次に、自身の「傾向性」があります。普段から責任感が強く、「誰かに任せるより自分がやるほうがいい」と抱えこむ傾向のある人は、量的にもたくさんの仕事を持っているため、ミスに遭遇する機会も増えてしまいます。
自己啓発が進んでいない
また、同じ失敗を繰り返さないようにする「仕事の質を上げるための自己啓発」が進んでいない可能性もあります。自己啓発は上司からの指示を仰ぐだけでなく、自分の職域に関係するセミナーに自ら参加していくことも含まれます。
人間関係に難あり
そして、いつでもまわりからの協力が得られるという、「良好な人間関係」が構築されていない可能性があります。コミュニケーションを取りながら仕事をすることは、組織の成長にとって要(かなめ)となるものです。失敗をすぐにフォローできる体制と気配りが職場にあれば、ミスを防げる環境が整っていくでしょう。
ミスを減らすには
(1)仕事を「見える化」する
ミスは仕事の構造からだけではなく、単なる「見落とし」からはじまることも多いです。これを防ぐ例として、仕事の進捗状況をweb上で共有できるようにすることが挙げられます。こうすることで、ほかの人の目に触れる機会も増え、今何が起こっているのかが把握でき、ミスにも早く気づけます。ほかにも普段から机の上を整理したり、机の中をきれいにしておいたりするだけでも、自分が不在のときどこに何があるのかをすぐに見つけ出してもらうことができ、素早い対応へとつながります。
(2)自分から話す癖をつける
普段から仕事に対して「待ちの姿勢」でいると、どうしても対応が後手に回ってしまいます。疑問に思ったことや提案を積極的に自分から話す習慣を身につけることで、変化に気づいてもらえる機会も増えます。また、部下や後輩がいる場合には、意見を言いやすい環境を整えられるよう、自分からコミュニケーションを取るように努めることで、ミスの早期発見につなげることができます。
(3)ストレスチェックを受けてみる
企業の従業員数にもよりますが、労働者へのストレスチェック実施が義務化されました。その一方で、自殺者数は依然として高水準であり、特に働き盛りの40代の人々を中心にその割合は高くなっています。労働には量的な問題もありますが、質的な問題もあります。これらの負担が自身にどれだけあるのかを把握し、適切な指導を受けることは長く働き続けることや健康状態から起こるミスの早期発見にもつながります。
「辞めたい」となる前に! ミスを引きずらない考え方
仕事でミスをしてしまった際、そのミスを長く引きずる人もいます。そうならないためには、どんなことを意識すればいいのでしょうか? 瀧本先生に教えてもらいました。
「起こったミスは成長のチャンスになる」と肯定的にとらえることが大切です。
普段から「ミスが起こらないよう計画的に仕事に取り組むこと」「誠実に仕事に取り組むこと」が必要です。しかしミスをしてしまった場合に、「このミスから何を得られたのか」を考えることも大事です。それは、起こったミスを克服することで、「ミスをした本人」と「組織」の両面でよい効果が期待されるからです。
ミスをした本人については、次から何に対して注意を払い、行動すればよいのかがわかるようになります。「こうすればこうなる」という原因と結果がわかるので、同じ失敗が起こらなくなり、より発展的な自分に出会うことができます。
組織については、ミスに至るまでの「組織のコミュニケーション不足」を改めて見直すきっかけになります。報告や連絡を含めたコミュニケーションの取り方に対する改善が期待され、ミスの規模によっては一度組織を再構築する機会にもなり、より強固な体制を整えることができます。その結果、他社に負けない競争力を持つ組織づくりができるのです。
大切なのは、「起こってしまったことは仕方がない」と開き直らず、次にどんな策が打てるのかを考えていくことですね。
変にごまかそうとせず自分のミスに向き合おう
仕事のミスを無理に隠そうとすれば、本人だけでなく会社にも影響を及ぼします。そうならないためにも、仕事でミスをした場合は自分に非があることを認めて正直に失敗と向き合い、何が起こったのか正確に報告することが大事です。そしてミスしたことをチャンスととらえ、引きずらないようにもしたいところですね。もちろん、些細なミスをしたり、同じミスを繰り返したりしないように、普段から意識することも大事でしょう。
(文:瀧本博史、構成:中田ボンベ/dcp)
※画像はイメージです