※このコラムは『愛の、がっこう』2話までのネタバレを含んでいます。
■モンペ再来! またもパシられる愛実
年齢詐称をした生徒が、親のカードを使ってホストクラブへ通い詰めていた事件から、モンペ親に使いっぱしりのように奔走させられていた愛実(木村文乃)。生徒・夏希(早坂美海)の謹慎期間が解けたものの、彼女が一番に心配するのは入れこんでいたホスト・カヲル(ラウール)のこと。
夏希とラウールが一切連絡を取らないよう念書が交わされたことを知ると、夏希は学校を飛び出し行方を眩ましてしまいます。
すると出てくるのはやはり夏希の母親。「私たちは無性の愛情を夏希に注いできました! どんなに国の業務が忙しくても夏希を一番に考えてきました。何かあったらどう責任……」と、我が子がこのような状況になったことは全て学校の責任であり、自分たちには一切責任がないと疑わない様子で愛実を一方的に責めるのです。
政治家だか官僚なのか知らんけど、自分たちの愛情は絶対に間違っていないと、ここまで断言しながら全てを他責にできる自信はすごくもあり、恐ろしくもあります。
そんな中、行方の手がかりを掴むために愛実が連絡していたカヲルから着信があり、愛実も学校を飛び出します。
■夏希の問いに愛実が正解を出したのは立場が同じだから
夏希を見つけてくれたカヲルは公園で夏希と遊んでいました。学校では能面のような顔だった夏希の表情は、とても柔らかく自然な笑顔です。
念書のことはさておき、夏希の行方が分かったことが最優先。愛実は夏希を引き取ります。そこで夏希がポロリと漏らしたのは「先生、うちの親の口癖知ってる? 親の愛は無償の愛よ。どっちが尊いのかね。お金で買える愛と」という本音。「そんなこと分かるわけない」と答えた愛実に内心驚いた夏希。「無償の愛って言わないんだ。見直した」と、そこから2人の心の距離がぐっと近づきました。
実は2人は同じ立場にあるから、愛実からこの言葉が出てきたのです。
■愛実と夏希が抱える根本の問題は同じ
おそらく愛実と夏希、2人が抱える根本の問題は同じなのでしょう。裕福な家庭に育ったものの、その親たちは、娘に抱く理想と愛情が強すぎて、本当の2人のことは見ていない。
愛実の場合は父、夏希は母ですが、2人とも「自分の愛は正しく間違いないもの」と強く信じています。そして、自分の理想に反する行動を娘がとれば、愛実の父は、「愛実の母が過保護に育てたから」、夏希の母は「学校が」悪いのだと、自分を顧みることはせず、他者に責任転嫁をします。
2人とも娘に直接向き合うことはしません。1話で愛実が「ホストクラブに行ってきた」と言えば父は冗談だと思って流し、言いたいことだけ言って部屋から出て行っていましたし、夏希を見れば親が原因であることは明白です。
川原と愛実の結婚話も、川原が挨拶に来た際には、川原と父の結婚か? とみまごうほど、父は愛実そっちのけで川原と話を進めていました。
自分の理想を押し付けるだけで、その本質を見ようとしない、それぞれの父母たち。
これをきっかけに、愛実と夏希はこれから一気に距離が縮まっていくかもしれません。
■交際人数0! 川原の地雷っぷり
愛実のストーカーや自殺未遂の過去を知ってもなお、結婚したいと迫ってくる川原(中島歩)が「僕の方も過去の恋愛打ち明けた方がいいよね」と、過去に付き合った人数がゼロであることを告白します。
今まで結婚したいと思った人がいないどころか、交際した人すらいない状況になんとなく愛実はうれしそうでしたが、逆に30半ばにもなってわりかし奥手でもない川原が交際経験ゼロは地雷であることの証明にしかならず、視聴者としては戦慄が走ります。
今のところ分かっている川原のやばさと言えば、ノンデリ、空気が読めず不器用、不倫で心と体を満たしているどころか、交際人数0のくせに「2人同時に付き合わないと燃えない」と宣い、結婚後も不倫は続ける宣言。
段取りも組まずに唐突に愛実の両親に挨拶をしようとしたり、勝手にジュエリーショップを予約したりしているなど、とにかく愛実の気が変わらないうちになのか、はたまた自分の素性が全てばれないようになのか、畳み掛けるように決め込もうとしているようにも見えます。
いつ彼の本性が愛実の前で明らかになるのかも気になりますが、その時にまた愛実が恋で傷つき、恋愛に対してさらにふさぎ込んでしまうのではと思うとたまりません。
■前回は全身赤、今回は赤ワインで染まったラウールを見れる貴重なドラマ
一方カヲルはというと、ライバルの太客・明菜(吉瀬美智子)に試されていました。店外で高価なものをいろいろ買ってもらった後に連れて行かれたのは、高級そうなホテルの一室。エレベーターで、愛実カップルと一緒になってしまうアクシデントがありつつも、部屋では覚悟が決まっていないことを明菜に見透かされ、頭からワインをかけられて罵られます。全身赤で決めたラウールだけでなく、頭からワインで真っ赤に染まったラウールまで見られるとは、なんとすごいドラマなのか。
「あなたに輝かしい未来は用意されてない。若さでお金を稼げるうちに稼ぐことね」と、カヲルの持つコンプレックス全てを抉ってくるような、あまりにも殺傷力の高すぎる捨て台詞を最後に去っていきました。
残された部屋でルームサービスを受け取ろうとすると、求められるのはサイン。
文字が書けないカヲルはここで愛実の「ちゃんと名前は書けた方がいいです。あなたのこれからのためにも」という言葉を思い出し、うろ覚えながら名前の練習を始めます。
■お互いが苦手とする分野を補完しあう契約を結んだ2人
電話でカヲルから突然呼び出された愛実。先日の屋上で、「昼間の人は彼氏? 結婚すんの? おめでとう。今1番幸せな時だよね」と言われ、思わず「えっ」と返してしまいます。カヲルの言葉で、自分の中での結婚に対する違和感が浮き彫りになったのでしょう。
そこから2人はまた色々な話をします。その中で、カヲルの昔の夢が電車の運転士だったことを知り、「なろうとしなかったんですか?」と、愛実は素直な疑問をぶつけます。
「なれねーよ。自分の名前も書けねぇんだぜ。電車どころか車の免許も取れねぇよ」と、あらゆることを諦めているカヲルに自分が文字を教えることを提案します。
生まれつき字が覚えにくいことを告白するカヲルですが、「学んで無駄なことなんてありません」と、自信なさげなカヲルを後押しします。
努力は必ず報われる、その先に未来は必ず開けているのだという思想のもとに、カヲルに前向きに提案する姿は、愛実が恵まれて育ってきたことがありありと表れてるよう。
カヲルはカヲルで「俺だけ教えてもらうの悪いな。俺も教えてやるよ。恋愛」と、それぞれが苦手とする分野を補完しあう契約を結んだ2人。この個人授業がどんな化学反応を起こしていくのか楽しみです。また次回。
(やまとなでし子)
※『愛の、がっこう』はTver、FODにて配信中