アイソン彗星を見よう―2013年11・12月の大接近時の見方

2013年は彗星の当たり年と言われており、3月の「パンスターズ彗星」出現に続いて、11月末から12月にかけてはいよいよ大本命とされる「アイソン彗星」が出現します。
とりわけ、冬は空気が澄んで夜空が見やすくなりますので、彗星観測には絶好のチャンスとなります。
アイソン彗星とは
「アイソン彗星(C/2012 S1)」は、2012年9月にベラルーシのヴィタリー・ネフスキーとロシアのアルチョム・ノヴィチョノクによって発見されたばかりの彗星です。発見された当初は、まだ太陽からおよそ10億kmも離れており、その明るさも19等級と非常に暗いものでした。
ちなみに、アイソン(ISON)という名称は彼らが所属している組織である「国際科学光学ネットワーク(International Scientific Optical Network)」の頭文字がもとになっています。
彗星の正体とは…?
彗星とはいったい何者なのでしょうか。
…実はその正体は、ガスや塵(細かな岩石や金属など)を含んだ氷の塊と考えられています。
大きさは数km程度のものが一般的で、アイソン彗星の場合はおよそ3kmと推定されています。
また、彗星には楕円軌道を描く「周期彗星」と、放物線や双曲線軌道を描く「非周期彗星」とがあります。
このうち、「ハレー彗星」のような周期彗星は、その名のとおり周期的に太陽に近づきますが、非周期彗星は一度太陽に近づいた後は、どんどんと遠ざかる一方になります。
アイソン彗星は、3月に現れたパンスターズ彗星と同様、放物線軌道を持った非周期彗星であり、太陽には一度しか近づかないため、この機会を逃すともう二度とお目にかかることはできません。
なお、太陽にもっとも接近するのは、11月29日で、このとき太陽との距離はおよそ190万kmとなります。
190万kmと聞くと、相当離れているように感じるかもしれませんが、これは太陽~地球間の距離のおよそ80分の1であり、そう考えると大接近と言えるレベルでしょう。
最接近前(~2013年11月29日)の見え方
太陽に最接近する11月29日ごろは、彗星の本体(核)を構成している氷や岩石が分解されて光るため、マイナス等級で非常に明るく輝くと予想されています。
ただし、この時期は太陽の明るさにさえぎられて地球から観測することは難しく、観測に適しているのはその前後1ヶ月ほどになるでしょう。
太陽へ最接近する手前の時期(11月末以前)ですが、この期間は日の出前の東の空に彗星を見ることができます。
10月末~11月上旬にかけて少しずつ明るさを増していき、11月下旬には肉眼でハッキリと見える明るさに達するかもしれません。
最接近後(2013年11月29日~)の見え方
11月29日前後には、太陽の明るさに隠れて一度見えなくなってしまいますが、12月に入ると再び日の出前の東の空に登場します。
12月上旬に現れたころには、彗星の尾も立派になり、一番の見ごろを迎えるでしょう。
また、この時期は冬至が近く、日の出の時刻も遅くなりますので、朝が苦手な人でも見られるチャンスです。
その後、12月下旬になると、日の入り後の西の空でも見られるようになりますが、その明るさは少しずつ暗くなっていきます。1月に入ると、一晩中北の空に見える位置にありますが、かなり暗いため天体望遠鏡でも見つけるのが困難になってしまうでしょう。
まとめ
3月に出現したパンスターズ彗星も、当初はかなりの明るさに達すると期待されていましたが、実際には肉眼で辛うじて見える程度にとどまってしまいました。それほど彗星の明るさを予測するというのは難しいものとなります。
とはいえ、アイソン彗星は、2012年の金環日食に匹敵するほどの天文ショーになる可能性を秘めています。
11月末から12月にかけて、日の出前の東の空に見ることができると予想されていますので、興味があればぜひ観測にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
(文/TERA)
●著者紹介
小さいころから自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。