出産で女性は心も体も満身創痍!! 夫婦で知っておきたい“産後”のこと #共働き夫婦の産後

出産で女性は心も体も満身創痍!! 夫婦で知っておきたい“産後”のこと #共働き夫婦の産後

出産が近づくにつれ赤ちゃんに会えるという期待が膨らむ反面、未知の世界「産後」に一抹の不安を覚える妊婦さんもいることでしょう。ここでは、産婦人科医の宋美玄先生による医学的な観点と実体験の両方を交えたコメントとともに、産後の変化をまとめました。夫婦で協力して子育てしていくために、妊娠中からできることは準備しておきましょう。


出産による変化:生活スケジュール編

産後、ママが自由になる時間はほとんどない

授乳の間

「3時間ごとの授乳」といっても、3時間ずつ眠れると思ったら大間違い!

出産経験のある先輩ママや、インターネットの口コミで、「産後はまとまって眠る時間がない」「赤ちゃんのお世話と家事で座るヒマもない」なんて話を見聞きしたことはありませんか? 夫婦だけの生活から一変し、産後はすべてが赤ちゃん中心の生活になります。では、一体どんな生活スケジュールが待っているのでしょうか?

ここでは「授乳と授乳の間」の時間帯を切り取って紹介しましょう。生まれたばかりの赤ちゃんの授乳回数は1日に少なくとも8回程度と言われています。つまり、3時間間隔です。次の授乳までに3時間も空くなら「空いた時間に家事を済ませる」「疲れたからちょっと昼寝」などが可能なように感じるかもしれませんが、ポイントは「3時間丸々手が空くわけではない」ということです。

「授乳の合間」にいったい何が起こるのか…(例)

[1]ゲップを出させる(なかなか出ないことも。この間、ずっと縦抱き抱っこ)
[2]おむつ替え(うんち)
[3]寝かしつけ
[4]寝そうだったので布団に置いたら起きた!⇒寝かしつけやり直し
[5]やっと寝たので、しばし休憩…
[6]泣いたので、あやす
[7]おむつを見たらおしっこ⇒おむつ替え(おしっこ)
[8]また、泣いたので、あやす
[9]また、おしっこ!⇒おむつ替え(おしっこ)
[10]静かになったので、しばし休憩…
[11]グズグズ言い出す(お腹すいた?)⇒抱っこしてあやす
[12]次の授乳(母乳にミルクを足す場合は、その準備含め、授乳だけで30分以上かかることも)

産後、一人で赤ちゃんのお世話をしていると、こういった生活が数ヶ月続きます。授乳やおむつ替えの回数はだんだん減っていくとはいえ、成長とともに新たな対応を迫られることも多いものです(はいはいし出したら安全対策、離乳食が始まったらその準備など)。昔と違って核家族が当たり前の現代、パパが積極的でないと、こういった負担はすべてママに降りかかってくるのです。

こうして、想像以上に過酷な産後に苦しむママはたくさんいます。そうならないためにも、「あれもこれも母親がすべき」という考え方はいったんストップ。授乳以外はママでなくてもできることが多いので、産前に夫婦で家事の役割分担を決めておく、ママがパパに家事のやり方をレクチャーしておくなどして、ママだけに負担がかからないような仕組み作りをしておくことが重要です。

パパはくれぐれも、「家でゆっくりできていいね」「ずっと赤ちゃんと一緒なんていいな」「まだ朝の食器を洗っていないの?」なんて言葉をママにかけないようにしてください。

宋美玄先生
私は最初の子どものときに3ヶ月間里帰りしていましたが、これが大失敗! 里帰りが終わって家に帰ってきたら、赤ちゃんが泣いても夫はアワアワするだけで、何となく「泣き止ませるのは母親の仕事」という雰囲気に。

夫からすると、「妻がいるいつも通りの生活が再びスタートした」という感覚だったようで、大変なのは「以前の生活に赤ちゃんのお世話がプラスされた私だけ」という状態でした。

だからこそ、これを読んでいるパパには、妊婦健診について行ったり、出産予定日周辺に休んだりして有給を使い果たすのではなく、退院後にまとまった休みを取って欲しい!

床上げまでは、おむつ替え、沐浴、掃除、料理、洗濯など、授乳以外の育児と家事をすべてパパに担当してもらいたいくらいです。それほど、産後ママのからだは満身創痍なのですから。

出産による変化:ママのからだ編

産後のママに現れる症状

産後ママのからだは満身創痍

産後ママのからだは満身創痍

産後から6~8週間を「産褥期(さんじょくき)」と呼び、この間にママは産前の体に少しずつ戻っていきますが、同時に多くの不調や産前には見られなかった症状が出てきます。

●胎盤がはがれた面から出血する悪露(おろ)
●子宮が元の大きさに戻ろうとする後陣痛
●おっぱいが張る、乳腺の炎症(産褥乳腺炎)
●会陰や帝王切開の傷の痛み
●腰や股関節の痛み、腱鞘炎
●肩こり、頭痛
●便秘、痔、尿もれ
●貧血
●大量の抜け毛
(これらが産後ママの全員に現れるわけではありません。個人差があります)

赤ちゃんを産んですぐのママの体は、「大きな交通事故に遭ったのと同じくらいのダメージ」に例えられることがあるのをご存知でしょうか? それだけママは心身ともにボロボロの状態になっているのですが、それでも赤ちゃんのお世話はせざるを得ません。

産後、満身創痍の状態のママにとって、授乳にしても寝かしつけにしても、数キロある赤ちゃんを抱っこするのはかなりの重労働です。

そのほかにも、立ち座りの動作のときやお腹に力を入れたときにお産の傷(会陰切開や帝王切開)が痛む、骨盤の歪みやゆるみから尿漏れや痔になるのも産後よくあること。

なお、産褥期に身体的な無理を重ねることで回復が遅くならないよう、日本では昔から「床上げ3週間」と言われてきました。つまり、赤ちゃんのお世話で必要な時以外は、産後3週間以内はできるだけ横になっていましょうということです。

宋美玄先生
産院によっては、出産直後「赤ちゃんにミルクを飲ませておくから、ママはゆっくり休んでいてね」と、ママを手厚くサポートしてくれるところもありますが、実はこの一番体が大変なときに赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらわないとその後の母乳の出は悪くなってしまいます。

これはママにとって大変なことですが、母乳育児を重視したいと考えているママは産前からそういった体のメカニズムを知っておくことがとても大切です。

ママが「産後すぐは体がつらい状態でも、その後の母乳の分泌量を上げるためならばがんばりたい」と考えているのか、それとも「ミルクを併用して夫に飲ませてもらうから、産後は少しでも休みたい」と考えているのか、出産前にぜひ夫婦でよく考え、産院選びにも反映させてもらいたいですね。

出産による変化:ママのこころ編

ホルモンの急激な変化でメンタルが不安定に

産後ママのメンタルはとっても不安定…

産後ママのメンタルはとっても不安定…

体は「交通事故直後」の状態ですが、実は産後はママの「こころ」にも大きな変化が生まれます。待望の赤ちゃんと対面して幸福感に満ち溢れていると思っていたのに、なぜか気分が感情的になってしまったり、どうしようもない不安感や孤独感に悩まされたり、ちょっとしたことで涙が出てしまったり……。

それは、産後に起こる女性ホルモンの急激な減少が影響でしています。出産後は、女性らしい丸みのある体を作り、潤いとハリのある肌を保ってくれる女性ホルモン「エストロゲン」と、子宮内膜を厚くし基礎体温を上げる女性ホルモン「プロゲステロン」の分泌量が、まるでジェットコースターのように急激に低下します。

さらには、精神を安定させるのに欠かせない「セロトニン」という神経伝達物質も低下することで、ネガティブな感情が高まったり、孤独を感じたりするうつ傾向がみられるようになるのです。

また、乳汁の分泌をコントロールしている「プロラクチン」「オキシトシン」というホルモンも産後ママの気分の変動に影響する可能性があると言われていますし、多くはありませんが甲状腺ホルモンの活動性の低下が産後うつ病に関係することもあるとされています。

こうしたさまざまなホルモンの変化に加え、産後は連日の睡眠不足や慣れない赤ちゃんのお世話で疲労が蓄積され、感情をコントロールすることが難しくなっている状態なのです。

出産を機に、女性ホルモンは急激に減少する(イメージ)

出産を機に、女性ホルモンは急激に減少する(イメージ)

宋美玄先生
女性ホルモン「エストロゲン」は、妊娠中に普段の150~200倍も出ているのですが、分娩後に胎盤が剥がれたら、ものの数時間でガクッと減少してしまいます。それは言うならば、閉経後のおばあちゃんくらいの数値で、産後は一時的に更年期になったような状態。

しかも、更年期は数年かけての変動にもかかわらずあれだけの不調を引き起こすのに、産後はその変動が数時間で来てしまうんです。

男性にこのことを話すと、とても驚く人が多いです。パパになる男性にはぜひ知っておいてもらい、産後は妊娠中以上にママを気遣ってもらいたいですね。

産後の夫婦間コミュニケーションが大事なわけ

ここまでで、産後に起こる生活スケジュールの変化、ママのからだ、こころに起こる変化を紹介してきました。最後に、産後に起こる可能性があるもののなかでもとくに注意が必要な「産後うつ病」と、妊娠中からできる産後への心の準備を紹介します。

「マタニティー・ブルーズ」と「産後うつ病」

退院後、赤ちゃん中心の生活がはじまり、ママは24時間臨戦状態になります。夜中でもお構いなしに赤ちゃんが泣き出すため、心身ともに疲れが溜まり、イライラや不安、孤独感などを感じる人も出てきます。

また、自然分娩を希望していたのに緊急帝王切開になってしまったり、母乳が思うように出なかったりと、出産前に思い描いていたお産や育児と現実に差があった場合も、ネガティブな思考回路に陥りやすくなります。

こうした不安定な精神状態は「出産による変化:ママのこころ編」で説明した通り、おもに女性ホルモンなどの分泌量が急激に変化することによって引き起こされます。これは、産後3~10日以内に発症する「マタニティー・ブルーズ」というもので、日本では産婦の30%程度が経験するとも言われています[*1]。

気分がふさぐ、不安や集中力の低下などがおもな症状で、とくに涙もろくなるのが特徴的です。マタニティ・ブルーズはその多くが病気ではなく一過性で、特に治療を必要とせず、2週間ほどでおさまるケースが多いとされています。

ただし、多くはありませんが、これをきっかけに次に紹介する「産後うつ病」に移行する人もおり、下記にあげたような症状が2週間以上続く場合は注意が必要とされています。

マタニティー・ブルーズの主な症状
ゆううつな気分、気分が落ち込む/涙もろくなる/不安感/緊張感/集中力の低下/疲労/寝つきが悪い、眠りが浅い/食欲の低下/頭痛/イライラ/物忘れしやすい/どうしていいかわからない

「産後うつ病」は赤ちゃんのお世話にやっと慣れてきた産後1ヶ月くらいに起こることが多く、「マタニティー・ブルーズ」と違って、れっきとした病気の一種。産婦の5~10%[*1]に見られ、決して珍しいものではありません。産後うつ病は、誰もがなる可能性のある病気なのです。

産後うつ病の主な症状
笑うことができない、ものの面白みがわからない/楽しさを感じない/自分を不必要に責めてしまう/わけもなく不安、心配、恐怖に襲われる/用事をかたづけることができない/不眠/悲しさやみじめさを感じる/不幸せと感じ泣いてしまう/自分自身を傷つける考えが浮かぶ

「産後うつ病」は夫の早めの気づきが命綱

朝ごはんはパパが簡単に作って、ママの体調変化を観察する時間にしてみては

朝ごはんはパパが簡単に作って、ママの体調変化を観察する時間にしてみては

産後うつ病を予防するために、ママができることは「育児・家事を一人で背負い込まないこと」「周囲に助けを求めること」。ここまでで紹介したように、産後はこころもからだも弱っていることを自覚して、自分ひとりでなんとかしようと思わないでください。

また、どんな状況がやってくるのかきちんと理解してもらえるよう、産後の生活について妊娠中から夫婦でよく話し合っておきましょう。

そして、いくら気を付けていても、なるときはなります。産後うつ病を見逃さないために特に重要になるのが、一番身近なパパの存在です。「うつになるのは気合が足りないから」「母親なのに育児ができないのは甘え」という考え方で、育児中の孤独なママを追い詰めるのは、もってのほか。

子育て中のママのなかには、「仕事が忙しそうな夫に、家事や育児まで手伝ってもらうのは気がひける」と小さな遠慮を積み重ね、なんでも自分で抱え込んでしまうママや、「夫がお金を稼いでいるのだから、自分は家事と育児をきっちりこなさないと」と完璧を目指そうとするママもいます。

そうした無理がたたって産後うつ病を発症してしまう前に、普段からパパはママの話をじっくり聞く、家事と育児を分担するなどして、ママの心理的・身体的な負担を軽くしてあげることが大切なのです。

辛そうだな、と感じたら、地域の母子保健サービスや保健センターについて、パパが調べてママに利用してもらう方法もあります。自治体により内容はさまざまですが、助産師によるケアや一時保育などのサービスはママの助けになるでしょう。

なお、さきほど紹介した産後うつ病の症状が見られた場合は、できるだけ早めに、産婦人科、精神科・心療内科などの医療機関に相談してみてください。

その症状は、ママにとっても「もう限界」というサイン。普段の元気なママを取り戻し、赤ちゃんを健やかに育てていくためにも、医療機関のサポートを受けながら不安定になったママを支えてあげてください。

サポートになると感じたものは、積極的に取り入れて

産褥期のママの身体的負担をできるだけ軽くするには、とにかく「頼れる人や物に頼る」こと。夫に育児休暇や有給休暇を取ってもらう、実母や義理の母に来てもらう、産後ヘルパーを利用する、時短家電を購入する、ネットスーパーを利用するなど、夫婦で相談してできる範囲でママのサポート体制を整えましょう。

核家族が当たり前になった現代では、ママは産後すぐにでも家事・育児をひとりでこなさないといけない環境にあり、体が辛くてもママ自らがSOSを発信できない状態になりがちです。

だからこそ、パートナーであるパパはしっかりとママを観察し、ママが今何をして欲しいのか、何に困っているのかを聞き取るなど、積極的にコミュニケーションを取って欲しいものです。

赤ちゃんのお世話も大切ですが、それもママが健康であってこそ。ママも産後は自分の体に目を向けて、いたわってあげてくださいね。

宋美玄先生
産後うつ病と「子供がかわいいと思えない」ことには関連があることがわかっています。産後うつ病の症状に加えて、ママに子供への愛情が欠けているように見えるときはとくに注意が必要かもしれません。

私には、2人の子どもがいますが、出産前は、当直(夜間や休日といった診療時間外の勤務)を毎月10回以上こなしていました。でも今思うと、仕事より育児の方が圧倒的にキツイ!

だって仕事は、ある程度計画的に進められて、お金までもらえるんです。育児は、ママの体調が悪くても赤ちゃんの都合で動かないといけないし、お昼ご飯さえもままならない状態。

世のパパたちには、ぜひそのことを理解してもらいたい。両親学級で妊婦ジャケットを着用して妊婦体験した姿を、「記念だから」と写真に撮ってる場合じゃありません! パパの協力次第で夫婦の絆が試されるのは、産後からなんですよ!

まとめ

産後に起こる生活の変化、ママのこころとからだに起こる変化は、いかがでしたでしょうか?

物理的な問題を除き、育児には受験やテストのように「これを準備しておけば安心」というものはありません。しかし、この記事を参考に、夫婦で「産後はこんなことが起きるんだ」ということを頭の片隅に置いておき、二人で協力して育児ができる環境を整えてみてください。

産後は決してママひとりで抱え込まず、パパや祖父母、医療機関、自治体や民間サービスの助けも借りながら育児をしましょう。赤ちゃんがすくすくと元気に育ち、大変ながらも楽しい子育てライフを送れるようにしたいものですね。

この記事で取材したドクター
産婦人科医・医学博士 宋美玄先生
大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった「女医が教える本当に気持ちいいセックス」がある。また、「とくダネ!」に木曜コメンテーターとして出演中。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事

(文:関亜希子、イラスト:高橋ユウ)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]公益社団法人日本産科婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン―産科編2017
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2017.pdf

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、[内閣官房][厚生労働省]妊婦に関する情報[日本小児科学会]幼児に関する情報など公的機関等で発表されている情報をご確認ください。

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